姓は「矢代」で固定
第二話 はじめてのお仕事
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山南side
彼らが部屋を出て行って、山南は誰知らず破顔する。
「…まさか、ねぇ…」
山崎君が『屋根裏に潜んでいたことを感付かれ、手練れの浪士一人と対峙している状況でした』云々つらつらと、想像した通りの状況を報告するのを、特に感慨もなく聞いていた。
それから続けざまに、淡々と『矢代君は女性であることが判明しました』と報告されたとき、吹き出さなかったのを我事ながら立派だったと思う。
我が耳も目も疑いましたよ……まったく…
思わず「本当に?」と問い返しそうにはなったが、そうすると、目の前の彼女に証明してもらわなければならなくなり……いえ、まあ証明して頂いても構いはしませんが……彼女に、二度も肌を晒させる申し訳ない事体になると思い、なんとかその言葉を飲み込んだ。
“謎”が解決したとでも言いましょうか…
彼…矢代弥月が何を隠しているのか、知るのを楽しみにしていた。
我々新選組や今後の日本に関すること然り、彼……彼女自身のこと然り。
どちらにせよ、強要すれば自ら死にかねない雰囲気だったので、黙って様子を見てはいたのだけれど。
「…まさか、ねぇ」
山崎君が報告している間の、矢代君の何とも言えない、ばつの悪そうな……どうにも気まずそうな顔を思い出して、クスクスと笑う。
…どんな風に怒られると思っていたのでしょうか
山南は本当にそうなのかと、改めて疑うよりも先に、その報告が面白くて仕方がなかった。
あの口の堅さは、もしかしたら羅刹の関係者なのではないかと疑っていたが、こんな面白い事態が隠れているとは想いも寄らなかった。
「…ふっ……駄目ですね、意外過ぎて……っ」
笑いが止まらない。
「――っとうに、土方君に何と伝えればいいのか……ふっ…彼を怒らすことは、お上手なんですから…」
今回の任務、上手くいけば、土方君を納得させられるはずだった。
矢代弥月がどこかの藩の間者だなどと、私はあまり疑ってはいないけれど、どうにも土方君は自分に似た彼のことが癪に障るらしい。
今回の件をどう伝えれば、矢代君の体裁を保つことができるのか。
…まあ……土方君の信頼は、またの機会を経てもらいましょうか…
何故、あんな「皆を欺きつづける」という提案をしたかといえば、私の信用を信用しない土方君への、ちょっとした意地悪といいますか、ね。
それから山南は、土方の熱烈な支持者である二人を、弥月がすっかり丸め込んでいることに、また面白さを見出して笑う。
敬礼して悪戯っ子のような顔をした彼…彼女を、今後どう使っていくかに思いを馳せながら、山南はこれ以上ない程に深い笑みを浮かべたのだった。