壮大なプレゼント【完結済】


欠片の勇者の使命は時空のかけらを護ること。
その為 一つの場所に留まらない、常に旅を続けている。




「勇者様!お昼ご飯の準備ができましたよ~!」



「おおー、ありがとな」


だが先日この村の近くで、魔物に襲われている一人の子供を助けた。

その子供は村長の孫であり、お礼に村の祭りを楽しんでいってもらいたいと歓迎された。



「今日もお散歩してたんですか?」



時空のかけらを護るために放浪する。

という特に目的の無い旅に慣れている俺は、ひとつの村に長居するのが苦手で…暇を持て余していた。



「よかったら村の中をご案内しますよ!」



「いやでも、祭りの準備で忙しそうだしな」



その祭りというのも本来は一週間後の予定だったらしいが、偶然誕生日の近かったこの俺に合わせ、早めてくれるそうだ。



「いよいよ明後日ですもんね!楽しみにしててくださいね!」




俺としては、あまり同じ場所に居続けると…


「みーっつけた!バカグランド!!」



「はぁ…やっぱり来た 」



「お友達ですか?」


「いや全然。危ないから、お前はみんなのところに行ってな?」



俺の持っている時空のかけらを狙っている、堕天使アージェント。


コイツにつきまとわれて…もう1年以上経つのか。



「今日こそはお前の時空のかけらをいただくからな!」



「しつこい奴だなぁ…毎回そう言って返り討ちにされてるだろ?」



「うるさい!!オイラは何がなんでも時空のかけらを使って天使に戻って、神界に帰るんだよ!」



コイツは元々天使だったが神によって羽根をもがれ、堕天使として地上をウロウロしている…… 俺から言わせればただのガキだ。



「言っとくけどなぁ!今までのオイラとは違うんだぜ?」



「何がどう違うんだよ」



「堕天使生活が長かったオイラは堕天使として大幅にレベルアップした。神様から直接通達も来たんだ…天使だった頃よりもめちゃくちゃ強いんだからな!」



「ならもう天使に戻らなくていいじゃねえか」


「それは駄目だ!オイラは強くなって神様のために働きたいわけじゃなくて、天使に戻って師匠達の所に帰りたいんだよ!」



「そのレベルアップを果たした強い堕天使のままじゃ帰れないのか?神から直接通達が来たってことは、神界に行くのだって許されるだろ?」



「それはそうなんだけどさ…神様のところには行けても、天使のところには行けないんだよ。だからみんなと同じ天使に戻りたいんだ!」



「めんどくせえとこだな、神界って……ならとっとと始めるぞ」






村はずれの見晴らしの良い丘。

ここなら少しぐらい暴れても村人の迷惑にはならんだろう。



「よっしゃぁぁ!!必殺!堕天使モード発動!!」


「げっ…」




少しぐらい暴れても~なんて思ったが…コイツが力を発動した瞬間、周りの草花が枯れ始めた。



「見たかこの力…神様に『破壊の堕天使』っていう異名までもらったんだぞ!!」


「見たままの通り名を追加されただけじゃねーか」


「名前だけじゃなくてちゃんと強くなってんの!!いっくぜぇぇぇ!!死神落としっっ!!!」




凄まじい速さで飛び上がり、俺の頭上めがけて……ただのかかと落としか。


「って避けんなよぉぉ!!」


「馬鹿正直に当たる奴がいるか」



「だったら……死神シュートォォ!!」



何もないところを蹴りあげると俺に向かって衝撃波が飛んでくる…まあ普通にかわすけど。



「何でさっきから簡単に避けるんだよ!!」



「お前なあ、攻撃を放つ直前に技の名前をいちいち大声で叫ぶなよ。それを合図に避けてくれって言ってるようなもんだぞ?」



「仕方ねーじゃん!オイラの声に呼応して力が引き出されるんだからさっ!」



「だからそういうのはなあ…こうするんだ」



「は?なん―」

「落ちろ いかずち!」


「にぎゃぁぁぁ!!!!」




「…俺の場合はわざわざ魔法の名前を言わなくても、力のイメージをしやすいワードで…って聞いてねえか」




コイツにはよく厨二病と馬鹿にされるが、俺の魔法の使い方はいかに早く敵を片付けるかの手段に適している。


ちなみに【厨(中)二病】という異世界の言葉の意味を少し前に知ったが…あまりにも不名誉なので力づくで辞めさせた。









「ちくしょうぅ…アホグランドめ…」



それ以来こいつは俺のことを厨二病勇者とは呼ばなくなったが、名前の前にバカやアホを付けないと気が済まないらしい。



「覚えてろよー! 明日…はゆっくり休んで、あさってまた来てやるからなー!」


「別に一生来なくていいぞ」



こんなやり取りを、俺たちは毎度のように繰り返している。



……そしてそれから二日後の夜、この村の祭りが行われた。





「勇者様見て見て!金魚取れました~!!」


「おー、すごいな。上手だぞ」



夜通し行われるこの祭りの最中に…俺はひとつ歳をとるのか。


ただ今日は、あの堕天使のガキが来るとか言ってたが…。


「この綿あめうっまぁ!!」



「…何してんだお前」




時空のかけらを奪うことを忘れて、普通に祭りを楽しんでいる………まあ祭りの中で大暴れされても困るから別にいいんだが…。



「お!クソグランドじゃん!」


「食べながらクソとか言うな」



「そういや、最近アイツは一緒じゃねえの?」



「アイツって?」



「アイツだよ~!あのほら…ぶりっ子サイコパス!」



「誰だソレは。そんな知り合いいねえよ」



「だから、深すぎる闇を持った素人勇者だよ!」



「シンのことか?アイツは……弟子にしてくれって言って旅に着いてこようとするから、この前立ち寄った街で撒いた」


「厨二びょっおっとー、アホグランドに憧れるなんて変な奴だな~。なんで弟子にしねえの?」



「弟子をとるなんて、俺のガラじゃねえんだよ…それより今、厨二病って言おうとしたよな?」


クソガキ堕天使…村の中じゃなかったら吹っ飛ばしてやるのに。



「うーん、おじいちゃん遅いなぁ…勇者様!僕、見てきますね!」



「ん?ああ、道に迷うんじゃないぞ」



「は~い!」




「この村出身の子供なんだから迷うわけねーじゃん」



「こんだけの人混みなら、迷うことだってあるだろ」



「そうかなー」



「お前ら堕天使の感覚と人間の子供を一緒にするな」



「お前ら堕天使って言い方はなんか違う気がするけどなぁ。オイラは元々、天使だったわけだし、仲間だって天使なんだから」



「どうでもいいだろそんなこと」



「よくねーよ!それにオイラ達の師匠は、一部の天使を束ねる立派な死神でさあ…」


「なんで死神が天使を束ねてんだよ」



「死神でも神は神だぞ?神様事情もいろいろあるんだよ……あれ?」



「…なんだよ?」



「そういやアンタ、よく見ると師匠に似てるかも」



「はあ?」



「口が悪いところとか、厨二病っぽいところは前から似てるなーって思ってたけどさ…改めて見ると顔も…」



「俺に似てるって……そんなに若い師匠なのか?その死神」



「いや師匠はおっさんだけど」


「つまり俺がおっさんってことかコラ」


「あ!そういや明日って師匠の誕生日だ!」



「え……そいつも?」



「そいつもって、アンタも?」



「そう、だけど…」


「へ~!あと数時間でお前と師匠の誕生日なのか、すっげえ偶然だなあ!!」





………偶然、か?



「そうだ!このお祭りで師匠のプレゼントを見繕って明日は神界に帰ってみようかな♪」



「…帰っても天使のところには行けないとか言ってなかったか?」



「うん、でも神様にバレなきゃ大丈夫だと思うんだよな」



「そんな簡単なもんか?掟やらルールを破ったらそれこそ神に…」


「いいんだよ!!オイラは偉い上司の神様じゃなくて師匠と仲間に会いたいんだから!」




「死神の師匠と、仲間の天使にか…」


「お客さぁぁん!!射的やってかない!?」


「お!ちょうどいい出店発見!」



賑やかな店員がいるその出店は、なかなか凝った作りの射的屋だった。

回転している土台に乗っている景品…それもスピードが不規則で、当てるにはコツがいるだろう。



「けっこう簡単そうだなあ」


「おお!!!言いますねーお客さん!!」



「師匠にはぬいぐるみよりも、珍しいお菓子かな…」


「うんうん!ぬいぐるみは的が大きいけど、倒すのがねえ」



「…なあオッチャン、ちょっと黙っててくんない?」


「お客さん!説明は聞いといた方がいいですよ〜」


「オイラ説明はいらないからさ」


「いやいやだめですって!ちゃんと聞いておかないと!あとで難しいとか文句言っても知らないよぉ?」


「集中できないから黙れって」


「いやですから〜」

「黙れ」



「あ、はい…」



一瞬だけ必殺堕天使モード?になった気がするが……堕天使のガキはおもちゃの銃を構え、淡々と撃ちまくった。



「お、お見事ぉぉ!!!」


「へっへーーん!こんなの、横から偉そうに茶々入れるやつがいなけりゃ簡単なんだよ!」



コイツの動体視力は確かに凄いからな…。



「それにオイラの勘は、天使の中で一番なんだぜ!」


「って全部勘で当てたのかよ」


「オッチャン!これ全部包んでー!」



景品を包んだ袋を手に、祭りを楽しむ様子は本当にただのガキそのものだった。



「へへっ♪大収穫♪」



師匠と仲間に会うのがよっぽど嬉しいんだろうな。


「ゆ、勇者様ーー!!」



ん?あの声は…。


「勇者様!大変ですー!!」



俺達の元に、村長の孫が血相を変えて走ってきた。



「あ、あの!おじいちゃんが!」


「村長に何かあったのか?」


「急に熱を出して倒れちゃって…でもお医者様が薬切らしちゃってるって……いつもは村はずれの丘にある薬草を摘みに行くんですけど!」



村はずれの丘って、確か…


「え!?オイラが暴れたところ!?」







二日前この堕天使のガキが必殺堕天使モードとか言って力を発動し、辺り一面を荒れ果てた地にしちまった場所か。







「で、一応来てみたが……本当にただの荒野だな」



「うぅ~…力加減が出来なくてつい…」



薬草はおろか雑草すら残っていなかった。

この状況を打破するには、時空のかけらを使えばいい話だが…。



「あのさぁ、アンタの時空のかけらって…」


「基本、かけらと欠片の勇者の俺を護る時しか使えねえよ。時空間や世界の次元のバランスに悪影響を及ぼしかねないからな。」



「だよなぁ… 」



「基本はな。だが【時空のかけら】にも意思がある。 かけらの気分次第とも言えるんだ」



「なんだよ気分次第って…そんなん待ってられっかよ!」



「ああ、 少なくともあと…」


「だあぁぁもう!しゃあねえな!!オイラが一肌脱いでやるよ!」




堕天使はそう言うとまた必殺堕天使モードとやらを発動させたが……二日前とは違い、 枯れた大地が緑色に染まっていった。




「復活しやがれ……エンジェルヒーリング!!」




堕天使のガキが唱えたのは、天使が使える回復魔法だった。


荒れ果てた荒野のようになっていた丘が、元の姿に戻り…薬の材料となる薬草も、すぐに見つかった。







「ふぅ………疲れたぁ…」



さっきの回復魔法は、本来の天使なら難しくも無く使えるのだが…今のコイツは堕天使だ。

きっと相当な力を費やして唱えたのだろう。


恐らく大幅なレベルアップをしたと自慢していたはずの、堕天使の力ごと全部…。




「あーあ…これじゃあオイラ、 神界に行けねえや」



「だったらなんで力を使ったりしたんだ?それも他人のために」



「だってオイラのせいだし……それにオイラの師匠達でも、こうしてたと思うから」



正直意外だった。我儘で自分勝手なコイツが、 責任を感じたとはいえ 他人のために動くなんてな。



「あ…もう0時回ってる……師匠に誕生日おめでとうって、言いたかったなぁ…」



「お、日付が変わったか。じゃあお前、とっとと神界に帰れ」



「…は?どうやって帰れっつんだよ?オイラにはなんの力も残ってねえのに」



「時空のかけらはな、欠片の勇者である宿主の誕生日に、プレゼントをくれるんだ」



「プレゼント?」



「かけらの力を一日だけ自由に使えるって言うプレゼントをな……かけらの意思だから、もちろん時空間への悪影響も無い」


「え…?」



「よく見ろ。お前の背中、天使の羽根が戻ってる」




「うっわぁぁ!!!本当だ!!!」



「あくまでも今日だけだぞ。それで神界に戻って、神からのお咎めもなく師匠や仲間に会って来い」


「マジかよぉぉ!!!さんきゅーー!!!アンタにも人の心があったんだな!ケチで冷徹なクズだとしか思ってなかったよ!」


「おい。今すぐその羽根もがれたいのか?」



「おっと!急いで帰んねえと1日が終わっちまう!!」




堕天使アージェント… いや今は普通の天使か。

天使のガキ、アージェントは得意気に羽根を羽ばたかせて空へと向かっていった。



「あ!そだ!アンタにもこれやるよ!」



そして振り向きながら、俺に祭りの景品の菓子を投げつけてきた…食べ物を放るんじゃねえよ。



「………………」



菓子袋を見るとそれは俺好みの焼き菓子で……そこでふと、死神とかいう師匠について聞きたくなった。



「なあ!おまえの師匠は何ていう名前なんだ?」



「え…言わなきゃダメ?」



「は?言いたくねえのか?」



「……師匠はさあ…『ダークネス・プレゼント』っていうんだ。本名じゃないと思うけど、変な名前だからあんま広めたくないっつうか………厨二臭強すぎだし…」




「…そんなに変な名前か??」



「いやまあ、アンタの趣味っぽい名前だもんな」







しかし、ダークネス・プレゼント……どっかで聞いたような…。







「とりあえず、まったなーー!!」













…ま、いつか会うかもな。









俺に似た死神…ダークネス・プレゼントに。


―完結―
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