姓は「矢代」で固定
第8話 二条城警護
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***
山崎side
伝令に走る雪村君の声と足音が止まったので、そちらの方向に目を向けると、城壁の上に人影があった。
いつから…三人も…?
暗がりの遠目に姿ははっきりとは見えないが、あれほど高い位置に少数で居るとすれば、自分のような諜報員のはず。
けれど、彼らは堂々とそこに立ちどまっており、囲んでいる場所は門でも櫓でもない。
雪村君…?
不審に思い、走って近づく。
薄雲が流れて、月が姿を表すとともに照らされた人影。
!! あいつらは!
すぐに応援を呼ぶべく踵を返そうとした山崎の背に、よく通る声が聞こえた。
「俺ら鬼の一族には、人が造る障害なんざ意味をなさねェんだよ」
鬼…の一族?
一瞬立ち止まる。けれど、すぐにまた足趾に力を入れた。
弥月君が似たようなことを言っていた。『生い立ちが鬼』『人間じゃなくて鬼』であると。そして『鬼を見た』と。
その話は半信半疑というよりも、意味が分からないままで終わっていたのだけれど。
本当に「鬼」がいると…?
近くにいた斎藤組長、原田組長に応援を依頼し、それから報告を上げた土方副長も共に来てくださった。
「将軍の首でも取りに来たかと思えば、こんな餓鬼一人にいったい何の用だ」
「将軍も貴様らも今はどうでもいい。これは我ら鬼の問題だ」
「鬼、だと…」
我ら…
彼らは雪村君個人に用事があると言う。ならば、それは彼女を含んでいるということだろうか。
恰幅の良い男…天霧が、自分に刃を向ける斎藤組長に向かって、眉を顰めて「退いていただけませんか」と言う。
「禁門の時と同様、私は君と戦う理由がない」
「生憎だが、俺にはあんたと戦う理由がある」
戦う理由がない? この状況にして?
けれど、雪村君は怯えている…害意のある相手だ。震えながら臨戦態勢をとった彼女を背に庇う。
「その必要はない。君はこのまま俺と屯所に戻れ」
彼らが雪村君個人に用があると言うならば、今この二条城でこれ以上の騒ぎになるのは得策ではない。
鬼の問題
弥月君の話に聞く、出し入れできるという『角』は彼らには無かった。しかし、片手で長刀を操り、二間はあるだろう塀の上までを一足で跳躍した男達。
その身体能力は人ならざるものであり、将の薄い色の髪は、嫌でもあの人を彷彿とさせた。
騒ぎを聞きつけて隊士が集まってくると『確認は叶った』『いずれまた』と、今日は手を引くと言って去った男達。
「おい、お前。あいつらに狙われる心当たりでもあるのか」
副長の低く唸るような声。
「い、いえ…私にも、よく…」
言外に分からないと言ったが、彼女は俯いて誰とも視線を合わせない。それが、何かを隠しているようにも見えた。
後から集まった隊士たちも、副長達と刃を交えた男は、雪村と何か関係があるのだと理解する。
それから、土方の解散の指示があり。
戦闘の後の昂ぶりで鋭利な気を纏ったままの斎藤は、当番どおりにと中庭に移動した。
一方で、原田は落ち付いた雰囲気で、十番組全員と山崎とともに、雪村君は屯所へ帰ることになった。
「千鶴、大丈夫か?」
「はい…すみません…」
原田さんが気遣って色々と声を掛けるが、雪村君は心ここにあらずといった様子で。
原田さんは俺を見て、首を横に振る。
屯所に近づくと、境内に煌々と火が焚かれているのが、塀越しに見えた。
「…妙だな」
原田が呟く。それを拾って、十番組の面々も顔を見合わせた。
この時間ともなれば、門番以外は交代で寝ているはずだが……人が動き、話す気配がするのだ。
原田は門へ声をかける前に、一度組下と目を合わせ頷き合う。
中で何か起こっているかもしれない
緊張が走った。
「俺だ、原田だ」
「原田組長!」
中から門が開く。原田の姿を見て、八番組の隊士達はそろってホッとした表現をした。
ひとまず彼らが落ち着いてはいる様子から、今すぐ急を要する状態ではないのだと、十番組も一息吐く。
「お前ら、どうした?」
「!? 今しがた、一人伝令を出しましたが行き違いになりましたか…!」
「何があった?」
伝令を出した?
伝令ならば弥月君の役のはずだ。今の口ぶりは八番組から出したのだろう。
「三人組の男が現れて、沖田組長らが先ほど追返したところで…」
!!
「ここもか!」
「ハッ、そちらにも!?」
「被害は!? 怪我人は!?」
「被害はほぼありません。怪我人は矢代さんが今治療室で」
隊士の答えを聞く前に、俺は治療室へ走り出していた。
***
山崎side
伝令に走る雪村君の声と足音が止まったので、そちらの方向に目を向けると、城壁の上に人影があった。
いつから…三人も…?
暗がりの遠目に姿ははっきりとは見えないが、あれほど高い位置に少数で居るとすれば、自分のような諜報員のはず。
けれど、彼らは堂々とそこに立ちどまっており、囲んでいる場所は門でも櫓でもない。
雪村君…?
不審に思い、走って近づく。
薄雲が流れて、月が姿を表すとともに照らされた人影。
!! あいつらは!
すぐに応援を呼ぶべく踵を返そうとした山崎の背に、よく通る声が聞こえた。
「俺ら鬼の一族には、人が造る障害なんざ意味をなさねェんだよ」
鬼…の一族?
一瞬立ち止まる。けれど、すぐにまた足趾に力を入れた。
弥月君が似たようなことを言っていた。『生い立ちが鬼』『人間じゃなくて鬼』であると。そして『鬼を見た』と。
その話は半信半疑というよりも、意味が分からないままで終わっていたのだけれど。
本当に「鬼」がいると…?
近くにいた斎藤組長、原田組長に応援を依頼し、それから報告を上げた土方副長も共に来てくださった。
「将軍の首でも取りに来たかと思えば、こんな餓鬼一人にいったい何の用だ」
「将軍も貴様らも今はどうでもいい。これは我ら鬼の問題だ」
「鬼、だと…」
我ら…
彼らは雪村君個人に用事があると言う。ならば、それは彼女を含んでいるということだろうか。
恰幅の良い男…天霧が、自分に刃を向ける斎藤組長に向かって、眉を顰めて「退いていただけませんか」と言う。
「禁門の時と同様、私は君と戦う理由がない」
「生憎だが、俺にはあんたと戦う理由がある」
戦う理由がない? この状況にして?
けれど、雪村君は怯えている…害意のある相手だ。震えながら臨戦態勢をとった彼女を背に庇う。
「その必要はない。君はこのまま俺と屯所に戻れ」
彼らが雪村君個人に用があると言うならば、今この二条城でこれ以上の騒ぎになるのは得策ではない。
鬼の問題
弥月君の話に聞く、出し入れできるという『角』は彼らには無かった。しかし、片手で長刀を操り、二間はあるだろう塀の上までを一足で跳躍した男達。
その身体能力は人ならざるものであり、将の薄い色の髪は、嫌でもあの人を彷彿とさせた。
騒ぎを聞きつけて隊士が集まってくると『確認は叶った』『いずれまた』と、今日は手を引くと言って去った男達。
「おい、お前。あいつらに狙われる心当たりでもあるのか」
副長の低く唸るような声。
「い、いえ…私にも、よく…」
言外に分からないと言ったが、彼女は俯いて誰とも視線を合わせない。それが、何かを隠しているようにも見えた。
後から集まった隊士たちも、副長達と刃を交えた男は、雪村と何か関係があるのだと理解する。
それから、土方の解散の指示があり。
戦闘の後の昂ぶりで鋭利な気を纏ったままの斎藤は、当番どおりにと中庭に移動した。
一方で、原田は落ち付いた雰囲気で、十番組全員と山崎とともに、雪村君は屯所へ帰ることになった。
「千鶴、大丈夫か?」
「はい…すみません…」
原田さんが気遣って色々と声を掛けるが、雪村君は心ここにあらずといった様子で。
原田さんは俺を見て、首を横に振る。
屯所に近づくと、境内に煌々と火が焚かれているのが、塀越しに見えた。
「…妙だな」
原田が呟く。それを拾って、十番組の面々も顔を見合わせた。
この時間ともなれば、門番以外は交代で寝ているはずだが……人が動き、話す気配がするのだ。
原田は門へ声をかける前に、一度組下と目を合わせ頷き合う。
中で何か起こっているかもしれない
緊張が走った。
「俺だ、原田だ」
「原田組長!」
中から門が開く。原田の姿を見て、八番組の隊士達はそろってホッとした表現をした。
ひとまず彼らが落ち着いてはいる様子から、今すぐ急を要する状態ではないのだと、十番組も一息吐く。
「お前ら、どうした?」
「!? 今しがた、一人伝令を出しましたが行き違いになりましたか…!」
「何があった?」
伝令を出した?
伝令ならば弥月君の役のはずだ。今の口ぶりは八番組から出したのだろう。
「三人組の男が現れて、沖田組長らが先ほど追返したところで…」
!!
「ここもか!」
「ハッ、そちらにも!?」
「被害は!? 怪我人は!?」
「被害はほぼありません。怪我人は矢代さんが今治療室で」
隊士の答えを聞く前に、俺は治療室へ走り出していた。
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