Babyな君


結局あの後、骸は自分が幻術をかけているからと俺の家まで行くことになり、白蘭は俺が着ている上着を最後に回収する為に付いていくことに…
いや、洗ってから返すって言ったのに『洗うなんてとんでもない!!』
とか言って何か上着の価値について永遠と語りだしそうだった彼の話を強制終了させた。
きっと高価な上着だから洗濯機はダメだったのかな?
獄寺くんは『護衛します!!』と有無を言わさない眼差しをぶつけてきたので、諦めて護衛とやらをお願いすることにした。並盛はそんなに危険な場所だっただろうか。

まぁ、俺が何を言っても付いてくるんだよ。

俺はこのあり得なく恥ずかしい格好…(なんかもう諦めついてきたけど;)で家路をたどる、この元凶を生み出した家庭教師を恨めしく思った。

「やっと綱吉クン家着いたね~♪」

項垂れる俺の横から白蘭の明るい声に顔を上げれば、既に俺の家が目の前だった。

「じゃあ骸と白蘭はここにいて、骸は俺が家に入ったら幻術解いていいから。獄寺くん、ありがと付いてきてくれて。また明日学校でね」

「はい十代目、ではまた明日お迎えに上がりますね」

獄寺は綱吉に言うと、横にいる二人に軽く睨みをきかせ帰って行った。
それを見送った後、綱吉は外の門の前に二人を待たせ急いで着替えに向かう。

階段を駆け上がり自分の部屋へ着く、鏡を見るとどうやら骸は幻術を解いたようだ。映った姿は長い髪でも女子の制服でもなく白蘭の上着一枚に身を包んだ自分だった。
下着から履き適当な服に着替えると上着を丁寧に畳み、また駆け足で玄関へ向かった。

「お待たせ」

扉を開けると二人は何か話していたようだったが、俺の声に視線をずらした。

「綱吉くんお疲れさまです」

「二人共ありがと。」

二人にお礼を言った後、白蘭に畳んだ上着を手渡した。

「二人に何かお礼がしたかったんだけど…」

あいにく家には人様にあげられそうな物もなく、何をしてあげればこの二人が喜ぶかなんて想像が出来ないでいる綱吉は考え込んでいると

「じゃあ綱吉くん…」

骸は横の白蘭に目をやると彼は頷き、二人を見つめる瞳に向き直り満面の笑みで言い放つ。

「「キスして(ください)♪」」

「は?」

「山本武にはOKでも、僕達にはダメなんて不公平ですよ?」

「え、そこ引きずってたの!?;ってか!あれは山本の演技であって」

「「は?」」

「…………ぇ??」

俺は何かまずい事でも言ったのだろうか。
二人は目を見開き驚きの表情をみせている。

「あれが"演技だった"なんて君の脳は平和ボケでもしているんですか?」

「そうだよ、もっと危機感を持たなきゃ♪」

「お前らに危機感なら持ってるけどな。」

全く俺を馬鹿にしているのだろうか…溜め息をつきながらも、まぁ…今日はいろいろ助けられたわけだし;そう思いブーブー言う二人に向き直った。

「はいはい…じゃあ目瞑って。」

「ぇ~瞑るんですか?綱吉くんの恥ずかしそうにしてる顔が見れないじゃないですか。」

「んなもん見なくていいんだよ!!;ぐだぐだ言ってないで早く」

「瞑ってる間に逃げちゃヤダよ??」

「(お前らから逃げられる気がしないよ;)…分かってるから。」

そう答えると二人は渋々目を閉じた。

勇気をだして顔を近付ける。それにしても、この二人マジで美形だよな…ほんと、黙っていればいいのに。

「~~~~っ///」
チュッ

「二人共今日はありがと!じゃあまたねッ!!//」

バタンッ!!

一方的に捲し立てた綱吉は逃げるように家の中に入っていった。柔らかい感触と可愛らしいリップ音が頬に当たったと同時に二人はその場所に手を当て呟いた。

「「こっちだったか…」」

唇が当てられた場所は
まぁ、二人が期待していた場所ではなく頬だった。
ちょっと物足りなさそうな表情を浮かべたが、可愛い物が見れた…顔をゆでダコのように真っ赤にした彼の顔。

「綱吉くんにはキスの仕方から教えなくてはならないようですね」

「そうだね、あれはキスって言うより挨拶程度だったし…まぁ綱吉クンは顔真っ赤にしてたけどね♪でも調教のしがいがあるよ」

二人は不敵な笑みを浮かべながら帰って行った。


その後、野球部では謎の美少女を巡って山本と他校の人がライバルにあるらしいと言う噂が流れ、応接室には例の綱吉の写真が額に入れられ飾られたそうな。


END.
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