姓は「矢代」で固定
第1話 誘われて
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***
翌朝。
物見櫓の上をお借りして、櫓の外へ向けて、東に刃を掲げる。
「いーち、にーい、さんっ!」
ブンッと刀を振り上げると、弥月の想定通り現れた銀色の三角。この前より少しだけ大き目に振ると、その通りの大きさに出来上がった。
後ろで固唾を飲んでいた千姫と菊が「わぁ!」「これは…!」と驚き、弥月は刀を下ろして、二人を振り返った。
「今から太陽が姿を現しきるまでです。たぶん」
「ふぅん…すぐ消えちゃうのね」
「何も見えませんね」
銀色に光る三角は、ただの宙に浮いた三角で。やはり何を映すでもなかった。
「この中が何かって話よね…」
「そうです。これ投げ入れるから、下に落ちるか見といてもらえます?」
持参した大き目の鈴を見せる。
お菊さんが櫓の下を見ているのを確認して、弥月は三角を目掛けてそれを放り入れる。
「よっ」
チリンッ
「…消えました」
「鳴ったから、向こうにも底があるわね」
「それと今回も空気があるってことかな…鈴が壊れるような状況でもない…」
「音が鳴るまでの時間を考えると、高さはここと同じくらいではないでしょうか?」
高さが同じ…ってことは、3次元的な位置情報は変らないと思っていいのかな…
言い伝えどおり”同時に存在する平行世界”なのだとしたら、三角の先が、全くおなじ山の中の高い位置という可能性がでてきた。
「えいっ!」
!?!?!?
「姫様!!!」
三角に、千姫が指を入れて、出して、もう一度手を入れた。手を出した。
「なななななにしてるんですか!!!?」
「姫様、お手を!!!」
「…なんともないわね」
真っ青になって震える菊に、千姫は腕を差し出す。
「てっ、手は!?」
「月一回、お天気が良いとき、わずかな時間しかないんでしょ。ちまちまやってたらキリがないわよ? あ、消えた」
「千姫! 手は!?」
「見ての通り、なんともないわよ。もしかしたら何かつかめるかと思ったんだけど、何もなかったわね」
「危険だって言ったじゃないですか!!」
「破裂しなかったわね」
事も無げに言うそれに、気が遠くなる。お菊さんの心労がよく分かった。そのお菊さんは「あぁ」と泣きそうな顔で、千姫の手を撫でて揉んで、無事を確認しつづけている。
「大丈夫よ、本当に。不思議なくらい。何かを通り抜ける感じすらなかったもの。何もなさすぎて…ってところよ。参考になるかしら?」
「あ、りがとう、ございます…」
なんと言えばいいのか分からなくて、私の代わりに危険を冒してくれたことに感謝すると、千姫からは「どういたしまして!」と明るい返事が返ってくる。
「これ、誰でも作れるの? 弥月ちゃんでなくても」
……
「…考えたこともなかったです」
自分の刀だと思っていたし、自分が特殊な人間…時渡りするような鬼だからできるのだと思っていた。
「明日、私が振ってみてもいいかしら?」
「ん、と……帰ります、切腹しなきゃいけなくなるから」
「それ、置いてってくれる?」
「…」
弥月は渋い顔で、少し仰け反る。
いや、駄目じゃないけどさ……いや、まあ…いいか……いいか…
なんとなく二つ返事で了承しかねた。千姫を信用していないわけじゃないが、なにせ大事な物だ。
「…良いわよ、そんなに困るんだったら。行けそうな時にそっちに行くから」
「……ごめん」
「本当に弥月ちゃんって、武士なのねぇ。刀を手放せないなんて」
感心するというか、呆れるような声で言われて。
この刀が私の魂なんて全く思っていないつもりだけれど、なんとなく預けたままに出来ないのだから、強ち間違いではないのかもしれなかった。
翌朝。
物見櫓の上をお借りして、櫓の外へ向けて、東に刃を掲げる。
「いーち、にーい、さんっ!」
ブンッと刀を振り上げると、弥月の想定通り現れた銀色の三角。この前より少しだけ大き目に振ると、その通りの大きさに出来上がった。
後ろで固唾を飲んでいた千姫と菊が「わぁ!」「これは…!」と驚き、弥月は刀を下ろして、二人を振り返った。
「今から太陽が姿を現しきるまでです。たぶん」
「ふぅん…すぐ消えちゃうのね」
「何も見えませんね」
銀色に光る三角は、ただの宙に浮いた三角で。やはり何を映すでもなかった。
「この中が何かって話よね…」
「そうです。これ投げ入れるから、下に落ちるか見といてもらえます?」
持参した大き目の鈴を見せる。
お菊さんが櫓の下を見ているのを確認して、弥月は三角を目掛けてそれを放り入れる。
「よっ」
チリンッ
「…消えました」
「鳴ったから、向こうにも底があるわね」
「それと今回も空気があるってことかな…鈴が壊れるような状況でもない…」
「音が鳴るまでの時間を考えると、高さはここと同じくらいではないでしょうか?」
高さが同じ…ってことは、3次元的な位置情報は変らないと思っていいのかな…
言い伝えどおり”同時に存在する平行世界”なのだとしたら、三角の先が、全くおなじ山の中の高い位置という可能性がでてきた。
「えいっ!」
!?!?!?
「姫様!!!」
三角に、千姫が指を入れて、出して、もう一度手を入れた。手を出した。
「なななななにしてるんですか!!!?」
「姫様、お手を!!!」
「…なんともないわね」
真っ青になって震える菊に、千姫は腕を差し出す。
「てっ、手は!?」
「月一回、お天気が良いとき、わずかな時間しかないんでしょ。ちまちまやってたらキリがないわよ? あ、消えた」
「千姫! 手は!?」
「見ての通り、なんともないわよ。もしかしたら何かつかめるかと思ったんだけど、何もなかったわね」
「危険だって言ったじゃないですか!!」
「破裂しなかったわね」
事も無げに言うそれに、気が遠くなる。お菊さんの心労がよく分かった。そのお菊さんは「あぁ」と泣きそうな顔で、千姫の手を撫でて揉んで、無事を確認しつづけている。
「大丈夫よ、本当に。不思議なくらい。何かを通り抜ける感じすらなかったもの。何もなさすぎて…ってところよ。参考になるかしら?」
「あ、りがとう、ございます…」
なんと言えばいいのか分からなくて、私の代わりに危険を冒してくれたことに感謝すると、千姫からは「どういたしまして!」と明るい返事が返ってくる。
「これ、誰でも作れるの? 弥月ちゃんでなくても」
……
「…考えたこともなかったです」
自分の刀だと思っていたし、自分が特殊な人間…時渡りするような鬼だからできるのだと思っていた。
「明日、私が振ってみてもいいかしら?」
「ん、と……帰ります、切腹しなきゃいけなくなるから」
「それ、置いてってくれる?」
「…」
弥月は渋い顔で、少し仰け反る。
いや、駄目じゃないけどさ……いや、まあ…いいか……いいか…
なんとなく二つ返事で了承しかねた。千姫を信用していないわけじゃないが、なにせ大事な物だ。
「…良いわよ、そんなに困るんだったら。行けそうな時にそっちに行くから」
「……ごめん」
「本当に弥月ちゃんって、武士なのねぇ。刀を手放せないなんて」
感心するというか、呆れるような声で言われて。
この刀が私の魂なんて全く思っていないつもりだけれど、なんとなく預けたままに出来ないのだから、強ち間違いではないのかもしれなかった。