壮大なプレゼント【完結済】


堕天使のガキに付きまとわれるようになってから約半年……懲りないよなぁアイツ。

また現れる前に早いとこ昼飯済ませとくか、涼しそうな川で景色も良いし。



「おい!そこの厨二病勇者!!」


「うわ。もう来た」



「ここであったが百年目ぇ!!ようやく見つけたぜ!」



「今朝会ったばっかだぞ」



「そーだよ!!今朝はよくも風魔法で吹っ飛ばしやがったなぁ!!」



「俺の寝起きを襲撃したおまえの自業自得だろ」



朝っぱらから大騒ぎして、宿屋にも迷惑かけちまったな…。



「本当は寝込みを襲う予定だったけど間違えて朝まで寝ちまったんだよ!しかも朝ごはん食べ損ねたぁぁ!!」


「知るかよそんなこと」


「いいからつべこべ言わずにその弁当と時空のかけらをよこせ!」



かけらは宿屋で買った弁当のついでか…。



「先手必勝っ!超!堕天使キィィィック!!!」


「待て悪党!そこまでだ!」



「え?…あ」

「ぶはっっ!?」



堕天使の飛び蹴りは突然横から入ってきたやつの顔面にクリーンヒットした。




「おーい生きてるか?っていうか誰だおまえ?」



「いたたぁ…僕は、シンです。一応勇者やってます…見習いの」



「勇者~??そんな弱っちそうな見た目でぇ?」



「確かに僕は気が弱いし鍛練も苦手ですけど、だからこそ勇者を選んだんです!強くなりたいから!」


「へ?勇者って選べるもんなん?」


「はい!僕の国では戦う力を選べる儀式があるんです、誰でもなれるわけではないですが…」


「儀式と修行を繰り返し、様々な力をマスターした者に与えられるのが勇者の力だ」


「なんかアンタが言うと全部厨二病に聞こえて嘘くさいなあ」



またコイツは意味わからねえこと言いやがって。


「嘘ではないですよ!?ただ、僕の場合は…無条件でして…」


無条件で勇者になる条件は確か……。



「生れつき勇者の素質を持っている…だったか?」



「そうです、僕は少しだけ素質があったみたいで………というか、詳しいですね。もしかして同じ国出身…」


「いや、時空宮殿にいた時に話を聞いただけだ」


「時空宮殿!?さっきも時空のかけらって言ってましたけど……欠片の勇者グランド!?」


俺の噂って見習い勇者にまで広まってるのかよ…。



「あー、アンタそういう名前だっけ?」



「半年近く付きまとってるのにうろ覚えだったのか」



「す、すごい!!欠片の勇者にあえるなんて!」



「へー、アンタって知名度あったんだ」


「ああ、おまえのせいでな」


「僕グランドさんに憧れているんです!!大魔王が5体くらいいても一人で簡単に倒せるほど強いと噂のグランドさんに!!」


「おまえ嘘まで広めたのか」



このホラ吹き堕天使め…大魔王5体もいたらこっちが死ぬわ!


「オイラは魔王の1体や2体は瞬殺~っていう噂しか流してないけど?噂の一人歩きって怖いねえ~」


「たとえ噂でも!とにかく強いんですよね!尊敬します!!」



「尊敬されても……俺の仕事はほとんど旅してるだけだし」



「素直に喜べばいいじゃん。この厨二病バカが」



なんかコイツにバカって言われると異常にイラッとするな。



「ところでこちらの方は?盗賊かと思って横槍入れちゃいましたけど」



「オイラは天使に戻る為に旅をしている堕天使、アージェント様だ!」



「堕天使さんですか…早く天使に戻れるといいですね」



「その為に時空のかけらを奪おうとしてるんだがな」



「えじゃあやっぱり盗賊?!」



「なんだよ盗賊盗賊って……」



堕天使のガキはふてくされたが、次の瞬間ニヤリとした。



「そんなに盗賊って言うなら本当に奪ってやる!シーフドレイン!!」


「ふえぇ!!」



今のは…吸収魔法っ?


「大丈夫か!?……新人!」


「シンです、そんなに覚えにくいですか…あ、無理ですフラフラしますぅ…」


「へっへっへ!勇者の力いっただき~!」



「たかだか見習い勇者の力を奪ってどうするつもりだ?」



「勇者の力って神聖なんだろ?コレを吸収すれば時空のかけらを使わなくても、オイラの天使の力が戻るはずだ!」



「だったら俺のをくれてやるよ。俺の勇者の力なら少しだけでも充分…」


「ヤダ!アンタのはなんか汚そうだもーん……さあオイラの羽根よ!復活しろぉぉぉ!!!」



こんのガキィ……いつか本気で始末してやる。



「え!…ぼ、僕の力で、本当に羽根が!」


「なんで力奪われてるのにちょっと感動してんだよ」



「戻ったーー!!!やった…戻った、天使に戻ったんだ!これで…帰れる……みんなに、あえる………みん、な…?」



「…どうしたんだ?」



「…みんなに会うって…帰るって……どこに…」



「どこって、神界に帰りたいって言ってただろ?」



「いやだ……帰りたいけど帰りたくない…やだ…!」



明らかに様子がおかしい…。



「あ、あの…アージェントさん?」



「やだやだやだやだやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「お、おい!」


「みんなオイラのことなんか必要としてない!!師匠も!神様も!友達も!!」


「アージェントさん落ち着いてっ!!」


「オイラ昔捨てられたんだ!仲間に!そのせいで天使の仕事も出来なくなった!でも師匠が拾ってくれて、師匠のおかげで友達ができて…昔よりもずっとずっと楽しくて…」


「ならどうして帰りたくないんだよ?」



「だっ、だって……オイラはドジで、バカで…」


「それは知ってる」


「だから、また失敗しちまう…きっとまた間違える…怒られて捨てられる…!」



「…これって、まさか僕の」


「オイラが何したっていうんだよ!いっつもオイラばっかり理不尽に怒られて!!しかもアイツら気に入ってる天使には絶対怒らねえんだ!!」



いまいちこの状況を呑み込めないが…シンが何かを思い出したような、悔しそうな表情をしていた。



「どうして何をやっても怒られるオイラがいて、何をやっても許される奴がいるんだよ!!オイラがどれだけ努力して頑張っても…全部全部無意味なんだよ!!!」



「グランドさん…アージェントさんが言ってるのは、昔の僕が悩んでいたことです」


「はあ??つまり、あの堕天使のガキは…」


「あんな連中嫌いだ!!師匠も神様も友達もみんなのこと悪く言っちゃう自分もっ!!大っ嫌-」

「うーるーせえっ!!!ギャーギャー騒ぐな!!」

-ゴンッッ!!

「いぎゃっ!?!?」


「グランドさんっっ!!?泣いてるところにゲンコツなんて余計傷付きますって!!」


「盗みを働いた制裁だからいいだろ別に……力よ集え!!」



吸収魔法を唱えてシンの力を奪い返すと、堕天使はいつものバカ面に戻っていた。





「…あれ??オイラなんであんな事になってたの??」



「僕の力を使ったせいだと思います。思い出話が、僕と重なっていたので」


「勇者の力を吸収した時に、シンの心の底に眠る闇に取り込まれたんだろうな」


「おまえどんだけ深い闇抱えてんの?!」


「ごめんなさいぃ!!」


「言っとくけど、力の奥に捩じ伏せてた闇を勝手に引っ張り出したおまえが悪いぞ」


シンが勇者になることが出来たのは、自力で闇を吹っ切れたって証拠だもんな。



「けっ!弱そうだし良い子ちゃんぶってる勇者だから簡単に力を奪えると思ったのに……あ!せっかく戻った羽根も無くなってるぅぅ!!!」


「す、すみません……でも考え方を変えてみましょうよ!アージェントさんが天使に戻るんじゃなくて、お師匠さんやお友達の羽根をちぎっちゃえば、みんなと一緒ですよ!」


「うわぁぁ!?良い子ちゃんどころか中々のサイコパスだコイツ!!」



笑顔で恐ろしいことを口走るとは…大物になりそうだなこの新人……それはともかく。


「おまえ、どうしても天使に戻りたいなら【時空粒子】を探せ」



「じくうりゅうし?何それ」



「時空が生み出す小さな力の粒だ。バランスを保つ為に世界各地に満ちている…それを集めておまえの背中の時間だけを遡れば、羽根が戻る。そのくらいなら世界次元のバランスにも影響が無いから許可してやる」



「えー?ちまちま探して集めるのダルいからヤダ~」


「じゃあもう面倒臭いからどっか行け」


-ゲシッ!!

「にぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」













「……川に蹴り落としちゃって大丈夫なんですか?あの先、確か滝ですよ」


「問題無い。化け物並みの生命力だから」


岩に腰掛けて食べようとしていた弁当を広げていたら、何故かシンは笑っていた。


「…なんだ?」



「いえ、お二人が仲間同士に見えたから微笑ましくて」


「今の流れをどう見たらそうなるんだ…」



「えーと、なんとなく……それにアージェントさんが錯乱して、お師匠さん達を嫌いだって言ってましたけど…グランドさんの名前は出さなかったし」


「そりゃ元々嫌いだからだろ」


「でも敵同士っていう感じもあんまりしませんし『仲間』のほうがしっくりきますよ」


「仲間じゃねえって。アイツは…」






……ただの迷惑な『腐れ縁』だ。
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