姓は「矢代」で固定
第六話 新たな出会い
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弥月side
屯所に女の子が現れた……というか、捕えられていた。偶然にしては出来過ぎている、私がその日の夕方に知り合った女の子。
まじで、私のせいだったらどうしよう…
間者疑いのある自分と知り合ったせいだとしたら、或は、あの時間に手紙を探しに出かけていたせいだったとしたら……と、弥月は悶々と悩んでいた。
どう考えても、高確率でとちらかだ。
スッと天井を見上げる。
「……殺すとか、殺すとか、殺すとかなったら、断固阻止」
そう決めて、詮議を天井裏で盗み聞きしたところ、どうやら彼女は私と同じ理由で捕まったらしい。それ以上何も知らない彼女は、おそらく殺されることはないだろう……と思いたい。
彼女が一旦部屋に戻されることになって、斎藤さんが彼女を荒っぽく扱うのを見て、「なんでそんなに怒ってるんだろう」と思ったが。
彼らが再び広間に戻るのに着いては行かず、そのまま天井に留まり、後ろ手を縛られたままの彼女の同行を見守った。
幹部たちの動きも知りたいところだが、明らかに私の時と同じ『逃げられるように』、監視も捕縛も緩くしてある状態。間違って逃げないように、注意するのが得策だろう。
『隊士が浪士を斬ったところを見られたから』という前回と全く同じ理由に、もはや「阿呆かあんたら」と思わないでもないが……どうにも納得がいかない事が一つ。
斎藤さんが斬った隊士って、誰のこと…?
朝稽古が始まる前に、安藤助勤や数名の隊士に会ったが、昨晩、欠員が出たなんて話は聞いていない。
それに、幹部たちは何の理由で、自分達だけで慌てて飛び出したのか。脱走者の追跡なら監察方や、場合によっては平隊士にも通知が来る。
詮議の冒頭で「失敗した隊士」と、斎藤さんは言った。何を失敗したのだろう。そして、それは幹部が秘密裏にその「失敗した隊士」を処分しなければならない事なのか。
「変だ…」
ざわざわと嫌な感じがする。何か大事なものを見逃している気がする。
変だ、おかしい
この胸騒ぎを知っている。師の死を予期したときと同じ、気付くべき事象へ続く、大きな欠片。与えられた小さな欠片を繋ぎ合わせると、一つの答えに辿り着く。
天井の裏に臥せったまま、音を立てないように、ギュッとそこの縁を握った。
幹部しか知らない「隊士」がいる?
それが何かに失敗した?
山南さんの顔色が悪かったのと関係がある?
その「隊士」が浪士を殺したから、彼女が捕まった…?
隊士が浪士を斬り殺すなんて日常茶飯事なのに……それが「失敗した隊士」だから駄目だったってことか
…?
え?
それが日常茶飯事ならば、なぜ私はここに居る。
私はなぜ「間者」ではないかと、恐れられ捕えられた。
私が見たのも「失敗した隊士」だったから
ドクンドクンと脈が速くなる。何も見ていないのに、視線が激しく泳いだ。
『見たものを洗いざらい吐け』
数か月前、暗く狭い納戸の中で、繰り返し、繰り返しされた問答。
結局は、私が『隊士が一般人を殺したのをみた』なんて、大したものでは無かったという、山南さんの応え。
そして昨日、彼は私の『最善』は関わらないことと助言した。
きっと、そこには私が気付いてはいけないものがあったから
私はあの日、何を見て、何を見なかった
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