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ジンとウォッカと!

期末テストが近付いた7月中頃、担任教師の「流石に教室に顔を出せ」との命令を愛希経由で受け取った俺達は、自分のクラスへ向かう為廊下をダラダラ歩いていた。入口に近付き扉に手をかけると、中から話し声が聞こえた。
扉の窓から教室を覗くと、愛希を3人の生徒が取り囲んでいた。1人は男、後の2人は女。3人とも制服を少しだけ着崩している。チンピラに成りきれないがヤンチャはしたいといった風貌である。
女子生徒の1人が口を開いた。
「あの2人に関わるのやめなよ。」
愛希に関わる2人組と言えば、まあ俺とウォッカの事だろうなと察した。今は教室に入らない方が良さそうだ。
「どうして?2人共いい人だよ。」
愛希がいつもの凛とした声で答えると、3人の生徒は口々に俺達の噂を話し始めた
「だって危ないよ。悪い噂耐えないもん。危ない薬売ってるとか…」
「毎日放課後に会ってんだろ?他の奴に仲間だと思われて殴られるかもしれないぞ。」
「この前もここから近くの△△高校のヤンキーぶん殴ったって聞いた。△△高校のヤンキーは序列が上なのに…」
愛希は3人の話を聞いて少し考える素振りを見せて、言い放った。
「その噂達、去年も言われてたよね。私は今年の4月末から彼らに課題の用紙を渡しに行ってる。その時点で止めようと思わなかったの?私はその噂も危険性も知ってて、それでも用紙を届けなきゃならないから行った。そして彼らと真正面から接して、いい人だってことを知った。なぜ貴方達は噂だけ知って近寄ろうともしないで、本質も見ないで、遠くで面白がってるの?」
3人は「そ、それは…」と言い淀んでしまった。
「じゃあ私、2人を教室に連れて来なきゃいけないから。」
愛希は席から立ち上がって扉に近付いてきた。
「あ、陣くん!三郎くん!」
俺とウォッカは得意げにニヤリと笑って、愛希の眩しい笑顔を受け止めた。
「朝から威勢がいいな、愛希。」
「陣くん、今日は授業受けなきゃダメだよ。寝ていいかどうかは分からないけど。」
「1分で寝る自信がある。」
「自信満々に言わないの。単位貰えないよ。」
愛希もニヤリと笑った。なかなか悪い顔をしている。
「アニキ、愛希、今日の放課後どうしやすか?」
「そうだな…」
「私駄菓子屋行きたいな〜」

俺達の日常は変わらず進み続ける。季節を添えてゆっくりと。
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