姓は「矢代」で固定
第七話 あなたの瞳に映るもの
混沌夢主用・名前のみ変更可能
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***
山の端に陽が沈んだ頃。
残光でまだほの明るい空を見上げながら、近藤は隣を歩く彼らに話しかけた。
「そういえば最近は、陽が延びてきたような気がするなぁ」
「そうですね、冬至から一月ほど経ちましたし、もう立春ですもんね」
「むむ。そうか、もう正月だな! 色々と準備が必要じゃないか!!」
「大丈夫ですよ。近藤さんが心配しなくても、そういう細かいことは土方さんがやってくれますって」
「いや、しかし、トシだけに任せておくわけにもいかんだろう?
書類やら新入隊士のことやら、隊内のことはあいつが殆ど仕切っているからなぁ。そんな行事ごとまでさせたら、流石に倒れてしまうだろう」
「近藤さんは優しいですね。じゃあ僕も一緒に手伝いさせてもらおうかな」
「本当か! じゃあ、よし。気持ちよく来年を迎えられるように、みんなで頑張ろう!」
壬生浪士組が会津藩の所属になってからというもの、近藤さんは何かと忙しくしていて、他愛ない事を話す時間もあまりなかったから、こうして並んで歩いているだけで嬉しい。
こんなに穏やかに笑う今の近藤さんが、周囲を警戒し気を張っていることなど、恐らく僕(…とか、土方さん)にしか分からないだろう。
「ところで、弥月君は何の季節が好きかな?」
「…春は好きです。温かくなるので」
「そうか! 俺も、冬を乗り越えた木々が一斉に芽吹く春は、とても好きなんだ! 桜が咲いたらみんなで花見もしよう!」
答えた弥月はなんとか笑顔は保っているものの、会話にぎこちない空気を漂わせている。それでも彼らにとってそれが自然であるかのように、近藤はニコリと笑ってみせる。
……
僕は小さく「そろそろかな」と呟いた。すると近藤さんは「うむ」と肯定した後、声量だけを少し落として、何気ない会話の続きをしている風を装って話しつづけた。
「後ろからものようだな……四ツ辻であちこちから飛び出して来られるより、まっすぐな所で迎え撃った方がよいだろうか」
「こっちの手勢が少ないですから、僕もそう思いますけど…」
それは向こうが仕掛けてこないと難しい話で。
名案は出て来ず、このまま策もなく次の辻まで行くのだろうと、ぼんやりと僕が思ったとき。近藤さんの向こう側から、弥月君がノリ気とは程遠い声で、ただ確信に満ちた声で案を出した。
「…こっちから仕掛ければいいんじゃないですか」
とても静かで、冷静な声だった。
「後ろの方々とは、私が戻って斬り合ってきますから。そしたら騒ぎというか、こっちの手勢が減ったのに乗じて、前のも出てくるんじゃないですか」
「いや、それはいかん! 相手の人数も把握できてない状態で、一人で斬り込むなど!」
「…元々こっちは三人しかいなんいですから、私一人で敵の半分くらい倒せないようなら、最初から負けは決まってますって」
フウゥ…と長い溜息が吐きだしてから、弥月は近藤を真っ直ぐに見上げて、「だから、勝ちます」と宣言した。
その策の場合、彼女と僕の役割配分として、敵に奇襲をしかけるか、近藤さんの護衛をするかで、後者の役目を僕に譲ったことは、わざわざ相談しなくても、そうするべきと判断したからなのだろう。
「…もし後ろの敵が大勢で、君が勝てないと踏んで、そのまま一人で逃げるなんてことがないとも限らないじゃない」
「それは有り得ると思いますか? 近藤さん」
僕がそれを言い終わる前に、弥月君は直接近藤さんへ問うた。
自分を隊士として、武士として、信じるか。否か
「大丈夫だ」
近藤さんは弥月君を真っ直ぐ見返して、一つ頷いた。
僕に背を向けている近藤さんを見て、弥月君は嬉しそうに微笑んだ。
そして近藤さんは僕を振り返り、「任せよう」と。
「あっ、しかしだな! できるだけ怪我はしないように…!」
近藤が慌ててそう言い足したのに、弥月は「努力します」と笑う。
それから意外なことに、彼女は近藤さん越しに僕をじっと見た。そして何を思ったのか、ニイッと口元だけで笑って見せる。
それはまるで、近藤さんの信頼を獲得していることを自慢されているようで、なんだか少し癇に障った。
「人の顔を見て笑うなんて、失礼だと思わないの?」
僕が不機嫌にそう言うと、彼女は「あぁ、それはすみません」と軽く謝ってから、「でも」と続ける。
「知らないんですか? 新選組局長、近藤勇はこんなところでは死なないんです。だから殺させる訳にはいかないんです。だから、私は逃げません」
……
「……意味が分かんないんだけど」
「大丈夫です。考えるんじゃなくて、感じるものですから」
弥月君は意気揚々とそう明言した。
…本当に意味が分からなさ過ぎて、全然大丈夫じゃないんだけど
そう思ったことは伝えなかった。彼女は既に踵を返して走りだしていたから。
そう上手く弥月君の案どおりとは行かず、彼女が後方に奇襲をかけても、前方の敵はすぐには姿を現さなかった。しかし、後方の戦局がこちらに傾いていることを覚った敵は、弥月君が僕たちに再び合流する前に……近藤の護衛が少ない間に、攻める気になったらしい。
そして前方から出てきた頭数を数えると。
「…さすが。あの子、運だけは味方につけてる」
敵の総数は、後方が四人、前方は六人のようだ。もし敵の配置人数が逆だったなら、彼女が負うのは手傷くらいでは済まなかったかもしれない。
「近藤さんはそこに居てもらって大丈夫ですよ」
けれど、僕にとっては六人など大した人数ではない。近藤さんに一人として近づけさせない自信がある。
「ただ、あっちが後退してきてるみたいなので、取りこぼしには注意してください」
「うむ、分かった。総司も気をつけてな」
「任せてください」
そして自分も敵の中心へと飛び込んでいった。
「ぎあ゛あぁぁぁ!!!」
男の右肘から先を切り落とす。開いた隙間から腹を横に一閃斯くと、赤い飛沫が弾けた。
後ろへ倒れゆく男へ目もくれず、沖田は次の獲物に刃を向ける。
「…君で最後」
二人目までは、僕の速さに目が慣れる前に死んだから、彼らには何が起きたか分からなかっただろう。三、四人目では一、二撃くらいを受け流したけれど、剣戟の手ごたえは無かった。五人目は死に物狂いの形相で、その力任せさと集中力を少し面倒だと感じた。
そして六人目。怯えの色を含んだ眼をした男からは、もはや闘志すらも失われつつあった。
「ヒッ……悪かった、命だけはみ」
それ以上の言葉を発することは、彼にはできなかった。
沖田は空を切る音とともに、刀身の血を払う。
見逃すと思ったのだろうか
剣を握るなら…それを人に向けるなら、相応の覚悟を持って然るべきだ。殺す覚悟然り、殺される覚悟然り。
さて…
こっちは終わったけれど、弥月君の方はまだらしい。彼女が対峙している一人と、近藤さんの方の残りの一人とで終わりのようだ。
「とりあえず、近藤さんの方を…」
沖田が歩をすすめた時、弥月が倒したはずの一人の男が「ヴヴ…」と唸り、ゆっくりと上体を起こそうとしていた。
……
気絶でもしていたのだろうか。弥月君が地に伏せた男は、見たところ致命傷もなく、まだ立ち上がるだけの十分な力があるようだった。
「…ちゃんと殺さなきゃ駄目じゃない」
それが立ち上がりきる前に、背中側から心臓を貫いた。
「殺されたくなきゃ、殺しなよ」
逃がしたって、生かしたって、敵は血ほどにも感謝はしない。禍根は怨嗟を生むだけだと、どうして理解できないのか。
甘いなんて表現すら、彼女には温い。彼女の掲げる正義感は諸刃の剣で、その刃はこうして彼女自身さえも傷つけかねない。
そしてその足でもう一人、そこに転がっていた男を殺すべく近づくと。
……!
そこには大きな血溜まりができていた。
死んでる、か…
首からの出血。恐らく、それほど苦しまず、すぐに意識は飛んだだろう。
死体から視線を上げて、まだ敵と刃を交えている弥月君を見る。
これで何人目なんだろう
彼女を遠目に、ぼんやりとそんな事を思う。
『斬るとか言って脅したら、相手が言う事聞くと思ってるところが嫌い』
まだ弥月君がここに来たばかりのころ、彼は自分が真っ白な人間であることを誇示するように、僕にそう言った。
情勢だとか、必要なことだとか何も知らないくせに、ただ僕のような人間が存在することが悪であると責めた。
『人きり集団、新選組』
彼は殺生で解決を導く僕らに、嫌悪感を抱いていた。
人を斬りたくないからと、常に竹光を持ち歩いていた。
だけど
「もう君も、同じなんだね」
あれだけ僕たちを否定していた彼も、結局辿り着くところは同じだということを知る。勝利や確信に似た気持ちを感じて、なんだか可笑しかった。
そして同時に、悲しいような、残念な気持ちになった。
『あいつの剣は濁った』
あの日から、自分の剣が光を失っていると知った僕は、弥月君が光を放つせいで、自分の陰が強くなったように感じていた。
けれど、日当たりの良いところにいる彼のことが、どうしても気になった。それは、何も知らない頃には戻れないと知った、僕の羨望。
その彼が、今、僕と同じところにいる
彼の剣は濁ったか
「総司」
ドキリと心臓が鳴った。
***
山の端に陽が沈んだ頃。
残光でまだほの明るい空を見上げながら、近藤は隣を歩く彼らに話しかけた。
「そういえば最近は、陽が延びてきたような気がするなぁ」
「そうですね、冬至から一月ほど経ちましたし、もう立春ですもんね」
「むむ。そうか、もう正月だな! 色々と準備が必要じゃないか!!」
「大丈夫ですよ。近藤さんが心配しなくても、そういう細かいことは土方さんがやってくれますって」
「いや、しかし、トシだけに任せておくわけにもいかんだろう?
書類やら新入隊士のことやら、隊内のことはあいつが殆ど仕切っているからなぁ。そんな行事ごとまでさせたら、流石に倒れてしまうだろう」
「近藤さんは優しいですね。じゃあ僕も一緒に手伝いさせてもらおうかな」
「本当か! じゃあ、よし。気持ちよく来年を迎えられるように、みんなで頑張ろう!」
壬生浪士組が会津藩の所属になってからというもの、近藤さんは何かと忙しくしていて、他愛ない事を話す時間もあまりなかったから、こうして並んで歩いているだけで嬉しい。
こんなに穏やかに笑う今の近藤さんが、周囲を警戒し気を張っていることなど、恐らく僕(…とか、土方さん)にしか分からないだろう。
「ところで、弥月君は何の季節が好きかな?」
「…春は好きです。温かくなるので」
「そうか! 俺も、冬を乗り越えた木々が一斉に芽吹く春は、とても好きなんだ! 桜が咲いたらみんなで花見もしよう!」
答えた弥月はなんとか笑顔は保っているものの、会話にぎこちない空気を漂わせている。それでも彼らにとってそれが自然であるかのように、近藤はニコリと笑ってみせる。
……
僕は小さく「そろそろかな」と呟いた。すると近藤さんは「うむ」と肯定した後、声量だけを少し落として、何気ない会話の続きをしている風を装って話しつづけた。
「後ろからものようだな……四ツ辻であちこちから飛び出して来られるより、まっすぐな所で迎え撃った方がよいだろうか」
「こっちの手勢が少ないですから、僕もそう思いますけど…」
それは向こうが仕掛けてこないと難しい話で。
名案は出て来ず、このまま策もなく次の辻まで行くのだろうと、ぼんやりと僕が思ったとき。近藤さんの向こう側から、弥月君がノリ気とは程遠い声で、ただ確信に満ちた声で案を出した。
「…こっちから仕掛ければいいんじゃないですか」
とても静かで、冷静な声だった。
「後ろの方々とは、私が戻って斬り合ってきますから。そしたら騒ぎというか、こっちの手勢が減ったのに乗じて、前のも出てくるんじゃないですか」
「いや、それはいかん! 相手の人数も把握できてない状態で、一人で斬り込むなど!」
「…元々こっちは三人しかいなんいですから、私一人で敵の半分くらい倒せないようなら、最初から負けは決まってますって」
フウゥ…と長い溜息が吐きだしてから、弥月は近藤を真っ直ぐに見上げて、「だから、勝ちます」と宣言した。
その策の場合、彼女と僕の役割配分として、敵に奇襲をしかけるか、近藤さんの護衛をするかで、後者の役目を僕に譲ったことは、わざわざ相談しなくても、そうするべきと判断したからなのだろう。
「…もし後ろの敵が大勢で、君が勝てないと踏んで、そのまま一人で逃げるなんてことがないとも限らないじゃない」
「それは有り得ると思いますか? 近藤さん」
僕がそれを言い終わる前に、弥月君は直接近藤さんへ問うた。
自分を隊士として、武士として、信じるか。否か
「大丈夫だ」
近藤さんは弥月君を真っ直ぐ見返して、一つ頷いた。
僕に背を向けている近藤さんを見て、弥月君は嬉しそうに微笑んだ。
そして近藤さんは僕を振り返り、「任せよう」と。
「あっ、しかしだな! できるだけ怪我はしないように…!」
近藤が慌ててそう言い足したのに、弥月は「努力します」と笑う。
それから意外なことに、彼女は近藤さん越しに僕をじっと見た。そして何を思ったのか、ニイッと口元だけで笑って見せる。
それはまるで、近藤さんの信頼を獲得していることを自慢されているようで、なんだか少し癇に障った。
「人の顔を見て笑うなんて、失礼だと思わないの?」
僕が不機嫌にそう言うと、彼女は「あぁ、それはすみません」と軽く謝ってから、「でも」と続ける。
「知らないんですか? 新選組局長、近藤勇はこんなところでは死なないんです。だから殺させる訳にはいかないんです。だから、私は逃げません」
……
「……意味が分かんないんだけど」
「大丈夫です。考えるんじゃなくて、感じるものですから」
弥月君は意気揚々とそう明言した。
…本当に意味が分からなさ過ぎて、全然大丈夫じゃないんだけど
そう思ったことは伝えなかった。彼女は既に踵を返して走りだしていたから。
そう上手く弥月君の案どおりとは行かず、彼女が後方に奇襲をかけても、前方の敵はすぐには姿を現さなかった。しかし、後方の戦局がこちらに傾いていることを覚った敵は、弥月君が僕たちに再び合流する前に……近藤の護衛が少ない間に、攻める気になったらしい。
そして前方から出てきた頭数を数えると。
「…さすが。あの子、運だけは味方につけてる」
敵の総数は、後方が四人、前方は六人のようだ。もし敵の配置人数が逆だったなら、彼女が負うのは手傷くらいでは済まなかったかもしれない。
「近藤さんはそこに居てもらって大丈夫ですよ」
けれど、僕にとっては六人など大した人数ではない。近藤さんに一人として近づけさせない自信がある。
「ただ、あっちが後退してきてるみたいなので、取りこぼしには注意してください」
「うむ、分かった。総司も気をつけてな」
「任せてください」
そして自分も敵の中心へと飛び込んでいった。
「ぎあ゛あぁぁぁ!!!」
男の右肘から先を切り落とす。開いた隙間から腹を横に一閃斯くと、赤い飛沫が弾けた。
後ろへ倒れゆく男へ目もくれず、沖田は次の獲物に刃を向ける。
「…君で最後」
二人目までは、僕の速さに目が慣れる前に死んだから、彼らには何が起きたか分からなかっただろう。三、四人目では一、二撃くらいを受け流したけれど、剣戟の手ごたえは無かった。五人目は死に物狂いの形相で、その力任せさと集中力を少し面倒だと感じた。
そして六人目。怯えの色を含んだ眼をした男からは、もはや闘志すらも失われつつあった。
「ヒッ……悪かった、命だけはみ」
それ以上の言葉を発することは、彼にはできなかった。
沖田は空を切る音とともに、刀身の血を払う。
見逃すと思ったのだろうか
剣を握るなら…それを人に向けるなら、相応の覚悟を持って然るべきだ。殺す覚悟然り、殺される覚悟然り。
さて…
こっちは終わったけれど、弥月君の方はまだらしい。彼女が対峙している一人と、近藤さんの方の残りの一人とで終わりのようだ。
「とりあえず、近藤さんの方を…」
沖田が歩をすすめた時、弥月が倒したはずの一人の男が「ヴヴ…」と唸り、ゆっくりと上体を起こそうとしていた。
……
気絶でもしていたのだろうか。弥月君が地に伏せた男は、見たところ致命傷もなく、まだ立ち上がるだけの十分な力があるようだった。
「…ちゃんと殺さなきゃ駄目じゃない」
それが立ち上がりきる前に、背中側から心臓を貫いた。
「殺されたくなきゃ、殺しなよ」
逃がしたって、生かしたって、敵は血ほどにも感謝はしない。禍根は怨嗟を生むだけだと、どうして理解できないのか。
甘いなんて表現すら、彼女には温い。彼女の掲げる正義感は諸刃の剣で、その刃はこうして彼女自身さえも傷つけかねない。
そしてその足でもう一人、そこに転がっていた男を殺すべく近づくと。
……!
そこには大きな血溜まりができていた。
死んでる、か…
首からの出血。恐らく、それほど苦しまず、すぐに意識は飛んだだろう。
死体から視線を上げて、まだ敵と刃を交えている弥月君を見る。
これで何人目なんだろう
彼女を遠目に、ぼんやりとそんな事を思う。
『斬るとか言って脅したら、相手が言う事聞くと思ってるところが嫌い』
まだ弥月君がここに来たばかりのころ、彼は自分が真っ白な人間であることを誇示するように、僕にそう言った。
情勢だとか、必要なことだとか何も知らないくせに、ただ僕のような人間が存在することが悪であると責めた。
『人きり集団、新選組』
彼は殺生で解決を導く僕らに、嫌悪感を抱いていた。
人を斬りたくないからと、常に竹光を持ち歩いていた。
だけど
「もう君も、同じなんだね」
あれだけ僕たちを否定していた彼も、結局辿り着くところは同じだということを知る。勝利や確信に似た気持ちを感じて、なんだか可笑しかった。
そして同時に、悲しいような、残念な気持ちになった。
『あいつの剣は濁った』
あの日から、自分の剣が光を失っていると知った僕は、弥月君が光を放つせいで、自分の陰が強くなったように感じていた。
けれど、日当たりの良いところにいる彼のことが、どうしても気になった。それは、何も知らない頃には戻れないと知った、僕の羨望。
その彼が、今、僕と同じところにいる
彼の剣は濁ったか
「総司」
ドキリと心臓が鳴った。
***