姓は「矢代」で固定
第1話 内に秘めた思い
混沌夢主用・名前のみ変更可能
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文久元年九月二十九日
気配は消さずに、むしろ足音を鳴らして監察方の部屋の前に立った。迷った末に、障子の枠を指の関節で叩く。
コンコン
「…? 誰ですか」
「あ、のー…」
名乗るべきか、顔を見せるべきか……どれを先にすれば、烝さんの驚きを半減させられるかと考えたが…
…まあ、どれも大して変わりないだろうと思って、声をかけると同時に障子を開ければ。
ドタタッ
「―――っ、……!」
「あ、脚ついてます。首もひっついてます。お化けでも、キョンシーでもないです」
押入れを閉めたところだったのか、私を見るなり烝さんは一歩下がって、ぶつかった襖が音を立てた。
そして、土方達と同じように、弥月を凝視したまま言葉を失ったらしい山崎に、弥月はへらりと笑って「すみません、驚かせて」と言う。
「…い、きて…」
「死んだと思いました? それ、私も思いました」
昨日会った魁さんは泣いて喜んでくれたけれど、林さんは「おお、おかえり。一昨日、島原で見かけたで」と。……あの人は本当に何者なんだろう。
彼らに「烝さんには自分で言うから」と、私が帰って来たことは内緒にするようにお願いした。勿論、この貴重な驚き顔を見たいから……と言ったら怒られるから、言わないけれど。
よしよし。烝さんはちゃんと予想通りの反応で……おっと、と!? 待って! 無言の歩み寄りは、斎藤さんの鉄拳だけで、もうお腹いっぱい…!
何を思ったのか、烝さんが真っ直ぐにこちらへ歩み寄ってくると、それが昨日の斎藤さんの姿と重なって、たじろいてしまう。
あの時、意識が飛ぶほどに強打されたこめかみには、デッカイたんこぶができた。もう勘弁してほしい。
…とはいえ、それだけ怒らせる…心配させることをしたのは私で。
身構えながらも、「烝さんになら殴られても仕方ないか」と歯を食いしばって、全身にギュッと力を入れる。
…
……
「…ん……え、と………え?」
彼の間合いに入った瞬間に思わず閉じていた目を、恐る恐る開く。
私は烝さんの腕の中に納まっていた。
***