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プラスまとめ

 

 愛する彼女(妻も含む)へ、お花の贈り物をする彼らのお話。



・ルフィ 一輪の向日葵
「お前にやる!」
 麦わらの船長さんがみょーんと腕を伸ばして持ってきたお宝は、大きな向日葵。しかも根っこ付き。船番をしていた彼女への贈り物。よく見ると彼の両手は泥だらけです。
「この島、すんげェ広いヒマワリ畑があったんだ! 明日いっしょに見に行こうな!!」
 お土産ついでに、デートの約束も持ち帰って来ました。泥んこの逞しい両手を拭ってあげながら、ありがとう、とお礼を言えば、向日葵よりも明るい笑顔が返ってきます。
「あー、それだ。その顔! この花、なんかお前に似てると思ったんだ。お前の笑った顔、キラキラして好きだ〜!」
 いえいえそんな、こちらこそ、眩しいくらいのあなたの笑顔が大好きです。貰った向日葵は、考古学者さんに植木鉢を貰って、ふたりで大切に育てましょう。


・ロー 箱入りの薔薇
 通称・死の外科医さんから、ぽん、と投げ渡された上品な黒の小箱。まさか誰かの心臓でも入っているのでは? と恐る恐る箱を開けると、赤や桃の可愛らしいミニバラがいっぱいに詰まっていました。こんな素敵なものどうしたの、と問えば、
「……お前、麦わら屋の船に乗った時、ニコ屋の育てた花壇を羨ましそうに見ていただろう」
 大変意外な返答です。彼女のことを日頃からよく見守っている成果でしょう。箱の中の花は、プリザーブドフラワーという半永久的に枯れない魔法の花らしい。
「うちは潜水艦だからな、花を育てるには不向きだ。……それで我慢しろ」
 嬉しい、ありがとう! 素直にお礼を言っても、ふいっ、とすぐに背を向けて立ち去る船長さん。でもアザラシみたいな帽子の隙間から覗く耳が、薔薇のように赤くなっているのが見えました。


・チョッパー 白詰草の指輪
 ちょんちょん、蹄の先で彼女の服の裾を引っ張るトナカイの船医さん。なんだか少しもじもじしています。
「なあなあ、ちょっと手、出してくれよ」
 何かの診察でしょうか。素直に右手を差し出すと「違うっ、反対の手!」そう顔を真っ赤にして言われるので、左手を出しましょう。彼女の薬指にぎゅっと飾られたそれは、白詰草で作った花の指輪でした。わあ、可愛い! と喜べば彼もご満悦。
「エヘヘ、ロビンに作り方を教えてもらったんだ! あのな、どっか遠くの国では、け、結婚する時に指輪の交換? するんだって」
 本物の指輪も、いつか、お前に……。ごにょごにょと小さく消えていく声、照れる彼にこちらまで頬が熱くなってしまう。素敵な贈り物をありがとう。これからお花の指輪を永久保存する方法を探しに行きます。


・ベポ 道端の蒲公英たんぽぽ
 白熊の航海士さんのモフモフ前足がずいっと目の前に現れて、震えながら差し出された蒲公英。その小さな黄色い花はへにゃりと首が折れてしまい、元気がありません。
「ほんとうは、ふつうの恋人みたいに、お店で綺麗に飾ってもらった花束とか、お前に贈りたかったんだけどな、」
 元気のない蒲公英のように、彼もしょんぼり俯いてしまっている。
「おれ、熊だから、お花屋さんの人に怖がられちゃって……。ごめん」
 落ち込む彼の頭をよしよし撫でてあげれば、ほんの少しだけ泣きそうな顔が緩んだ。ありがとう、あなたの気持ちがいちばん嬉しいです、と微笑む彼女に、結局嬉し泣きしてしまった白熊さん。貰った蒲公英は押し花に、栞へ姿を変えて、彼女の宝物になりました。


・ブルック 秋桜の花冠
 夜、甲板でぼんやり月を眺めていると、ふんわり頭に何か乗せられた違和感で振り返る。顔の近くに髑髏のどアップがあって、一瞬悲鳴を上げそうになるも、すぐ骸骨の音楽家さんだと気付いて声を飲み込んだ。彼女の頭を飾っているのは、秋桜で作られた花冠。実は彼のお手製、さすが器用な指先。こちらも作り方は考古学者さんに教わったらしいです。
「嗚呼、本当に、思わず溜息が溢れてしまうほど、よくお似合いだ。文字通り、花嫁のようですね」
 うっとりとした声、ひんやり頬を撫でる骨の指先に、じんわり体が熱くなる。花婿さんは勿論あなたですよね、と問うても、返事は笑い声しか返ってこないけど。
「ささ、お美しい花嫁様。お手をどうぞ。私と一曲、如何です?」
 そっと真っ白な手を取って、ふたりきりの結婚式ごっこをしましょう。


・カタクリ 大輪の花束
 おかえりなさい、そう笑顔で旦那様を出迎えた瞬間、目の前で一斉に咲いた大輪の花束。その花の量に驚いていると、花束の上からシャーロット家の次男さんが顔を覗かせる。
「遠くの友好国からコムギ島へ遥々花屋が来ているから、つい、買い過ぎてしまった」
 この辺りではあまり見慣れない、顔なんて付いてないし喋る事もない極々普通の花が、彼らには珍しかった。
「お前に似合う花を選んできた」
 こんな大きな花束は到底彼女の小さな両手では受け止めきれない為、花束からカーネーションを一輪抜き取って、彼女の髪に飾る。
「……やはり、よく似合う」
 ありがとうございます、と愛おしげに微笑み合う仲良し夫婦。頂いた色とりどりのお花は屋敷中に飾り付け、今日は芳しい香りに包まれてのメリエンダです。





2019.09.12
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