灰かぶり君と王子様ちゃんの話
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真実の愛とビースト
ナイトレイブンカレッジの生徒になってから、初めて迎えた冬の夜。
――オレは意を決して、彼女に愛を告白する。
どうしても話したいことがあるんだ。
そう言って、彼女をナイトシャノワールカレッジの校門に呼び出した。
ナイトレイブンカレッジとは姉妹校の関係にある、この寄宿制の魔法士養成学園に通う彼女。ルーシャ・ベスティアちゃん。彼女とは、これまで姉妹校交流会の代表生徒同士として、仲を深めてきた……つもりである。
学校指定の真っ白なコートを羽織った彼女に、オレは深々と頭を下げて、手を差し伸べた。
「――好きです。オレと、付き合ってください!」
ドクンドクン、煩いぐらいに鳴り止まない心音。寒い冬の時期なのに、顔からは熱くて火が出そうだった。生まれて初めて、誰かをこんなにも特別好きになってしまったものだから。この想いを、伝えない訳にはいかなかった。
「……嬉しい」
震える声に、ハッと顔を上げる。彼女は黄金色の瞳をうるうると涙でいっぱい潤ませて、感激に口元を押さえていた。
「私も、私もケイト君のことが、好き……」
差し出した手を、彼女は両手で包み込むようにギュッと握り締めてくれる。
「ほ、ほんとう?」
「こんなこと嘘つけないよ。好き、大好き、ずっと前から、きっと初めて出会った時から好きでした」
「そ、それ、オレとおんなじ。夏のあの日、君と出会ってから、ずっと好きなんだ」
「うふふ、私たちってずっと前からお揃いだったんだね」
嬉しいなあ、そんな言葉をこぼすと同時に、彼女の瞳からぽろぽろ雫がこぼれた。
オレも彼女の両手をギュッと握り返す。ああ、幸せでたまらない。冬の寒さなんて忘れるほど、あったかい気持ちでいっぱいだ。
「じゃあ、これからは恋人同士ってコトで、いい?」
「はい……! よろしくお願いします」
ふへへ、と数日前の出来事を思い出しながら、下ろしたてのタキシードにテキパキ着替えている、そんな時であった。
「すごい気持ち悪い顔になってるぞ、ケイト」
ハーツラビュル寮で相部屋のトレイ・クローバー君は、目元にクラブのスートメイクをしながら、げんなりした顔でそう言った。
「えへへ、気持ち悪くても良いもーん」
大好きな子と恋人になれて、ご機嫌にならないひとなんているもんか。嬉しくていつまで経ってもニヤニヤし続けてしまう。
その上、何と言ったって今日はクリスマス! ナイトレイブンカレッジとナイトシャノワールカレッジが共同で開催する、クリスマスダンスパーティーの日なのだ。
この日まで代表生徒として、それなりに忙しい日々を送り、会場となるレイブン校の大食堂を飾りつけたり、社交ダンスの練習をするなど、色々大変だったけど。全ては今夜、彼女とオレがパートナーとして晴々しく踊る為の前座に過ぎない。
ああ、楽しみだなあ、彼女はどんなドレスを着てくるんだろう。オレもニヤける自分の顔に、ダイヤのスートメイクをして仕上げた。
「よし、完璧! 待っててね、オレのお姫様!!」
「ほんと浮かれてるなあ……」
「んふふ、世界でいちばん可愛いパートナーのいるオレが羨ましいでしょお〜」
「はいはい、そう言うコトにしておくよ」
今のこいつには何を言ってもダメだ、と思われたみたい。
イマイチやる気のなさそうなトレイ君を引っ張って、オレは今年のダンパ会場である大食堂へ向かった。
大きな門を超えた瞬間、オレたち一年生が一生懸命飾り付けた巨大なクリスマスツリーがお出迎えする。大食堂全てのテーブルには、もう既にズラリとクリスマスらしいチキンやピッツァなどの食事が並んでいた。更にその奥では、シャノワール魔女学校の誇る吹奏楽部が、ステージ上で最後の練習を行なっている。
彼女は何処に居るんだろう。まだ会場には着いてないのかな。ソワソワしながら会場中を見渡していると、その中でひときわ輝いて見える黄金色が見えた。
「あっ、るーちゃん!!」
学友と談笑中だったらしい彼女は、オレの呼び声でパッとこちらを向いてくれた。黄金色の華やかで大人っぽいドレスに身を包んだ彼女。オフショルダーで胸元に大きく薔薇を飾ったデザインドレスは、ひときわ輝いて見える。そして、にっこり微笑んでくれる姿は相変わらず天使、いや女神さまみたいだ。
遠目でも美しい彼女にうっとり見惚れていたら「早く駆け付けてやれ」とトレイ君にどんっと背中を押された。あわわッ、なんて情けない声と共に彼女の前に突き出される。
「……ふふっ、相変わらず仲良しだね」
「ったく、ツンデレも程々にしてほしいけどね」
他愛無い会話で彼女の学友たちも何かを察したのか、おふたりでごゆっくり〜とでも言うように、その場を去っていった。
「えーっと……まずはるーちゃん、そのドレスめちゃくちゃ似合ってる、ね!」
「ありがとう。私には少し派手過ぎるんじゃないかと思ったけれど、けーくんにそう言ってもらえたら自信ついちゃった。嬉しい」
けーくんもタキシード姿が素敵だね、ってそんなことを言われたら、もう、またニヤニヤしちゃう!
「それじゃあ、こほんっ」
咳払いと共に、だらしない顔を出来る限りシャキッと整えて、オレは改めて彼女に手を差し出した。
「今夜、オレと踊っていただけますか、お姫様?」
ちょっと格好付け過ぎたかもしれない。彼女は声を「あははっ」なんて弾ませながら、それでも素直にオレの手を取ってくれた。
「もう、私はただの村娘なのに……。こんな私をお姫様にしてくれてありがとう、王子様。ぜひご一緒させてくださいませ」
「君はいつだってオレの、オレだけのお姫様だよ」
オレはまだ曲が始まる前から、彼女の腰を抱いて引き寄せた。ちゅっ、と彼女の額に口づけを落としてみせる。
「け、けーくんったら、」
これには彼女も動揺したらしい、真っ赤な顔でオレを見上げる姿は可愛かった。今日ぐらいは格好付け過ぎたって良いよね?
「……私、クリスマスに良い思い出があまり無いの」
「え?」
彼女の口から、彼女自身の過去の話を聞いたのは、もしかしたら初めてかもしれない。黄金色の瞳を悲しげに伏せた彼女は、でもすぐにニコッと笑って見せてくれた。
「でも、今年は全然違う。ケイト君のおかげで、とっても幸せなクリスマスになりそう」
「へへっ、最ッ高のクリスマスにしようね!」
今年だけじゃなくて、来年も再来年も、これからずっと彼女と二人で過ごせたら幸せだ。そんな浮かれた事を考えた。
さあ、そろそろ一曲目が始まるだろうか。
そんな時だった。
――事件が起こったのは。
オレの真後ろで、誰かがバンッと机を殴り付けたような音が響いて、慌てて振り返る。
「ひどい、酷い、ひどいわッ!!」
そう叫んでオレたちを睨みつけるのは、初めて顔を合わせた少女、真っ黒な長髪と漆黒のドレス姿が何故か恐ろしい。
「えっ、と、君だれ?」
最初に抱いた至極真っ当な疑問だった。
「だれ、ですって!?」
その黒い少女はどうも、オレに怒っているらしい。だけどやっぱり、出会った事がない、初めましてだと思った。
「あんなにケイト君のマジカメを追いかけていたのにッ、私のコメントにもいいねを押してくれたじゃないッ、それでもわからないって言うの!?」
「え、えーっ、マジカメのフォロワーさん? ごめん、やっぱり実際に会ったのは初めてだと……」
「ダンスパーティーだって、あなたが一緒に踊ってくれるものだと思ってた! それなのに、誰よその派手な女!! 許せないッ」
どうやら会話がうまく出来ないひとのようだ。怒りの矛先がルーシャちゃんに向いて、まずい、と思いきや。
「――私はケイト君の恋人ですけれども、何か?」
普段より何倍も鋭い目付きで、彼女はオレと謎の少女の間に立ち塞がった。えっ、カッコいい。
「こ、恋人ぉっ!?」
「ええ、君よりもずっと前から彼を知ってる、好きな物も嫌いな物も、苦手な事も。それでも愛したい、愛されたいと思える、私の大切なひとだけれど、何? 彼に危害を加えるつもりなら、許さないよ」
オレの彼女が格好良過ぎて、俺の格好が付かないんですけど……!!
しかし黒い少女は両手でガリガリと頭をかき乱した後、狂ったように「嘘だ嘘だ嘘だァッ!」と叫び出した。
「恋人なんて嘘だ、私を知らないなんて嘘、嘘よっ、そんなの――」
少女がマジカルペンを構えた。まずい!
「――認めないッ!!」
杖の先からボッと火花が走った! オレも慌ててマジカルペンを構えようとしたが、それよりもルーシャちゃんの方が早かった。
「ハッ!」と一声、彼女とオレの周りに防衛魔法で作られた透明の壁が張られて、炎は彼女の顔の手前で燃え尽きた。
「そ、そんなッ……」
黒い少女は愕然とした様子だ。
「魔法の実力も私の方が上のようだね、わかったら邪魔をしないでくれる?」
こんなに怒っている彼女を見たのは初めてで、緊急事態なのに、彼女に守られてばっかりなんて恥ずべきなのに、格好良くてドキドキしてしまう。
「きいぃっ、許さない、許さない、許さないいぃっ!!」
けれど、やっぱり少女は諦めないようだ。
またマジカルペンを振ったかと思えば、今度はなんと、重力操作で巨大なクリスマスツリーを浮かせ始めた。俺たちの頭上にそれがビュンッと移動してくる。
突然の出来事でざわつく周囲。「オイ何事だ、いったい!?」ドレスコードに身を包んだクルーウェル先生も駆け付けてきた。「ケイト!ルーシャ!危ない!!」トレイ君の叫び声。これはさすがに学んだばかりの防衛魔法では受け止めきれない!
「ルーシャッ、逃げ――!」
逃げよう、と言いかけた所で、ツリーへの重力操作が解除された。ヒューッとツリーが落っこちてくる!ま、間に合わなッ……!!
「――真実の愛に
魔法の詠唱、直後。ガシャーンッと落下したクリスマスツリー。ドサドサッ、カラカラカラ、とツリーの飾りが散らばる音。咄嗟に目を瞑ったオレは、何故か想像していた衝撃がないことに狼狽えた。
恐る恐る、目を開いてみる。
「……え?」
目の前に立っていたのは、オレよりも遥かに背が高くて、毛深くて、牛のような角、ライオンに似た大きな手足、狼みたいに大きな口を持った――野獣が、そこに居た。
「……るーちゃん?」
彼女の愛称が、咄嗟にこぼれた。
野獣はその大きな身体でオレの上に覆い被さり、巨大ツリーの落下から守ってくれていたのだ。
きゃあぁっ、と遠くから悲鳴が上がる。
「な、なんだあの姿は!?」
「怪物だッ!!」
「化け物、化け物よ!」
オレを庇う野獣の瞳が、黄金色の彼女の瞳が、涙で潤んでいくのが見えた。
「――ごめんなさい」
野獣の口が、普段よりも随分低い彼女の声でそう言った。
野獣はまだ大騒ぎしている人混みを掻き分けると、大食堂の窓を開け放ち、そこから飛び降りた。
「待って!!」
オレは必死にそれを追いかけた。でも、間に合わなくて。窓の近くに辿り着いた時には、逃げてしまった野獣の姿は、もう何処にも見えなくなっていた。
「おいっ、ケイト大丈夫か!?」
トレイ君も駆け付けてくれた。オレが無傷である事を知ると、ほーっと安堵したようであった。
「ねえ、トレイ、いまの見た、よね?」
「見た、けど……なんだ、その、ほんとうにルーシャなのか?」
「るーちゃんだよ! 間違いない!!」
あの瞳を、オレが見間違える筈はない!
先程の黒い少女は先生方に取り押さえられているようだ。
「――オレ、彼女を探してくる」
トレイ君はギョッとしていたが、すぐに「やれやれ」と理解してくれたみたい。
「……俺も、学園周辺を探してみる。あんな事があった直後だ、気を付けろよ」
「うん、わかってる」
オレはマジカルペンを掲げて、静かに深呼吸をした。
「オレはコイツで、コイツはアイツ――"
ボワッと俺の周囲に白い煙が吹き出して、出来上がったは己の分身、ザッと十人。
さあ、愛しいお姫様。これだけのトランプ兵から、オレから、逃げられると思わないでよね。
冷え切った闇夜の中を駆ける。
学園周辺から、麓の街まで降りて、街の隅々を"オレたち"は見て回った。けれど、彼女の姿は何処にもない。魔法を使いながら全速力で駆け回るのは、正直キッツイけど、オレがこんなユニーク魔法を持ったのは、きっと君を見つける為だと思うから。
諦めない。きっと賢者の島からは出ていない筈だから、残りは港と海岸付近だ。絶対に見つけ出すからね。
夜の浜辺はあまりにも寒くて凍えそうだった。
「……るーちゃん、みーつけた」
案の定、海岸に獣の大きな足跡を見つけて、その跡を追ったら崖下の波打ち際に、変貌した彼女の姿があった。砂浜に小さく小さく蹲ったフワフワの背中が、ビクッと揺れ動いた。
「ケイト、くん、」
どうして、と涙で掠れた声。
「オレだって立派なトランプ兵なんだから。舐めないでよね──オレの可愛いお姫様、絶対、逃すもんか」
「私はッ、お姫様なんかじゃない!!」
背を向けたままの彼女の咆哮に、今度はオレがビクッと震えてしまった。
「あ、あぁ……見ないで、こんな、こんな姿ッ……化け物だって、怪物だって、言われたの、聞いたでしょう、私……」
確かに、そんな声も飛び交っていた、けど。
「るーちゃんはるーちゃんでしょ、どんな姿でもオレの可愛いお姫様であることは変わらないよ」
「そんなの、嘘……」
「嘘じゃないよ」
ゆっくりと、さくり、さくり、砂浜を鳴らしながら、彼女のそばまで歩み寄る。
振り返った彼女は、やはり"野獣"であった。けれど、その涙をいっぱい溜めた大きな黄金色の瞳、そして瞳とお揃いのドレス姿は、紛れもなく"彼女"である事を示していた。オレを庇ってくれた上に、あちこち逃げ回ったせいか、ドレスは破れて汚れて、くしゃくしゃになっている。
「これって、るーちゃんのユニーク魔法?」
「……うん」
少しずつ、彼女は自分の身の上を話し始めた。
「私の、ユニーク魔法。
戻り方がわからない、そんなユニーク魔法もあるんだ。大体三日、酷い時は1ヶ月も魔力を消費しながら変身状態が続くらしい。
「幼い頃、クリスマスの夜にいきなり発現して、その時も、友達だった子や、母親から、化け物だ、怪物だって、言われて……」
クリスマスに良い思い出が無い、と言っていたのはこのユニーク魔法のせいだったのか。
「でも、るーちゃんはオレを助けてくれた。自分の嫌いな姿になってでも、オレのことを守ってくれた。やっぱり、優しいお姫様だよ」
「お姫様……そんなものになれるなら、なりたかった……私だって、こんな、魔法、嫌ッ……!」
「けど、るーちゃんの魔法が無ければ、オレも君も今頃は保健室に運ばれていたかもしれない」
彼女は黙り込んでしまった。しくしくと泣いている声だけは聞こえる。
オレは彼女の隣に並んで、よいしょ、と座り込む。タキシードが砂で汚れてしまうなんて、そんなことは今どうでもよかった。
「ねえ、るーちゃん」
呼びかければ、恐る恐るこちらを見つめてくれる彼女。
「オレ、どんな魔法も解ける、すごい魔法を知ってるんだ」
「え……?」
ちゅっ、とわざとらしいリップ音を立てて、彼女の狼のように大きな口へ、口付けた。
「……えっ!?」
フワフワの毛皮で包まれているからわかりにくいけど、彼女の頬がぽっと赤らんだ気がする。オレはニンマリと悪戯っぽく笑ってみせる。
「お姫様の呪われた魔法を解くのは、王子様のキスだって。相場が決まってるでしょ?」
そう告げた途端、彼女の2m近くあった体が徐々に縮み始めた。見る見る内に角や牙も消えて、耳も元の位置に、手足も人間のそれに縮んでいく。たった数秒の後、彼女は元通り美しいお姫様の姿に戻っていった。
「あ……ぁ……!」
彼女は歓喜と驚きの混じった声をこぼし、自分の頬を何度も撫でて、黄金色の瞳からぽたぽた涙を落とした。
「ありがとう、ケイトくんっ……私……」
「お礼を言うのはこっちだよ。オレを庇ってくれて、ありがとう。でも、今度何かあった時はオレがるーちゃんを守るんだからね」
「……ふふっ、うん、うんっ、ありがとう」
彼女は先程のように、いや先程よりももっと強い力で、オレに覆い被さるように抱き着いた。オレもぎゅーッと彼女を抱き締め返す。ああ、ようやく、捕まえた。
「もう二度と逃さないからね、オレのお姫様」
「大丈夫、もう平気。だから、一生、離れないよ」
さて、それからのクリスマスダンスパーティーは当然、中止と相成りまして。
後日、気を取り直して決行された。そこで十分にオレと彼女の美しく踊る姿を生徒たちに見せつけたので、もう化け物だ怪物だなんて言葉を吐く奴は居なくなったことだろう。
例の黒い少女はと言えば、当然ながら退学処分となったようだ。あのぐしゃぐしゃにされたクリスマスツリーも、少女の親が弁償する事になったらしい。はあ、本当なんだったんだろう、あの子は。ま、嫌な記憶はさっさと忘れてしまおう。
寒い季節は過ぎ去って、春も通り過ぎ、今のオレたちはサマーホリデーを満喫中だ。
夏と言えば海、そして水着だ。黄色いビキニに、ハイビスカス柄のパレオが、スタイル抜群の彼女によく似合っていた。いつかと同じ、大きな麦わら帽子が可愛らしい。
「あっ、帽子が――!」
海辺の悪戯な風が、ぴゅーっと帽子をさらっていってしまう。オレも慌てて、追いかけたが――。
「真実の愛に
彼女は素早く野獣の姿に変身すると、タンッと高く飛び上がって、さらわれかけた帽子を見事キャッチして見せた。うわ、すごっ!
「ほんっとーに、オレのお姫様はカッコいいんだから」
「ふふ、ありがとう。私ね、もう王子様でも化け物でも、誰にどんな風に見られてもどうでも良くなったんだ。……だって、きみは、きみだけは、どんな私も、愛してくれるんでしょう?」
「もちろん、どんな時でも魔法のキスを捧げますよ」
オレは背伸びをして、彼女のふわふわした頬にちゅっと口付けを落とすのだった。
お姫様は王子様の真実の愛とキスで目覚める、そういうモンでしょ? ふふ!
2024.03.17公開