姓は「矢代」で固定
第1話 誘われて
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***
「は? 男のふり?」
私の指名で、近藤さんと山南さん、梓月との四人で小さく集まる。残りたがった土方さんは追い出した。
「…何やってんの?」
「いや、うん、ね。最初に男だと思われちゃってさ……言い出すのもタイミング失って…」
「どうせ逆ハーとかオタサーの姫気分で男心モテ遊んでたんだろ…サイテー!」
「違うわ!! 朝は干物を取り合う戦場で、夜は屁とイビキと歯軋りに悩まされる生活だわ! ようやく女子としての人権ができ…っ」
気付いて、パッと手で口を塞ぐ。
「弥月?」
しまった
「なんでもありませーん」
「弥月君、何を隠しましたか?」
山南さんが笑っている。そこはかとない暗黒微笑で。
「はい。わたくし、最近、女性用風呂釜設置できて超ハッピーです。私のお陰でみんなハッピー!」
全く誤魔化せていないが、山南さんに無言の圧をかけられても、頬に指をあてて笑顔でやり過ごす。
烝さんのおかげで、女性としての自矜心がギリ復活したところだなんて、口が裂けても恥ずかしくて言えない。
「そういう訳だから、梓月。お金あげるから、どっか家借りて過ごして」
「いや、俺もここで働くし」
「ダメ。薩摩藩の人に見つかったら、間者だったのかって怨まれるよ」
「頭染め直したらバレないって」
「ダメ。気づかれたら、その辺で斬り捨てられるから」
ここは絶対に止めてほしい
そう言ってしまうと、自分が危険な場所に身を置いてると明言するようなものだ。
ここにいると負け戦に臨むのだと……仮に下働きでもそうなのだと、梓月が気付くのは時間の問題だろうけれど。
安全に生きれそうで、私の目が届いて、知り合いのいる働き口…
最初に千姫のところを思いついたが、護衛とか薩摩とのやりとりとか、良いように使われそうな気がした。
あごに手を当てて考える弥月と、不満顔の梓月を、山南は「英語ができるのでしたら」と言いながら見やる。
「蘭方医に相談してみるのはどうでしょう。伝手を頂けるかもしれませんよ」
「そうだ! 先生紹介するから、そこで働いてよ。丁度いいじゃん、未来の救急隊員さん」
「ら… あ、蘭方医って医者か。それはそれで魅力的だけどさ…」
3ヶ月で将来の夢が変わってなくて良かった。一先ず町医者のところに送り出そう。
その時、表が騒がしくなったと思うと、コンコンと障子の縁が叩かれる音がした。
「局長、山崎です。入っても宜しいでしょうか」
近藤は弥月見て、彼女が頷くと、了承の返事を返す。
「失礼します。弥月君に縁のある男がここに居ると聞いて……俺も同席しても構いませんでしょうか」
「烝さん、それがこれ」
「兄の事をこれって言うな。指さすな」
「違うね。今日から弟だから」
「…兄弟?」
「兄の梓月です。いも…芋みたいな弟がお世話になってます」
「だれが芋だ」
もうちょっと誤魔化し方があっただろうと、梓月を拳で小突く。
「俺は山崎と云う。妹さんの上司をしている」
「家政婦のリーダー?」
「そう。家政婦のリーダー。山崎さんの得意業務は指圧」
自分で言いながら、想像して笑ってしまいそうになるのを堪える。彼が割烹着着てしゃもじ持ってるのはきっと似合う。
「マッサージ? 家政婦って肩もみもするのか……ってか、女なのは秘密なのか、どっちだよ」
「知ってるのは屯所内はあと二人くらい」
「その設定メンドくない?」
「仕方ない。ここめっちゃ給料良い。支給が米じゃなくて現金なのも良い。男じゃないと隊士として登録してもらえなくて、金の出どころの問題で、給料が全然違う」
「あーね」
「…それほど似てはいないが、雰囲気が同じだな」
烝さんは言いながらフッと息を溢した。手で隠そうとした口元が完全に笑っている。
それに応えるように、近藤さんが「ああ」と機会を得たとばかりに声をだした。
「それは俺も思っていた。弥月君が二人に増えたような感じだなあと」
「抑揚というか、話し方がそっくりですよね」
山南さんもそう言う。
弥月は梓月と目を合わせて、ぐっと眉を寄せる。
「…嬉しくない」
「…ヒくなよ。俺も嬉しくねぇし」
「本当に仲が良いんだな」
眉を下げた烝さんへ、「普通だと思います」と首を傾げた。
「でもあの人…あの…そこに座ってた人」
「沖田さん?」
「え?! あの人が沖田総司? い」
ベチン
今度はそっちの口を思いきり塞ぐ。叩かれた勢いで痛そうな音と声がしたが、弥月は下から覗き上げるようにして、兄に微笑みかけた。
馬鹿かあんたは
「…んみまでんでいだ」
理解したらしいことに納得して、口から手を放し、兄の服でその手を拭く。
梓月は幕末よりも戦国武将が好きだった気がするが、それでも何も知らない私よりは情報を持っているだろう。すらすらと知識を披露されて滑り出るのが、「いちばんぐみの」か「いきてるんだ」かは言った後では遅い。
「沖田君がどうかしましたか?」
「いや、あのっ、この前その辺歩いてるときに会ったんですよね。で、怪しいって言われて、誰かに似てるからって言われて。もしかして弥月の事だったのかなって思いまして」
山南さんの問いかけに、しどろもどろ答える梓月。後で詰問されるの私なんだから、しっかりしてほしい。やっぱり屯所には置いておけない。
「とりあえず、薩摩藩からの危険を避けるために、梓月は町医者の先生に使ってもらえないか相談しに行きます」
「…分かった。それなら俺も供に行こう。丁度松原さんのことで相談しにいくつもりだった」
「本当にそれで良いのかい? 弥月君」
みんな…特に山南さんの前で話させるだけ危険な気がして、結論をまとめに行くけれど。止めた近藤が悲しげな表情をしていて、弥月は苦笑いしながら一つ頷いた。
「ひとまず?」
私が隊士として生活していることに、たぶん梓月はピンと来ていない。まさか妹が刀ぶん回して、敵と闘っているなんて想像すらしていない。
だから近藤さんは「潮時だ」と思ってくれていて。でも、私は今すぐ辞める決心がつかなかった。
だから、自分がここに居続けるなら、いつか言わなければとは分かっているけれど。私は決めるのを少しだけ先送りにすることにした。
「は? 男のふり?」
私の指名で、近藤さんと山南さん、梓月との四人で小さく集まる。残りたがった土方さんは追い出した。
「…何やってんの?」
「いや、うん、ね。最初に男だと思われちゃってさ……言い出すのもタイミング失って…」
「どうせ逆ハーとかオタサーの姫気分で男心モテ遊んでたんだろ…サイテー!」
「違うわ!! 朝は干物を取り合う戦場で、夜は屁とイビキと歯軋りに悩まされる生活だわ! ようやく女子としての人権ができ…っ」
気付いて、パッと手で口を塞ぐ。
「弥月?」
しまった
「なんでもありませーん」
「弥月君、何を隠しましたか?」
山南さんが笑っている。そこはかとない暗黒微笑で。
「はい。わたくし、最近、女性用風呂釜設置できて超ハッピーです。私のお陰でみんなハッピー!」
全く誤魔化せていないが、山南さんに無言の圧をかけられても、頬に指をあてて笑顔でやり過ごす。
烝さんのおかげで、女性としての自矜心がギリ復活したところだなんて、口が裂けても恥ずかしくて言えない。
「そういう訳だから、梓月。お金あげるから、どっか家借りて過ごして」
「いや、俺もここで働くし」
「ダメ。薩摩藩の人に見つかったら、間者だったのかって怨まれるよ」
「頭染め直したらバレないって」
「ダメ。気づかれたら、その辺で斬り捨てられるから」
ここは絶対に止めてほしい
そう言ってしまうと、自分が危険な場所に身を置いてると明言するようなものだ。
ここにいると負け戦に臨むのだと……仮に下働きでもそうなのだと、梓月が気付くのは時間の問題だろうけれど。
安全に生きれそうで、私の目が届いて、知り合いのいる働き口…
最初に千姫のところを思いついたが、護衛とか薩摩とのやりとりとか、良いように使われそうな気がした。
あごに手を当てて考える弥月と、不満顔の梓月を、山南は「英語ができるのでしたら」と言いながら見やる。
「蘭方医に相談してみるのはどうでしょう。伝手を頂けるかもしれませんよ」
「そうだ! 先生紹介するから、そこで働いてよ。丁度いいじゃん、未来の救急隊員さん」
「ら… あ、蘭方医って医者か。それはそれで魅力的だけどさ…」
3ヶ月で将来の夢が変わってなくて良かった。一先ず町医者のところに送り出そう。
その時、表が騒がしくなったと思うと、コンコンと障子の縁が叩かれる音がした。
「局長、山崎です。入っても宜しいでしょうか」
近藤は弥月見て、彼女が頷くと、了承の返事を返す。
「失礼します。弥月君に縁のある男がここに居ると聞いて……俺も同席しても構いませんでしょうか」
「烝さん、それがこれ」
「兄の事をこれって言うな。指さすな」
「違うね。今日から弟だから」
「…兄弟?」
「兄の梓月です。いも…芋みたいな弟がお世話になってます」
「だれが芋だ」
もうちょっと誤魔化し方があっただろうと、梓月を拳で小突く。
「俺は山崎と云う。妹さんの上司をしている」
「家政婦のリーダー?」
「そう。家政婦のリーダー。山崎さんの得意業務は指圧」
自分で言いながら、想像して笑ってしまいそうになるのを堪える。彼が割烹着着てしゃもじ持ってるのはきっと似合う。
「マッサージ? 家政婦って肩もみもするのか……ってか、女なのは秘密なのか、どっちだよ」
「知ってるのは屯所内はあと二人くらい」
「その設定メンドくない?」
「仕方ない。ここめっちゃ給料良い。支給が米じゃなくて現金なのも良い。男じゃないと隊士として登録してもらえなくて、金の出どころの問題で、給料が全然違う」
「あーね」
「…それほど似てはいないが、雰囲気が同じだな」
烝さんは言いながらフッと息を溢した。手で隠そうとした口元が完全に笑っている。
それに応えるように、近藤さんが「ああ」と機会を得たとばかりに声をだした。
「それは俺も思っていた。弥月君が二人に増えたような感じだなあと」
「抑揚というか、話し方がそっくりですよね」
山南さんもそう言う。
弥月は梓月と目を合わせて、ぐっと眉を寄せる。
「…嬉しくない」
「…ヒくなよ。俺も嬉しくねぇし」
「本当に仲が良いんだな」
眉を下げた烝さんへ、「普通だと思います」と首を傾げた。
「でもあの人…あの…そこに座ってた人」
「沖田さん?」
「え?! あの人が沖田総司? い」
ベチン
今度はそっちの口を思いきり塞ぐ。叩かれた勢いで痛そうな音と声がしたが、弥月は下から覗き上げるようにして、兄に微笑みかけた。
馬鹿かあんたは
「…んみまでんでいだ」
理解したらしいことに納得して、口から手を放し、兄の服でその手を拭く。
梓月は幕末よりも戦国武将が好きだった気がするが、それでも何も知らない私よりは情報を持っているだろう。すらすらと知識を披露されて滑り出るのが、「いちばんぐみの」か「いきてるんだ」かは言った後では遅い。
「沖田君がどうかしましたか?」
「いや、あのっ、この前その辺歩いてるときに会ったんですよね。で、怪しいって言われて、誰かに似てるからって言われて。もしかして弥月の事だったのかなって思いまして」
山南さんの問いかけに、しどろもどろ答える梓月。後で詰問されるの私なんだから、しっかりしてほしい。やっぱり屯所には置いておけない。
「とりあえず、薩摩藩からの危険を避けるために、梓月は町医者の先生に使ってもらえないか相談しに行きます」
「…分かった。それなら俺も供に行こう。丁度松原さんのことで相談しにいくつもりだった」
「本当にそれで良いのかい? 弥月君」
みんな…特に山南さんの前で話させるだけ危険な気がして、結論をまとめに行くけれど。止めた近藤が悲しげな表情をしていて、弥月は苦笑いしながら一つ頷いた。
「ひとまず?」
私が隊士として生活していることに、たぶん梓月はピンと来ていない。まさか妹が刀ぶん回して、敵と闘っているなんて想像すらしていない。
だから近藤さんは「潮時だ」と思ってくれていて。でも、私は今すぐ辞める決心がつかなかった。
だから、自分がここに居続けるなら、いつか言わなければとは分かっているけれど。私は決めるのを少しだけ先送りにすることにした。