鬼灯ちゃんと玉葱くんの話
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ハナダは水色、神秘の色。
カントー地方の東部に位置する、川が近い高台の街。水色の屋根をした家々が立ち並ぶ、水のように澄んで穏やかな雰囲気だ。
そんな街の少し洒落たカフェのテラス席で、ヒバニーのような少女──ホズキさんの大声が響いた。
「えぇー! オニオンってジムリーダーだったの!?」
声が、声が大きい、です。
そういえば彼女に名乗った時は言っていなかったが、ボクはこれでもガラル地方のラテラルタウンでジムリーダーを任されている。いまは修行休暇中で、カントー地方を満喫中だけど。
「そりゃあ、バトルも強いわけだ……もう三連敗だもんね〜、う〜んっくやしい!」
ホズキさんはメロンソーダに刺したストローをぷちぷちと噛み締めながら、むっすり不機嫌そうな顔をした。
今日もハナダシティでお茶をする前に、ポケモンバトルをしたのだが、結果はボクの勝利で終わった。初めて出会った頃から数えて三連勝中である。
「でも、ホズキだって、将来はおじいちゃんの跡を継いで最強のジムリーダーになる予定だもん。次のバトルこそ絶対負けないんだから」
ボクにビシッと指をさしてくる彼女がなんだか可愛くて、笑いながら「ふふっ、次が楽しみです」と言えば「あー! 勝者の余裕の笑みだー!」そう返されてムキーッとオコリザルのように怒られてしまった。
「ボク、もうすぐガラル地方へ帰ります」
えっ、と彼女の口から驚きの声がこぼれて、まん丸になった瞳がボクの瞳を撃ち抜いた。
「……そう、なんだ」
「うん。そろそろジムチャレンジの期間が、始まっちゃうから、修行休暇は終わり、帰らないと、いけないんです」
「そう……」
あからさまに元気が無くなってしまった彼女。まさか、ここまで落ち込んでしまうとは思わなかった。どうしたら良いかわからなくて、ボクはすぐさま話を変えることにした。
「ところで、ホズキさんの、おじいちゃんって……」
ハッと彼女が我に返る。一瞬で嬉しそうな顔をしながら語り出した。
「うんっ、グレンタウンのジムリーダーだよ! 炎タイプ最強のクイズ王なんだから」
クイズ王? よくわからない単語が飛び出したけど、確かにホズキさんが強い理由も頷ける。あのリザードンやギャロップを育て上げたひとで、彼女と同じ炎タイプの使い手。いつかバトルしてみたいな。
「わたしのおじいちゃんに会ってみたい? いいよ!」
「えっ、そんな、いきなり、良いんですか?」
「だーいじょうぶ、火曜日のお昼だから今日は暇してるだろうし、早速行こうよ!」
ホズキさんはメロンソーダをちゅーっと一気に飲み干してしまうと、近くの店員さんにお代を渡して、テラス席を飛び出してしまった。ボクも中途半端に残ったアイスミルクティーを慌てて飲み干して、お代を置いてから、彼女の後を追いかける。
そこからはこの間と同じように、彼女のおじいちゃんから借りてるリザードンでひとっ飛び。ビューンと束の間の空の旅を楽しむのだった。
***
グレンの赤は、情熱の色。
カントー地方の南西部に位置する休火山の島。真っ赤な屋根の家々が並ぶ小さなこの島は、グレン島とも呼ばれている。
ホズキさんの生まれ育った島。町の西に見える大きな屋敷は炎タイプの野生ポケモンの棲家になっており、生まれた時から彼女の遊び場だったらしい。町の南にはポケモン研究所があり、化石の復元をしてくれるそうだ。
リザードンのおかげで、素早く無事にグレンタウンへ辿り着けた。ポケモンセンターの前でリザードンにお礼を言って、ハイパーボールに収まる姿を見送る。
「ジムはこっちだよ、こっち!」
ホズキさんにギュッと握られた右手。なんだかもう当たり前になってきたその行動を、ボクはまだドキドキしながら、走る彼女の後を追いかける。
ポケモンセンターから北東へ走って行った先に、立派なポケモンジムが見えてきた。彼女は一切の遠慮もなく、その建物の扉を開けて「ただいまー!」と声をかけながら入っていく。ボクも小さく「お邪魔します」といちおう声をかけた。
今日はお休みなのだろうか? ジムの中には誰も居ない。ジムトレーナーの姿も見当たらない。薄暗いけど広い室内、テレビで見るクイズ番組のようなセットが組まれていて、三十人くらいは座れそうな観客席もある。しかし、人の気配がないので不気味だ。
「おじいちゃーん、ホズキだよー! どこー?」
それでも彼女はずんずんジムの奥へ入っていく。クイズ番組のセットの裏側は、広いバトルフィールドになっており、明かりが点いていた。その真ん中でようやく人影が見える。
「カツラおじいちゃん!」
ホズキさんが呼ぶと、その人影はすぐに振り返った。
スキンヘッドにサングラス、白い髭に白衣姿が特徴的な、まだ孫が居るとは思えないほど若い、中年男性がそこに立っていた。
「うおーす! ホズキ、また遊びに来たか。じいちゃん嬉しいぞー!」
カツラさんがサングラスの奥で嬉しそうな顔をしながら、ぱっと両腕を広げる。途端、ホズキさんはボクの手を離して駆け出して、カツラさんに勢い良く抱き着いた。本当に仲の良い孫とお祖父さんなんだなあ。
「ホズキ、また身長伸びたか? お前はどんどん成長するなあ」
「ポケモンバトルも絶賛成長中だよ! 今日はね、わたしのお友達を連れてきたのっ」
お友達。彼女の口から出されるその響きは未だにそわそわしてしまうけど、カツラさんとサングラス越しにパッと目が合って、ボクは慌てて自己紹介をした。
「あっ、は、はじめまして、オニオンと言います。ガラル地方の、ラテラルタウンで、ジムリーダーをしてて……えっと、」
「修行休暇中なんだって! ギャロップのお墓にもお参りしてくれたんだよ」
「ほう! 毎日泣いていたこの子を励ましてくれたのは、キミか」
今は修行休暇中でカントー地方を巡っていることを伝えると、カツラさんは嬉しそうな顔で「優しくてセンスのある若者だ」と喜んでくれた。
「わしのジムに来たということは、これも修行の一環、ジムに挑戦しに来たという訳だな!?」
えっ!? ま、待って、そんなつもりは無くて、いや戦ってみたいと思ってはいたけど、いきなり過ぎませんか! さすがホズキさんのおじいちゃん、好戦的だ。
ボクがおろおろ戸惑っていると、カツラさんのハグから抜け出したホズキさんがこちらに戻ってきてくれた。
「オニオンだけずるいよ、わたしもおじいちゃんとバトルしたい!」
あれー!? てっきりお祖父さんのことを止めてくれると思いきや、ホズキさんまでノリノリになってる!
「うむ、そういうことなら2対2のダブルバトルで受けてたとうじゃあないか。二人まとめてかかってこい!」
話はポンポンポンと進んでしまい、いつの間にかボクとホズキさんが組んで、ダブルバトルでカツラさんへ挑む形になってしまった。しかし、断る理由はない、面白そうという欲の方が勝る。
バトルフィールドの端にホズキさんと二人で並ぶ。出会ってから期間は短いけど、バトルは何度もやってきた。どんな癖があって、どんなポケモンを使うのか、ボクらはお互いに分かり合っているはずだ。
「オニオン、私はブースターで行くよ」
「わかりました。ボクは、ゲンガーで行きます」
タマムシシティで一戦交わしたことのある、このコンビ。ボールから出してやれば、ブースターはゲンガーの方をチラリと見て、フンッとソッポを向いた。ゲンガーもショックを受けている。以前負けてるからライバル意識してるのかも。だ、大丈夫かな。
「ブースター、今回は協力だから、ね?」
ホズキさんに宥められて、ブースターは仕方ないなとでも言いたげに「ぶぃ」と一声鳴いた。
カツラさんがハイパーボールを構える。二つのボールが高く宙を舞って、ウインディとキュウコンが繰り出された。
「よおーし、バトルスタートだ! やけどなおしの用意はいいか!」
カツラさんの一声に、まずはウインディがダッと走り出してゲンガーへ向かってきた!
「ウインディ、フレアドライブ!」
いきなり大技で攻めてきた、これはホズキさんと同じ戦法だ。一度食らったことがある、今度は上手く対応してみせる。
「ゲンガー、地面に向かってヘドロばくだん!」
「な、なんと!?」
地面にどろどろのヘドロが飛び散って、ゲンガーに向かっていたウインディはそのヘドロに足を取られて滑った。技は失敗だ、よし!
「オニオン、ナイス! 今度はこっちが行くよ、ブースター! キュウコンにフレアドライブ!!」
身軽なブースターはヘドロの散った地面を器用にぴょんぴょんと避けて、キュウコンへと突っ込んでいく。──しかし。
「キュウコン、あやしいひかり!」
ああ! 技が当たるギリギリ直前で、眩しい光を浴びてブースターは混乱してしまった。わけもわからず、小さな前足でペシペシと自分の頭を叩いて攻撃している。
「わわっ、ちょっと、しっかりしてよ! ブースター!」
「オニオンの戦法には驚かされたが、ふっふっふ、ホズキの方はまだまだ」
「な、なにをー!? わたしだって日々成長してるんだから、ブースター! 根性だ、根性ぉー!!」
ブースターは相変わらず目をぐるぐる回して、ふらふらとしている……。ど、どうしたら良いんだ、えぇっと、こうなったら!
「ゲンガー! ブースターにふいうち!」
「えぇ!? オニオン何するの!」
さすがにホズキさんの悲鳴が上がったけれど、それでもゲンガーはボクの言うことを聞いて、ブースターの右頬に一撃を食らわせた。
「ぶ、ぶいぃ!」
途端、混乱は解けてブースターが目を覚ました!
「へっ、あ、混乱とけた! ありがと、オニオン!」
「えへへ、どういたしまして」
「ほお、オニオンやるじゃないか、しかし、これは耐えられるかな?」
お互いに距離を取り、いったい何が来るのか、喉唾をゴクリと飲んで身構える。
「や、やばい! "アレ"が来る!!」
ホズキさんとブースターはそれを知っているようで、顔を青くして怯えていた。
「行くぞッ! ──ダブルだいもんじ!!」
キュウコンとウインディが大きく口を開き、大文字型の炎を同時に吐き出した。それは空中で組み合わさり、更に大きな文字となって、こちらにめらめらと迫ってくる。あんなの食らったら、ひとたまりも無い!
「オニオン、ゲンガーを下げて!」
「ホズキさん!? どうする気ですか!」
「まあまあ、わたしとブースターに任せてよ!」
言われた通りにゲンガーをブースターの後ろへ下げる。ホズキさんは大きく息を吸って、吐いた。
「ブースター! だいもんじに向かってフレアドライブ!!」
ブースターはもう一度、業火を身体に纏うと、巨大な炎の大文字に向かって激しくぶつかった。なんと、大文字はその衝撃で弾け、バラバラの小さな炎の雨となり、キュウコンとウインディ側に降り注いだ。
「ふふーん、どんなもんだい!」
自慢げな顔で胸を張るホズキさん。ブースターも反動でダメージを食らってしまったけど、こちらを向いて誇らしげに笑っていた。
「す、すごいです、ホズキさん! ブースターも!」
「カーッ、これはやられた。ホズキはバトルの腕も日々成長してるんだな!」
カツラさんもやられているのに、なんだか嬉しそうだ。ボクが任されているジムでも、ボクが意外な戦法や面白い戦術を閃いて実践して見せると、ベテラントレーナーのおばさまたちがすごいすごいと褒めて喜んでくれる。子供の成長を喜ぶ親って感じなのかな、そういうの、くすぐったいけど嬉しいです。
さあ、バトルはここからが本番だ。
「ゲンガー、シャドーボール!」
「ブースターも合わせて、かえんほうしゃ!」
「キュウコン、こちらもかえんほうしゃ! ウインディはかみくだくだ!」
お互いの技がぶつかり合い、火花が散って、爆発の煙が舞う。
それから、長く続いたダブルバトルはようやく決着がついた。
「ブースター、とどめのにどげり!」
キュウコンの顔面に一撃、ウインディの腹部に一撃、ブースターの力強い蹴りが決まった。
ふらふら、ぐらり、2匹の体が同時にバトルフィールドの砂場に沈む。勝負あった。
「はー、見事……! わしは燃え尽きた!!」
倒れた2匹をハイパーボールに戻して、カツラさんは高らかにボクらふたりへの拍手を贈ってくれた。
「やったあ、おじいちゃんに勝った! ありがとうっ、オニオン!」
「こちらこそ、ありがとうございます。ホズキさんの、おかげです」
「ふふっ、ホズキとオニオンって相性良いのかも!」
「そうだと嬉しい、ですね、えへへ」
ホズキさんは感激のあまり、ボクの右手を両手でギューッと握って離さなかった。お祖父さんの前で、ちょっぴり恥ずかしいけど、ボクも嬉しい。ボクも彼女の手をぎゅっと握り返した。カツラさんも嬉しそうな顔をしていた。
燃え尽きて落ち着いたらしいカツラさんは、こちらにゆっくり歩み寄ると、ホズキさんの頭をぽふぽふと撫でる。
「良い友達が出来たんだなあ、ホズキ」
その言葉に、彼女は満面の笑みで「うん! 最高のお友達!」と頷いた。やっぱり恥ずかしくって、カァッと頬が熱くなる。
カツラさんは「そうだ!」と何かを思い出したように言うと、ガサゴソ白衣のポケットを探り始めた。白衣から出てきた左手に、キラリと輝いたのは炎の形をした紅蓮色のバッジ。
「オニオンにこれをやろう。クリムゾンバッジだ」
「えっ!? い、良いんですか?」
「ダブルバトルだったとは言え、このわしを見事倒して見せたんだ。素晴らしい戦いぶりだった。ぜひ受け取ってくれ」
「ありがとう、ございます……!」
わあ、ジムバッジだ! ガラル地方でもジムチャレンジをクリアした者に与えられるけど、カントー地方のジムバッジは初めてだ。嬉しい。大事にしよう。
「ふっふー、お揃いだね、オニオン」
そう言ったホズキさんの手にも、クリムゾンバッジが紅蓮色に輝いていた。
「ホズキさんも、貰ってたんですね」
「うん! 去年カツラおじいちゃんに初めて勝てたから貰ったんだ!」
お揃い、そう聞いたらよりいっそう嬉しい気持ちになる。胸の奥がぽかぽかした。
「ふたりにはもうひとつ、渡したいものがある」
カツラさんはそう言うと、白衣からモンスターボールをふたつ取り出した。中では小さな青い炎がめらめらと燃えている。
「こいつらはヒトモシ。イッシュ地方の知り合いから預かったんだが、見てくれるか」
カツラさんがボールを放れば、頭の炎を燃やしながらロウソクみたいなポケモンが二匹現れた。
「もしぃ……」
「モシモシ!」
「わあ! かわいい!! はじめまして、ヒトモシ」
小さなヒトモシたちに、ホズキさんはその場にしゃがみ込んで目線を合わせて、にこにこと挨拶している。二匹も照れ臭そうに笑顔を返していた。──けれど、あれ?
「片方、炎の色が、違う?」
ボクが疑問を口にすれば、カツラさんは難しい顔をして「うむ」と頷いた。よく見れば目の色も違うようだ。
「どうやら1匹だけ色が違うために、群れからはぐれてしまったようでな、この2匹だけが街に迷い込んだそうだ」
色違いだと言うだけで、そんな……。まだレベルも低くて幼い子たちなのに。
「よかったら、こいつらを引き取ってもらえないか」
え? ボクとホズキさんの声が重なる。
「ヒトモシは、ゴーストとほのお、ふたつのタイプを持ち合わせたポケモンだ。オニオンとホズキにピッタリだろう?」
ヒトモシたちはよくわからない顔で「もし?」「モシ!」と戯れ合っている。
「じゃあ、わたし、この緑色の瞳が素敵な子にする!」
ホズキさんは頭の炎がどちらかと言えば水色っぽい方のヒトモシを抱き上げた。初めて人間に抱っこされたのか、ヒトモシは「もしっもしっ」と戸惑っているようだが、嫌がってはいない様子。
「じゃあ、ボクは──黄色い瞳の、キミを選びます」
ボクもその場にしゃがみ込んで、濃い青の炎を頭に燃やしているヒトモシに、手を差し伸べる。ヒトモシは「モシ!」と元気いっぱいに鳴きながら、ボクの手に触れてくれた。
こうして、ボクたちにはお揃いのジムバッジと、新しい仲間が増えたのだった。
ボクとホズキさんはヒトモシたちのモンスターボールを貰って、それぞれ腕に小さな白いロウソクたちを抱えながら、グレンジムを後にした。カツラさんには何度もお礼を言って別れた。また、いつか会いに来よう。
帰りに海でも見ようとホズキさんが言ったので、グレンジムから近い東の海岸へ向かった。夕焼けのオレンジ色に照らされた海、真っ白な砂浜にさくり、さくりと足跡を残す。なんだか今の彼女は、あまり元気が無いように思えた。
「オニオン、もうすぐ帰っちゃうんだよね」
あ、そう、だった。ボクの方から切り出した話なのに、別れを思うと悲しくて、放置していた話。ちゃんと、向き合わなきゃ。
「さみしい、な」
ホズキさんは海を眺めながら、そう言った。
「……ボクも、さみしいです」
せっかくお友達になれたのに。
ボクも海を眺めながら、そう返した。
しばしの沈黙。
ザザーン、ザザーンと、波の音しか聞こえないその静けさを破ったのは彼女だった。
「わたし、ガラル地方に行く!」
海に向かって放った、元気の良い声だ。ボクはビックリして彼女の方を向いた。ニカッと眩しく笑った顔と目が合う。
「いますぐじゃないよ、もっと強くなってから。ヒトモシといっしょに特訓して、ガラル地方の、その、ジムチャレンジ? ってのに挑戦しに行くよ!」
彼女の赤い瞳が、夕焼けのオレンジ色の光にキラキラ照らされて、綺麗だ。
「ジムリーダーのオニオンに挑戦して、今度は絶対に勝ってやるんだ!」
彼女の腕に抱かれるヒトモシも「もしもしー!」と元気に鳴き始めて、やる気いっぱいだ。
「ほんとう、ですか?」
「うん。約束しよ、必ずキミに会いに行くから」
「はいっ、約束です。ボクもヒトモシを育てて、たくさん特訓して、あなたを迎え撃ちます。絶対、負けません」
ボクの腕の中のヒトモシも「モシッ」とやる気に満ちた鳴き声を上げた。早速、頼もしい相棒だ。
「じゃあ、指切りしよ!」
ホズキさんが片手を伸ばして、小指を差し出してきた。ボクも同じく小指を差し出して、ぎゅっと絡め合う。
「ゆーびきーりげんまん♪ うそついたらハリーセンのーます! ゆびきった♫」
「なんですか、その物騒な歌」
「あれ、オニオンの出身地にはなかった?」
「はじめて、聞きました……」
「ふふ、嘘付いたらハリーセン丸呑みだからね。ぜったい、約束破っちゃダメだよ」
「ホズキさんこそ、約束、守ってくださいね」
ボクたちは絡め合った小指を離して、今度は手のひら全体を絡めてギュッと繋ぎ直した。あたたかくて、ちいさな手。不思議と安心する。ずっと繋ぎ合っていたいくらいだ。
ああ、よかった。お友達と一生の別れじゃない、また会えるんだ。そう思えるだけで、心が前向きになる。近い将来、すぐにまた、彼女と会えるのだから。
「オニオン、また会おうね」
「はい。ホズキさん、また会いましょう」
さようならじゃなくて、またねが言える友達。ボクにはそれすらも初めてだった。
──いつか、必ず。
2025.05.11公開