つわものもとめて三千里
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「はは、こんなもんか…つまんないなぁ…」
激しい嵐の夜だった。泥か血なのかもわからないほどぐちゃぐちゃになった地面に一人たたずむ男は退屈そうに吐き捨てた。
「もっと手応えのある奴はいないもんかな…もっとゾクゾクさせてくれるような…」
ブツブツとそう言いながら愛刀に着いた血を拭き取り、その手拭いを放り投げた。
「…そうだ、金塊の話…それが本当なら…。金塊を目当てにいろんな奴らが集まってくるはず…俺の求めた強者が…!それに、囚人どもはきっととんでもない奴らにちがいない…っ!!!」
それまで通夜のように沈んでいた男は、玩具を買い与えられた子供のように上機嫌になり、足取りもかろやかになった。
「(にしても、ぜーんぶぐしゃぐしゃになっちゃったなぁ…ま、いっか!)」
うさぎのように跳ねながら、男は立ち去った。
「金塊が隠された場所は北海道だとか言ったかな…?たしか…。んで、金塊のありかを示す墨を入れた囚人達は脱獄、そのまま森の中で消息を絶った、と。ふーむ、ほんとかねぇ。どう思う?サスケ」
「ピュゥ!」「そーかそーか!!そうだよな。きっとあるに違いない」
サスケは、大きな美しいハクトウワシである。男が過去にアメリカから密輸してきた男を殺した際に見つけた卵を介抱し、孵化させたものだった。互いに強い絆で結ばれている。
「そうなれば明日にでも出発しようか。ん?どうやって渡るかって?心配ないさ!つてを使ってわたればいいさ…」
「ピュ…」「そんなことで大丈夫なのかって?大丈夫さ!」
男はそう言い、サスケをもふもふと撫で回した。
「さーて、もう寝るか!消すぞ、サスケ。おやすみ」
「ピョウ!ピョウ!!!」
まだ外が薄暗い明け方、普段なら静まり返り夜明けを待つ時間だが、サスケのけたたましい鳴き声が響いた。サスケは男の腹に乗ってジャンプしたり、耳にかじりついたりしている。
「なんだよ…まだはやいだろ…………あっ!!!!!!」
しまった!と言わんばかりの声に思わずサスケは飛び上がった。
「い、急いで支度しろ!サスケ!」「ピュロロ…」
急ぐのはあんただよと言いたげにサスケは鳴いた。呆れたように毛繕いを始めた。
「う、…よーし!出発!!出発!!!」「ピィ!」
荷物を指差し確認をしたのちに、男は急いで寝屋を飛び出していき、目的の場所へと急いだ。それに続き、サスケも大きな翼を広げ飛び立った。
「あっ!靴下はくのわすれた!!」
どうやらこの男、少々抜けているらしい。
「ピロロ……」まるでため息をつくように鳴いた。
「ぜぇ、はぁ、…おやっさん!!遅れて悪いーーっ!」
目的の場所に着く頃には汗でグッショグショになっていた。
「バカヤロウ!おせぇぞ!何かあったかと心配しちまったじゃねぇか!!ったく、ほらよつかえ。汗でぐしゃぐしゃじゃねーか。拭いたらとっとと乗りな!出すぜ」
「わりーなおやっさん!」
おやっさんから受け取った手ぬぐいで滴るほどの汗を拭き、息を整え男は一歩船へと乗り込んだ。
「楽しみだな!サスケ!」「ピローッ!」
この時この男とサスケは想像以上の大事件に巻き込まれるとは思ってもいなかった。
船が出て数十時間、男は異変を感じて目を覚ました。
「おいっ!おやっさん!なんか揺れが激しいけど大丈夫なのか?!」返事はない。
「サスケ、万が一に備えて離れてな。嫌な予感がするぜ」
そうしてサスケを飛び立たせた後、男はゆっくりと甲板に出ていった。嫌に張り詰めた空気が針のように肌を刺す。静かに愛刀を抜刀、構えた。
「でてきな。命まではとらねぇよ。」
背後を確認するために振り向こうとした瞬間、死の匂いを感じ、即座に振り返る。そして目に飛び込んできたのは、目も向けられないほど無惨に崩れたおやっさんの遺体だった。
「シャチだな、かまわねぇ。かかってきな。俺の仲間に手を出した奴はただじゃ置けない主義でね」
まるで人が変わったように冷たい声色だった。殺す、それ以外考えていないような声だった。
「来ないなら、俺が行く」
一言残して、男は海の中に飛び込んで行った。
男の予想は的中していた。海のギャングと呼ばれるほど凶暴で賢いあのシャチだった。
「かかってきな。」
シャチは男に気付くと大きな口を開け、凄まじい速さで距離を詰めてくる。だが、見切っていた。殺すことに全神経を集中させていた男の前では止まっているように見えただろう。一太刀でシャチを切り捨て、葬り去った。
「おやっさんの仇だ。(このままじゃ血の匂いで集まってきちまうな。)」
わずか数秒の戦いだった。
「(やっべ、息がモタねぇ…集中しすぎて水中なことをわすれてた…)」
男は息を使い果たし静かに気絶してしまった。
「ピローッ!!」
サスケの必死な呼びかけは耳には届かなかった。
「………ぐ、ぐぇほっ、ぐぇほっ!!ぐぇっ……」
数時間後、男は浜に打ち上げられ、サスケの必死の介抱で水を吐くことが出来た。
「あ…あぶなかった…ありがとうな…サスケ」「ピロピロ!」
今意識を取り戻したばかりにもかかわらず、いつものように立ち上がり、森を目指さんと歩みを進め出した。
「(にしても、どこかで暖を取らないと死ぬ…ど、こ、か…)」
冬の海はあまりにも寒く、むしろ男が生きているのが不思議なほどだった。とはいえ、確実に歩みは弱まっていきやがて山のど真ん中で行き倒れてしまった。
「ピッ、ピロ~…」
サスケにはどうすることもできず、ただ寄り添って身体を温めることしかできなかった。
バキッ
近くで枝を折るような音がした。まさか熊ではなかろうか、サスケは思った。果たして自分には主人を守り抜くことができるだろうか?ヒグマ相手に?サスケの全身の羽毛が膨れ上がった。全神経が音源に向かった。行くしかない!そうサスケは思った。
「ピギャァァァアッ!!ギャギャギャギャ!!!」
次の瞬間、サスケの身体は動いていた。
大きな翼を広げ、音源に向かって最大の雄叫びを上げた。
「アシリパさんなんだこの鳥は!?」「あんな鳥見たことないぞ!!杉元!」
「ピギッ!?」
一番驚いたのはサスケだった。思わずうまく羽ばたくことが出来なくなり、パニック状態で男の元へと転がり落ちていった。
「な、なんだったんだ…?」「見に行ってみよう、杉元」
「ピッ!ピヨロロ!」
どうにか落ち着くと、サスケは杉元とアシリパに助けを求めるように鳴きわめいた。
二人が斜面を滑り降りてくる。
「なんだ、死体か?だが、外傷が見られないな。ヒグマでもなさそうだ。(アイヌ、ではないな。猟師にしても軽装がすぎるな。拳銃一つ持ってやしねぇ。あるのは刀だけ、か。)」「もしかして…低体温症じゃないか?!」
「それはまずいぜ、急いで火をおこさねぇとな…!!」
「ピッ!!」サスケも薪集めに加わり、二人と一羽で急いで火を起こした。
「手遅れでないといいけど…」「そん時はそん時だな。にしても、そこの鳥は初めてみるぜ。外国の鳥か?こっちに来いよ、チッチッ」「きっと腹が減ってるんだな。杉元、今日とった兎の肉は残ってなかったか?」「そうだな」
杉元がおもむろに兎の肉を取り出し、サスケの口の前に差し出した。「ビルル…」
初めて見る者に警戒し、なかなか食べようとはしなかった。
「鳥、これは食べ物だぞ!ほら」
アシリパが口にするのを見て、ようやく食べ始めた。
「ピョヨヨ~♪」「よかったよかった」
焚き火を初めて数十分、ピクリともしない男に周りが不穏な空気になる。相変わらずサスケはぴったりとつき、温めることしか出来なかった。
「……っふ……う…寒い…」
もうダメかと二人が思っていた矢先に、男が意識を取り戻した。
「ピヨーーッ!!」
サスケが嬉しそうに羽ばたく。
「よ、にいちゃん。目ぇ覚めたか?」「お前山の中で死にかけていたぞ!」
「……ワァァァァーッ!!日本兵の霊だ!!!!それにアイヌの子供も!!!!俺はもうダメだぁ~っ……」
「誰が霊だ失礼な!!」「あだっ…」「杉元!やめろ」
やり取りはこんな感じだが、あたりの雰囲気はあからさまに明るいものになっていた。
男は乾いた服を着て、一息着いてから二人と話を始めた。
「俺は、刀次。ある目的を追ってここに渡ってきた。こいつはハクトウワシのサスケ。察しはついてるとは思うがアメリカの鳥だ。」
「そうか。俺は杉元だ。」「私はアシリパ。見ればわかると思うがアイヌだ」
「アイヌの人なのに日本語も使えるもんなんだな」「それなりの人たちは使えるぞ」
焚き火を囲んで和気藹々と自己紹介をし、緊張が解けて行った。
「ところで~…俺の刀は?」「そこだ」
立てかけてある愛刀を手に取り、一通り傷や歪みがないか確かめた。
「うん、ありがとな」
「ところで…随分と軽装みたいだが、なんの目的でここにきたんだ?軍人でもなさそうだし猟師でもないだろう」「確かにそうだな」
「ん~…」
この間を置いてしまったことで、明らかに場の空気が冷たくなったのがわかった。まずかっただろうか、と思わず刀を握る力が強くなった。
「まぁ、命の恩人だし、正直に話すよ。じつは、北海道のどこかに隠された金塊ってのを探してるんだ。もし見つかれば母さんに楽させてあげられるとおもってな。それに、持病を治してやりたいんだ」
「……」「……」
金塊の言葉が出た途端、二人は黙り込んだ。
アイコンタクトを取り、うなづいた。
「じつは俺たちもそれを追ってるんだ。仲間は一人でも多い方がいい。」「利害が一致してるんだ。私たちと一緒に来ないか?」
それまで緊張していた銀の表情が柔らかいものとなった。
銀は手を差し出した。
「もちろんさ、杉元、アシリパさん、一つよろしく」
お互いに握手を交わし、3人と一羽で金塊をめぐる旅が始まった。
「(あぁ…杉元……あなたからは強者の臭いがします…死の匂いも……♪)」
激しい嵐の夜だった。泥か血なのかもわからないほどぐちゃぐちゃになった地面に一人たたずむ男は退屈そうに吐き捨てた。
「もっと手応えのある奴はいないもんかな…もっとゾクゾクさせてくれるような…」
ブツブツとそう言いながら愛刀に着いた血を拭き取り、その手拭いを放り投げた。
「…そうだ、金塊の話…それが本当なら…。金塊を目当てにいろんな奴らが集まってくるはず…俺の求めた強者が…!それに、囚人どもはきっととんでもない奴らにちがいない…っ!!!」
それまで通夜のように沈んでいた男は、玩具を買い与えられた子供のように上機嫌になり、足取りもかろやかになった。
「(にしても、ぜーんぶぐしゃぐしゃになっちゃったなぁ…ま、いっか!)」
うさぎのように跳ねながら、男は立ち去った。
「金塊が隠された場所は北海道だとか言ったかな…?たしか…。んで、金塊のありかを示す墨を入れた囚人達は脱獄、そのまま森の中で消息を絶った、と。ふーむ、ほんとかねぇ。どう思う?サスケ」
「ピュゥ!」「そーかそーか!!そうだよな。きっとあるに違いない」
サスケは、大きな美しいハクトウワシである。男が過去にアメリカから密輸してきた男を殺した際に見つけた卵を介抱し、孵化させたものだった。互いに強い絆で結ばれている。
「そうなれば明日にでも出発しようか。ん?どうやって渡るかって?心配ないさ!つてを使ってわたればいいさ…」
「ピュ…」「そんなことで大丈夫なのかって?大丈夫さ!」
男はそう言い、サスケをもふもふと撫で回した。
「さーて、もう寝るか!消すぞ、サスケ。おやすみ」
「ピョウ!ピョウ!!!」
まだ外が薄暗い明け方、普段なら静まり返り夜明けを待つ時間だが、サスケのけたたましい鳴き声が響いた。サスケは男の腹に乗ってジャンプしたり、耳にかじりついたりしている。
「なんだよ…まだはやいだろ…………あっ!!!!!!」
しまった!と言わんばかりの声に思わずサスケは飛び上がった。
「い、急いで支度しろ!サスケ!」「ピュロロ…」
急ぐのはあんただよと言いたげにサスケは鳴いた。呆れたように毛繕いを始めた。
「う、…よーし!出発!!出発!!!」「ピィ!」
荷物を指差し確認をしたのちに、男は急いで寝屋を飛び出していき、目的の場所へと急いだ。それに続き、サスケも大きな翼を広げ飛び立った。
「あっ!靴下はくのわすれた!!」
どうやらこの男、少々抜けているらしい。
「ピロロ……」まるでため息をつくように鳴いた。
「ぜぇ、はぁ、…おやっさん!!遅れて悪いーーっ!」
目的の場所に着く頃には汗でグッショグショになっていた。
「バカヤロウ!おせぇぞ!何かあったかと心配しちまったじゃねぇか!!ったく、ほらよつかえ。汗でぐしゃぐしゃじゃねーか。拭いたらとっとと乗りな!出すぜ」
「わりーなおやっさん!」
おやっさんから受け取った手ぬぐいで滴るほどの汗を拭き、息を整え男は一歩船へと乗り込んだ。
「楽しみだな!サスケ!」「ピローッ!」
この時この男とサスケは想像以上の大事件に巻き込まれるとは思ってもいなかった。
船が出て数十時間、男は異変を感じて目を覚ました。
「おいっ!おやっさん!なんか揺れが激しいけど大丈夫なのか?!」返事はない。
「サスケ、万が一に備えて離れてな。嫌な予感がするぜ」
そうしてサスケを飛び立たせた後、男はゆっくりと甲板に出ていった。嫌に張り詰めた空気が針のように肌を刺す。静かに愛刀を抜刀、構えた。
「でてきな。命まではとらねぇよ。」
背後を確認するために振り向こうとした瞬間、死の匂いを感じ、即座に振り返る。そして目に飛び込んできたのは、目も向けられないほど無惨に崩れたおやっさんの遺体だった。
「シャチだな、かまわねぇ。かかってきな。俺の仲間に手を出した奴はただじゃ置けない主義でね」
まるで人が変わったように冷たい声色だった。殺す、それ以外考えていないような声だった。
「来ないなら、俺が行く」
一言残して、男は海の中に飛び込んで行った。
男の予想は的中していた。海のギャングと呼ばれるほど凶暴で賢いあのシャチだった。
「かかってきな。」
シャチは男に気付くと大きな口を開け、凄まじい速さで距離を詰めてくる。だが、見切っていた。殺すことに全神経を集中させていた男の前では止まっているように見えただろう。一太刀でシャチを切り捨て、葬り去った。
「おやっさんの仇だ。(このままじゃ血の匂いで集まってきちまうな。)」
わずか数秒の戦いだった。
「(やっべ、息がモタねぇ…集中しすぎて水中なことをわすれてた…)」
男は息を使い果たし静かに気絶してしまった。
「ピローッ!!」
サスケの必死な呼びかけは耳には届かなかった。
「………ぐ、ぐぇほっ、ぐぇほっ!!ぐぇっ……」
数時間後、男は浜に打ち上げられ、サスケの必死の介抱で水を吐くことが出来た。
「あ…あぶなかった…ありがとうな…サスケ」「ピロピロ!」
今意識を取り戻したばかりにもかかわらず、いつものように立ち上がり、森を目指さんと歩みを進め出した。
「(にしても、どこかで暖を取らないと死ぬ…ど、こ、か…)」
冬の海はあまりにも寒く、むしろ男が生きているのが不思議なほどだった。とはいえ、確実に歩みは弱まっていきやがて山のど真ん中で行き倒れてしまった。
「ピッ、ピロ~…」
サスケにはどうすることもできず、ただ寄り添って身体を温めることしかできなかった。
バキッ
近くで枝を折るような音がした。まさか熊ではなかろうか、サスケは思った。果たして自分には主人を守り抜くことができるだろうか?ヒグマ相手に?サスケの全身の羽毛が膨れ上がった。全神経が音源に向かった。行くしかない!そうサスケは思った。
「ピギャァァァアッ!!ギャギャギャギャ!!!」
次の瞬間、サスケの身体は動いていた。
大きな翼を広げ、音源に向かって最大の雄叫びを上げた。
「アシリパさんなんだこの鳥は!?」「あんな鳥見たことないぞ!!杉元!」
「ピギッ!?」
一番驚いたのはサスケだった。思わずうまく羽ばたくことが出来なくなり、パニック状態で男の元へと転がり落ちていった。
「な、なんだったんだ…?」「見に行ってみよう、杉元」
「ピッ!ピヨロロ!」
どうにか落ち着くと、サスケは杉元とアシリパに助けを求めるように鳴きわめいた。
二人が斜面を滑り降りてくる。
「なんだ、死体か?だが、外傷が見られないな。ヒグマでもなさそうだ。(アイヌ、ではないな。猟師にしても軽装がすぎるな。拳銃一つ持ってやしねぇ。あるのは刀だけ、か。)」「もしかして…低体温症じゃないか?!」
「それはまずいぜ、急いで火をおこさねぇとな…!!」
「ピッ!!」サスケも薪集めに加わり、二人と一羽で急いで火を起こした。
「手遅れでないといいけど…」「そん時はそん時だな。にしても、そこの鳥は初めてみるぜ。外国の鳥か?こっちに来いよ、チッチッ」「きっと腹が減ってるんだな。杉元、今日とった兎の肉は残ってなかったか?」「そうだな」
杉元がおもむろに兎の肉を取り出し、サスケの口の前に差し出した。「ビルル…」
初めて見る者に警戒し、なかなか食べようとはしなかった。
「鳥、これは食べ物だぞ!ほら」
アシリパが口にするのを見て、ようやく食べ始めた。
「ピョヨヨ~♪」「よかったよかった」
焚き火を初めて数十分、ピクリともしない男に周りが不穏な空気になる。相変わらずサスケはぴったりとつき、温めることしか出来なかった。
「……っふ……う…寒い…」
もうダメかと二人が思っていた矢先に、男が意識を取り戻した。
「ピヨーーッ!!」
サスケが嬉しそうに羽ばたく。
「よ、にいちゃん。目ぇ覚めたか?」「お前山の中で死にかけていたぞ!」
「……ワァァァァーッ!!日本兵の霊だ!!!!それにアイヌの子供も!!!!俺はもうダメだぁ~っ……」
「誰が霊だ失礼な!!」「あだっ…」「杉元!やめろ」
やり取りはこんな感じだが、あたりの雰囲気はあからさまに明るいものになっていた。
男は乾いた服を着て、一息着いてから二人と話を始めた。
「俺は、刀次。ある目的を追ってここに渡ってきた。こいつはハクトウワシのサスケ。察しはついてるとは思うがアメリカの鳥だ。」
「そうか。俺は杉元だ。」「私はアシリパ。見ればわかると思うがアイヌだ」
「アイヌの人なのに日本語も使えるもんなんだな」「それなりの人たちは使えるぞ」
焚き火を囲んで和気藹々と自己紹介をし、緊張が解けて行った。
「ところで~…俺の刀は?」「そこだ」
立てかけてある愛刀を手に取り、一通り傷や歪みがないか確かめた。
「うん、ありがとな」
「ところで…随分と軽装みたいだが、なんの目的でここにきたんだ?軍人でもなさそうだし猟師でもないだろう」「確かにそうだな」
「ん~…」
この間を置いてしまったことで、明らかに場の空気が冷たくなったのがわかった。まずかっただろうか、と思わず刀を握る力が強くなった。
「まぁ、命の恩人だし、正直に話すよ。じつは、北海道のどこかに隠された金塊ってのを探してるんだ。もし見つかれば母さんに楽させてあげられるとおもってな。それに、持病を治してやりたいんだ」
「……」「……」
金塊の言葉が出た途端、二人は黙り込んだ。
アイコンタクトを取り、うなづいた。
「じつは俺たちもそれを追ってるんだ。仲間は一人でも多い方がいい。」「利害が一致してるんだ。私たちと一緒に来ないか?」
それまで緊張していた銀の表情が柔らかいものとなった。
銀は手を差し出した。
「もちろんさ、杉元、アシリパさん、一つよろしく」
お互いに握手を交わし、3人と一羽で金塊をめぐる旅が始まった。
「(あぁ…杉元……あなたからは強者の臭いがします…死の匂いも……♪)」