短い話まとめ
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子分の可愛い秘密
オレ様、知ってるんだぞ。
ユウが時々、きちんと制服を身に付けた後、キレイにリボン結びしたネクタイをわざと斜めに崩していることを。
いつもオンボロ寮までオレ様たちを迎えに来る、エースとデュースは気が付いてない。だけど、毎朝のように登校中のメインストリートで顔を合わせるリドルのヤツだけは目敏く気がつくのだ。
「キミ、少しタイが曲がっているよ」
「わ、すみません……」
「まったく。これで何度目だい? ルールの乱れは衣服の乱れからだ、と口酸っぱく言っているだろう。監督生」
仕方のない子だね、なんて困っているような口調で、ユウのネクタイをわざわざ一から結び直してやるリドル。結び終わった後は、ついでにユウの頭まで撫でてやったりして。いつもはおっかないハートの女王様が、その時だけは優しくて甘ったるい顔をしていることも、オレ様は知ってるんだぞ。
「……うん。これでよし」
「えへへ、ありがとうございます、リドル先輩」
ここまでの行動は、パッと見だけなら先輩を慕うカワイイ後輩と、後輩に優しい良き先輩に見えるんだろう。
けど、ユウはリドルにネクタイを結び直してほしいから、わざと歪ませているし。リドルはユウの身嗜みには細かく気を利かせる癖に、エースやデュースにはそこまで世話をやいたりしない。さすがにシャツがズボンから出てたり、そもそもネクタイを忘れていたり、あまりにもだらしない時はプンスコ怒ってるけど。でも、わざわざリドルが自分の手で身嗜みを整えてやるのは、ユウだけだ。ユウの奴、何でそういうトコには気付かないんだろうナ。
まったく。ユウもリドルも、素直に甘えたいとか甘やかしたいとか言っちまえば良いのに。人間ってほんと、めんどくさいんだゾ。
廊下を歩く途中でリドルと一旦別れた後、ユウは整えてもらったネクタイに触れながらニヤニヤと嬉しそうな顔をしているから、オレ様は大きく聞こえるようにヤレヤレと溜め息をついてやった。
「ユウも案外、悪いヤツなんだゾ」
「……ぅ、な、内緒にしてね、グリム」
恥ずかしそうに口の前で人差し指を置いてお願いする子分は、マア、ちょっとだけ可愛くて。
「ふふん、今夜のゴハンをツナ入りクリームパスタにしてくれたら、考えてやるんだゾ〜!」
「もう、グリムったら!」
オレ様だけが知ってる、子分のカワイイ秘密。こーんな面白いコト、頼まれたって誰にも教えてやらないんだゾ、ニヒヒ。
2020.06.22公開
(シリーズ内から移動してきました。グリム君は良きリド監♀の理解者)