ジンとウォッカと!
第一印象は「図太い女」だった気がする。
俺とウォッカは組織の息がかかった孤児院育ちだ。金が無いので、中学卒業後は自然と公立高校へ進学した。その公立高校は低偏差値で近辺では有名な高校であり、素行の悪さがかなり目立っていた。自分もウォッカも例に漏れず、入学してから授業に参加したことはほとんど無い。しかも課題のノートを期限までに提出すれば単位が貰えた為、余計に授業へ行く気が失せてしまった。
高校2年の春、俺とウォッカは決まって屋上で煙草を吸っていた。未成年の喫煙は禁止されているが、この学校では補導する人間なぞ存在しなかった。補導したところで生徒に逆ギレされて怪我をするのが日常茶飯事だ。
今日も今日とて暇なので、いつもの様に屋上に居ると、階段に続くドアがノックも無しに開かれた。
「黒澤くんと、魚塚くん?」
気だるげな雰囲気に似つかわしくない、澄んだ明るい声で苗字を呼ばれ、振り向く。そこにはざんばらなベリーショートの、制服を一切加工していない女子生徒が、プリントを片手に立っていた。
「あ?お前誰だ?」
ウォッカが俺の代わりに質問する。
「私は美澄愛希。あなた達と同じクラスなの。よろしくね!」
底抜けに明るい声と笑顔で女子生徒は名乗った。
「先生と学級委員長に頼まれて、プリントを届けに来たんだ。これが今日の宿題だよ。明日ノート提出して欲しいって先生が言ってた。」
そう言って、愛希は俺達にプリントを差し出した。ひったくる様に受け取り内容を確認する。さほど難しくない問題ばかりで、すぐに終わりそうだ。
「へぇ、おつかいか?ご苦労さん。さあ、出てった出てった。ここは俺とアニキのテリトリーなんでね。」
ウォッカがシッシッと手の甲を振って追い出す仕草をする。
「うん、わかった!でも私、明日もあなた達にプリントを渡さないといけないの。私、伝書鳩なの!だからね、また明日会えるね。」
突然、愛希は手を差し出した。
「明日も会うから、仲良くしたいな。握手しよう!ね?はい!」
「え、お、おう……」
ウォッカが一瞬戸惑いつつ、愛希との握手に応じる。
「黒澤くんも、はい!これからよろしくね!」
面倒くさかったが、俺は小さく舌打ちをして握手に応じた。
愛希が去った後、ウォッカがヘラヘラ笑いながら俺に話し掛けた。
「アニキ、今の見ました?俺達の威圧感を吹き飛ばしましたぜ。へへっ、面白い奴っすね。」
ウォッカは、愛希の凛々しい態度を随分と気に入ったらしい。
「フッ、どうせすぐに別の奴に交代するだろうさ。」
俺はこの頃、本当にそう思っていた。
だが、愛希はそれから毎日俺達に会いに来た。最初の3週間位はただプリントを渡して帰るだけだったが、ある日を境に俺達は放課後に集まる関係になった。
俺とウォッカは組織の息がかかった孤児院育ちだ。金が無いので、中学卒業後は自然と公立高校へ進学した。その公立高校は低偏差値で近辺では有名な高校であり、素行の悪さがかなり目立っていた。自分もウォッカも例に漏れず、入学してから授業に参加したことはほとんど無い。しかも課題のノートを期限までに提出すれば単位が貰えた為、余計に授業へ行く気が失せてしまった。
高校2年の春、俺とウォッカは決まって屋上で煙草を吸っていた。未成年の喫煙は禁止されているが、この学校では補導する人間なぞ存在しなかった。補導したところで生徒に逆ギレされて怪我をするのが日常茶飯事だ。
今日も今日とて暇なので、いつもの様に屋上に居ると、階段に続くドアがノックも無しに開かれた。
「黒澤くんと、魚塚くん?」
気だるげな雰囲気に似つかわしくない、澄んだ明るい声で苗字を呼ばれ、振り向く。そこにはざんばらなベリーショートの、制服を一切加工していない女子生徒が、プリントを片手に立っていた。
「あ?お前誰だ?」
ウォッカが俺の代わりに質問する。
「私は美澄愛希。あなた達と同じクラスなの。よろしくね!」
底抜けに明るい声と笑顔で女子生徒は名乗った。
「先生と学級委員長に頼まれて、プリントを届けに来たんだ。これが今日の宿題だよ。明日ノート提出して欲しいって先生が言ってた。」
そう言って、愛希は俺達にプリントを差し出した。ひったくる様に受け取り内容を確認する。さほど難しくない問題ばかりで、すぐに終わりそうだ。
「へぇ、おつかいか?ご苦労さん。さあ、出てった出てった。ここは俺とアニキのテリトリーなんでね。」
ウォッカがシッシッと手の甲を振って追い出す仕草をする。
「うん、わかった!でも私、明日もあなた達にプリントを渡さないといけないの。私、伝書鳩なの!だからね、また明日会えるね。」
突然、愛希は手を差し出した。
「明日も会うから、仲良くしたいな。握手しよう!ね?はい!」
「え、お、おう……」
ウォッカが一瞬戸惑いつつ、愛希との握手に応じる。
「黒澤くんも、はい!これからよろしくね!」
面倒くさかったが、俺は小さく舌打ちをして握手に応じた。
愛希が去った後、ウォッカがヘラヘラ笑いながら俺に話し掛けた。
「アニキ、今の見ました?俺達の威圧感を吹き飛ばしましたぜ。へへっ、面白い奴っすね。」
ウォッカは、愛希の凛々しい態度を随分と気に入ったらしい。
「フッ、どうせすぐに別の奴に交代するだろうさ。」
俺はこの頃、本当にそう思っていた。
だが、愛希はそれから毎日俺達に会いに来た。最初の3週間位はただプリントを渡して帰るだけだったが、ある日を境に俺達は放課後に集まる関係になった。