ジンとウォッカと!
ある日、俺とウォッカが屋上に足を運ぶと先客が居た。その頃は毎日の様にチンピラ共と喧嘩をしていたので、はぁ今日も来たのか懲りねぇヤツらだなんて思いながらドアを開けると、なんと愛希がパイプ椅子に座っていた。
愛希は背筋をピンと伸ばしてパイプ椅子に腰掛けており、黙々と本を読んでいた。
「おい。」
このまま居座られても困るので、声をかけたら、愛希は視線をバッとこちらに向けてニコッと笑った。
「こんにちは。黒澤くん、今、私を呼んだでしょ?」
眩しい笑顔に何だかむず痒い気分になって、「あぁ……まあな」と適当な返事を返してしまった。
「今日もプリント届けに来たんだろ?置いたらさっさと帰れよ〜。」
ウォッカが気を利かせて帰宅を促すが、愛希はまたニコッと笑いながら、
「うん。でもこの節、まだ途中なの。読み終わったら帰るね。」
とまた本に視線を戻してしまった。ウォッカは困った顔を隠さず表に出した。
仕方が無いので、そのまま地べたに座り、煙草に火を付ける。何回か吸ったり吐いたりしていると、読み終えたのか、愛希は本を閉じて立ち上がった。
「理解できない。」
普段の表情からは想像付かない程の真顔で、遠くを見つめて愛希は突然言い放った。
「その本、カバーまでしてあるけど、何が書かれてんだ?」
愛希の突然の行動に理解が追いつかないが、それでもウォッカは彼女に質問を試みた。
「神…?について?お母さんが読めってうるさくて。今週末の集まりに必要だからって言うの。お兄ちゃんも『お前は馬鹿だからこれでも読んでろ』って言うの。」
返ってきた解答は意外なものだった。会話から、彼女の家は何かの宗教にお熱であり、母と兄がしつこく教典を押し付けていると推察出来た。
「へぇ、そりゃ大変だな。」
ウォッカが軽く同情の意を込めて返事をした。
「なぁ、お前、神がいるなんて本当に思ってるのか?」
俺は煽るように質問をした。
「居るけど居ない。それが私の答え。神は解釈を与えてくれるけど、物を使って救ってはくれない。そう考えてるのに、この本は居ることが前提で話が進んでいくの。だから矛盾した時に答えが作れなくなる。みーんな都合がいいの。」
読んでみる?と本を差し出された。無言で本を取って数ページ読んでみる。なるほど、愛希の言う通り都合の良い解釈ばかりが羅列している。
「……ッハ、よくこんなの読めるな。」
鼻で笑って本を返すと、愛希はまた屈託のない笑顔を向けた。
「面白くないでしょ?私も同じ気持ちだよ。」
俺はつられて笑ってしまった。何だかおかしくなった様だ。
この日を境に、俺達2人と愛希は毎日、放課後話す仲になったのだった。
愛希は背筋をピンと伸ばしてパイプ椅子に腰掛けており、黙々と本を読んでいた。
「おい。」
このまま居座られても困るので、声をかけたら、愛希は視線をバッとこちらに向けてニコッと笑った。
「こんにちは。黒澤くん、今、私を呼んだでしょ?」
眩しい笑顔に何だかむず痒い気分になって、「あぁ……まあな」と適当な返事を返してしまった。
「今日もプリント届けに来たんだろ?置いたらさっさと帰れよ〜。」
ウォッカが気を利かせて帰宅を促すが、愛希はまたニコッと笑いながら、
「うん。でもこの節、まだ途中なの。読み終わったら帰るね。」
とまた本に視線を戻してしまった。ウォッカは困った顔を隠さず表に出した。
仕方が無いので、そのまま地べたに座り、煙草に火を付ける。何回か吸ったり吐いたりしていると、読み終えたのか、愛希は本を閉じて立ち上がった。
「理解できない。」
普段の表情からは想像付かない程の真顔で、遠くを見つめて愛希は突然言い放った。
「その本、カバーまでしてあるけど、何が書かれてんだ?」
愛希の突然の行動に理解が追いつかないが、それでもウォッカは彼女に質問を試みた。
「神…?について?お母さんが読めってうるさくて。今週末の集まりに必要だからって言うの。お兄ちゃんも『お前は馬鹿だからこれでも読んでろ』って言うの。」
返ってきた解答は意外なものだった。会話から、彼女の家は何かの宗教にお熱であり、母と兄がしつこく教典を押し付けていると推察出来た。
「へぇ、そりゃ大変だな。」
ウォッカが軽く同情の意を込めて返事をした。
「なぁ、お前、神がいるなんて本当に思ってるのか?」
俺は煽るように質問をした。
「居るけど居ない。それが私の答え。神は解釈を与えてくれるけど、物を使って救ってはくれない。そう考えてるのに、この本は居ることが前提で話が進んでいくの。だから矛盾した時に答えが作れなくなる。みーんな都合がいいの。」
読んでみる?と本を差し出された。無言で本を取って数ページ読んでみる。なるほど、愛希の言う通り都合の良い解釈ばかりが羅列している。
「……ッハ、よくこんなの読めるな。」
鼻で笑って本を返すと、愛希はまた屈託のない笑顔を向けた。
「面白くないでしょ?私も同じ気持ちだよ。」
俺はつられて笑ってしまった。何だかおかしくなった様だ。
この日を境に、俺達2人と愛希は毎日、放課後話す仲になったのだった。