姓は「矢代」で固定
第4話 わたしのお仕事
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慶応元年十二月十八日
「弥月さん!!」
洗濯をしていると、胸にお盆を抱えて、輝くような笑顔で走ってきた千鶴ちゃん。
これは手を広げて抱きとめるまでが務めかと思ったけれど、拒否されたら立ち直れないと気付いて辞めた。
勝手に寂しい気持ちになった弥月の想いと反して、千鶴はいつもより半歩近い距離で立ち止まる。そして、こぼれるような大きな黒い瞳で弥月を見上げて、浮かれた声を出した。
「近藤さん達がお戻りになるそうです!!」
「ーーッ、帰って!?」
思わず私も声が上擦る。
予定していたよりも随分と早い。
「ちょ…いつ!? それ土方さんからだよね!?」
「はい! 昨日早くに広島を発ってるでしょうって! さきほど書簡が届いて」
「千鶴。言うなとは言わなかったが、触れ回るのが早すぎる」
「あ…っ」
千鶴ちゃんの後ろからやってきた土方さん。千鶴ちゃんは恥ずかしそうに口に手を当て、眉を下げて「すみません」と彼へ謝罪する。
「何か問題が?」
「問題はない…が、分かるだろ。良い知らせ一つって訳じゃねぇ」
「長州、入れなかったんですね」
「そういうことだ」
土方は重く頷く。
新選組は大目付役の従者として随行した。その不遂行の責任は幕臣にあり、私たちが咎められることはないだろう。けれど、幕府恭順を話し合いで解決する可能性が、これで完全になくなった。
戦争だ
「それと…山崎らは引き続き偵察を、と」
!!
「そうですか…」
烝さんら監察方が、近藤さんらと別れてまだ一ッ月経つ程度だ。広島と長州の移動距離を考えれば、想定される事ではある。
「いつ帰って来るんですか?」
「明後日かもう一日後になる」
そう言って息を吐いた土方さんの、厳しい表情の中の微かな安堵感。
「盛大にお出迎えしなきゃですね」
「普通に待ってろ」
「私の帰還のとき、無事を泣いて喜んで抱擁してくれましたから、お返ししなきゃです!」
「…やめろ。伝染(うつ)る」
「? 何がですか?」
「…」
土方さんはチラリと千鶴ちゃんを見て、「なんでも、だ」と言った。意味が分からない。
「近藤さんの部屋の掃除は終わってるな?」
「終わってますよ。布団干しときます」
「ああ」
「あの…お帰りの日のお夕飯には、茶碗蒸しをお付けしても宜しいでしょうか……隊士皆様の分は難しいかもしれませんけれど…」
千鶴が迷いながら言うと、土方はフッと笑った。
「それは良いな。俺らの分は構わねぇから、帰ってきた奴らの分は作ってくれるか?」
「はい!」
「あと、容保公に年の瀬の挨拶がてら、報告に上がることになるからな…矢代。虎屋で土産を適当に見繕っておいてくれ」
「りょーです」
土方さんは諸手を組んで、満足そうに頷く。
『虎屋』は御所御用の高級菓子店だ。近藤さんが好きな餡蜜の店でもある。
広島出張の土産に、京都のお菓子を持参するのは変だろう。
どう考えても
「土方さんもお出迎えする気満々じゃないですか」
「…労うのは当然だろ」
言い紛らわすような事しなくても、近藤さんの好きな饅頭でも餡蜜でもたくさん買ってくるのに。
弥月と千鶴は顔を見合わせてクスリと笑った。