姓は「矢代」で固定
第6話 命の重さ
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元治二年三月十八日
「弥月、ちょっといいか?」
就寝前、左之助は一番組の部屋を訪ねた。中で見つけて目があった弥月に、ちょいちょいと手招きをする。
「ふん」と力の抜けた返事した弥月は、みんなの前では話しにくい事なのだろうと、立ち上がって出て、部屋の戸を閉めた。
「どうしました?」
「明日から、お前のとこの巡察に千鶴がついて行く予定だったよな?」
「たぶん。私は一緒に行くの初めてですけど」
千鶴の父親探しの同伴は、前から変わらず、沖田・斎藤・原田・藤堂・永倉の組でしか行っていない。そのうち、今巡察に出ているのは沖田と原田の二人。
明日は一番組が昼前の巡察予定のため、千鶴はそれに同行することになる。
「あいつ、なんとなく調子悪そうなんだ。見といてやってくれるか?」
「ふーん、分かった。季節の変わり目だし、風邪かなんかかなぁ」
「今日のとこは熱はねぇみてえだったけど……千鶴、最近塞いでるとこあるからか、具合悪いのか訊いても誤魔化されちまってよ」
「そうなの? 元気ないの?」
「巡察終わった後な。毎日、光縁寺の方寄ってくんだよ」
左之さんは小さく息を吐いた。不本意だ、というように。
「…それ、もしかして…」
「山南さんに手合わせに…な」
旧屯所からほど近くにある光縁寺。山南はそこの住職と個人的に親しく、光縁寺に埋葬し墓碑を建てることになった。
そして、彼の葬儀をしてからが半月以上が経っている。服喪の七日間は、隊士たちも代わる代わる同じように彼の死を悼んでいたが、それぞれがどこかで気持ちに区切りをつけていた。
「毎日…?」
わざわざ片道四半時も?
弥月はちらりと千鶴の部屋の方を見て、再び左之助へ視線を戻す。
「江戸の人って、そういうもん? 信心深いと四十九日までとか」
「馬鹿。気に病んでるから塞いでるって言ってるだろ」
左之助は「話の通じねぇ奴だな」と。その言い草に弥月はムッと口を結びながらも、もう一度かの部屋をじっと見て、また「ふーん」と溢した。
たしかに、ちょっと気にはかかるか…
「ああ、それと。八木さんのとこの子らが、約束したのにお前が遊びに来ないって怒ってたぞ」
「えぇ…いやまあ、また来るとは言ったけど…忙しいんだし……分かった。明日巡察終わりに顔見せに行くよ」
「そうしてやれ。それじゃ、邪魔したな」
「ん、おやすみ」
左之さんを見送ることなく、部屋の戸を開ける。「なんやったん?」と蟻さんが聞いてくるが、大したことじゃなかったと応じた。
そして、まだ陣取りをしただけで畳んだままの、自分の布団の丘に倒れこむ。そしてすっかり使い慣れた、低反発じゃない、そば殻の枕を抱えて思う。
もう一年半以上ここで過ごしているけれど、まだ 一年半しか過ごしていないのに。時々みんなそれを忘れて馬鹿扱いするから酷い
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