姓は「矢代」で固定
第二話 はじめてのお仕事
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***
それは譲れぬと弥月は駄々をこねて、山崎に支えられながら元いた部屋へと戻る。
畳の一部には血痕があり、二つ隣の長州勢は全員が撤退した後だった。壁には私が投げた手裏剣が一つ刺さっている。
…ドンパチした奴らを、もう一度上げた店主の心情やいかに
山崎の「早く診せなさい」という言葉と手に座らされて、弥月は落ちていた首をもたげて、彼と向かい合う。
「……後悔しますよ?」
「診ない方が後悔する。……これ以上抵抗すらなら無理にでも脱がせる」
「それは嫌!」
誰得だ。ヨいではないか~ぐへへする程に帯の長さはない。元気もない。
「ハァ……本当に知りませんからね」
もはやこれまで
流石に、顔を見ながら脱ぐのは気持ち的に無理だったので、彼を背にして帯の結び目に指をかける。
シュッ
腰の帯を解いて、肩から黒衣を落とす。さらに中に着込んでいたTシャツを頭から脱いだ。この動作、張った脇腹がなかなかに痛くて、顔を顰める。
サラシはそのままにしておく。銃創はギリギリそれよりも下の横腹だった。
えっー…と
何となく脱いだものを掴んだまま振り返り、山崎さんの反応を待つ。色んな意味での申し訳なさに、視線は合わせられなかった。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…えっと、つぶれてる訳じゃなくて元から……無い、です…」
凝視されているのに居た堪れず、弥月は聞かれてもいない説明をしてしまった。やだ、これ何のプレイ。
一方、山崎の目に映ったもの。
曝された肩や腕は、男にしては細身ながらも、しっかりと筋肉がついて厚みがあった。鎖骨や肩鋒には打撲痕が多数みられる。
下腹部は患部に目が行く。本人が元気そうにしてるから油断していたが、思ったよりも出血量が多い。。
そして、肋骨の上を横向きに走る白いサラシ。下の方は鮮血に赤く染まっていた。
「……」
「……あの……なんか、何でも良いので反応してください…」
そんなにビックラこかれると、ちょっと傷つくんですが…
などと、内心は味噌っかすほどの乙女心を発揮しつつ、口を歪めて、烝さんの表情を見る。
目があった。
山崎は歯に何か挟まったような微妙な顔で、半開きの口を何度か開閉してから、最後はキュッと口を引き結んで言った。
「…先に手当てを」
「あ、はい…お願いします」
…ちょっと焦った。もしかして、分かんなかったのかと思った
***
「で、どうしましょうか」
「……君が言うことじゃない」
「だって、スルーされて終わったら、流石に傷つくと言いますか。多は無いが少はあると訴えたいと言いますか…」
「………いい、分かった。もう良いから…」
山崎さんは額に手を当てて項垂れた。細く長ーーーい溜息が聞こえる。
結果、胸部から腹部まで全面を、サラシが覆う感じになった。
元々あったサラシに、山崎は口も手も一切触れずに、淡々と弥月の傷を押さえて止血し、上から新しいサラシを巻いた。
そうすると、腹式呼吸すらまともにできなくなった。ちょっとどころでなく息苦しくて、私が上のサラシを外そうとしたら、「我慢しろ」と命令された。世の部下というのは辛い。
出血のわりに傷は浅いようで、弥月はボウッとする頭に「貧血かなぁ」と感じながらも、山崎の落ち着いた様子から、今のところ命に別状が無いようで、少し安心する。
「…ここで俺が事情を聞くよりも、帰って総長に報告してもらう」
「え? 土方さんじゃなくてですか?」
報告といえば、土方さん。
困ったときも、土方さん。
「副長は本日不在だそうだ。指示は総長から聴くようにと」
「なるほどー。斎藤さんは?」
「…数名捕えて帰るための応援だったが……今更だな」
「…すいません」
これから、どうやって逃げよう
ここまで来て、あの面子に女として慰みものにされることはないだろうけれど…
…
…え、やだ怖い。皆にそんな趣味ないよね。お互い辛いから止めとこう?
よく知り合ってしまった分、そんな扱いになれば、初見のときより立ち直れなさそうだと、想像して寒気がした。
とりあえず『それはない』と仮定していこう、そうしよう。
…ってなると、やっぱ切腹?
この前から本当に笑えない。あと三か月はここで働くと決めたばかりだったのに、最近、逃げることしか考えてない気がする。
だって、ここの人達、『女ですアハハ』とか言ったところで、絶対五体満足で放り出してなんかくれない。あの鬼副長、『その減らず口はきけねぇようにしてやる』とか平気で言いそう。やっべ、逃げろ、私。
「……それもあって戻るのが遅くなった……すまない」
「へ!?」
突如、目の前で頭を下げられて、弥月はギョッと目を剥く。
何のこと!?
山崎さんは『副長がいなかったから指示を受けるのに手間取った』云々と言うから、慌てて続きを塞ぐ。
「や! 私がマズッた…しくじったんですし、謝らないでください!!
寧ろ、掴んだ情報パーにしました!すみません!! 申し訳ございません! 首飛ばさないでください!! いえ、山崎さんが代わりに責任とらされるくらいなら、私が飛ばされますけど!」
「……まさかと思うが、逃げようと思ってないか」
「……そんなことないですよー……」
なんで分かった
「ハァ……頼むから逃げないでくれ。それこそ追手が出されて切腹だろう。それなら、まだ素直に謝った方が、情状酌量の余地はある。」
「…そうですかね……」
「…考えてたんだな」
「あ…、すいません」
山崎が今度は分かりやすく長い溜息を吐いたのを、弥月は横目で見ながら着物を整えた。
それから其々の荷物を持った時に、未だ沈鬱な面持ちでいる山崎を見て、弥月は米粒ほどの良心で「苦労おかけします」と言ったが、彼からの返事はなかった。
…やっぱ、信頼根こそぎ崩壊、かな
帰り道もチラチラと彼の様子を窺っていたのだが、何かしら言葉かけがあることもなく。
前科持ちだからか、完全に警戒されまくっていて、全く逃げる隙が見当たらなかった。
***
それは譲れぬと弥月は駄々をこねて、山崎に支えられながら元いた部屋へと戻る。
畳の一部には血痕があり、二つ隣の長州勢は全員が撤退した後だった。壁には私が投げた手裏剣が一つ刺さっている。
…ドンパチした奴らを、もう一度上げた店主の心情やいかに
山崎の「早く診せなさい」という言葉と手に座らされて、弥月は落ちていた首をもたげて、彼と向かい合う。
「……後悔しますよ?」
「診ない方が後悔する。……これ以上抵抗すらなら無理にでも脱がせる」
「それは嫌!」
誰得だ。ヨいではないか~ぐへへする程に帯の長さはない。元気もない。
「ハァ……本当に知りませんからね」
もはやこれまで
流石に、顔を見ながら脱ぐのは気持ち的に無理だったので、彼を背にして帯の結び目に指をかける。
シュッ
腰の帯を解いて、肩から黒衣を落とす。さらに中に着込んでいたTシャツを頭から脱いだ。この動作、張った脇腹がなかなかに痛くて、顔を顰める。
サラシはそのままにしておく。銃創はギリギリそれよりも下の横腹だった。
えっー…と
何となく脱いだものを掴んだまま振り返り、山崎さんの反応を待つ。色んな意味での申し訳なさに、視線は合わせられなかった。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…えっと、つぶれてる訳じゃなくて元から……無い、です…」
凝視されているのに居た堪れず、弥月は聞かれてもいない説明をしてしまった。やだ、これ何のプレイ。
一方、山崎の目に映ったもの。
曝された肩や腕は、男にしては細身ながらも、しっかりと筋肉がついて厚みがあった。鎖骨や肩鋒には打撲痕が多数みられる。
下腹部は患部に目が行く。本人が元気そうにしてるから油断していたが、思ったよりも出血量が多い。。
そして、肋骨の上を横向きに走る白いサラシ。下の方は鮮血に赤く染まっていた。
「……」
「……あの……なんか、何でも良いので反応してください…」
そんなにビックラこかれると、ちょっと傷つくんですが…
などと、内心は味噌っかすほどの乙女心を発揮しつつ、口を歪めて、烝さんの表情を見る。
目があった。
山崎は歯に何か挟まったような微妙な顔で、半開きの口を何度か開閉してから、最後はキュッと口を引き結んで言った。
「…先に手当てを」
「あ、はい…お願いします」
…ちょっと焦った。もしかして、分かんなかったのかと思った
***
「で、どうしましょうか」
「……君が言うことじゃない」
「だって、スルーされて終わったら、流石に傷つくと言いますか。多は無いが少はあると訴えたいと言いますか…」
「………いい、分かった。もう良いから…」
山崎さんは額に手を当てて項垂れた。細く長ーーーい溜息が聞こえる。
結果、胸部から腹部まで全面を、サラシが覆う感じになった。
元々あったサラシに、山崎は口も手も一切触れずに、淡々と弥月の傷を押さえて止血し、上から新しいサラシを巻いた。
そうすると、腹式呼吸すらまともにできなくなった。ちょっとどころでなく息苦しくて、私が上のサラシを外そうとしたら、「我慢しろ」と命令された。世の部下というのは辛い。
出血のわりに傷は浅いようで、弥月はボウッとする頭に「貧血かなぁ」と感じながらも、山崎の落ち着いた様子から、今のところ命に別状が無いようで、少し安心する。
「…ここで俺が事情を聞くよりも、帰って総長に報告してもらう」
「え? 土方さんじゃなくてですか?」
報告といえば、土方さん。
困ったときも、土方さん。
「副長は本日不在だそうだ。指示は総長から聴くようにと」
「なるほどー。斎藤さんは?」
「…数名捕えて帰るための応援だったが……今更だな」
「…すいません」
これから、どうやって逃げよう
ここまで来て、あの面子に女として慰みものにされることはないだろうけれど…
…
…え、やだ怖い。皆にそんな趣味ないよね。お互い辛いから止めとこう?
よく知り合ってしまった分、そんな扱いになれば、初見のときより立ち直れなさそうだと、想像して寒気がした。
とりあえず『それはない』と仮定していこう、そうしよう。
…ってなると、やっぱ切腹?
この前から本当に笑えない。あと三か月はここで働くと決めたばかりだったのに、最近、逃げることしか考えてない気がする。
だって、ここの人達、『女ですアハハ』とか言ったところで、絶対五体満足で放り出してなんかくれない。あの鬼副長、『その減らず口はきけねぇようにしてやる』とか平気で言いそう。やっべ、逃げろ、私。
「……それもあって戻るのが遅くなった……すまない」
「へ!?」
突如、目の前で頭を下げられて、弥月はギョッと目を剥く。
何のこと!?
山崎さんは『副長がいなかったから指示を受けるのに手間取った』云々と言うから、慌てて続きを塞ぐ。
「や! 私がマズッた…しくじったんですし、謝らないでください!!
寧ろ、掴んだ情報パーにしました!すみません!! 申し訳ございません! 首飛ばさないでください!! いえ、山崎さんが代わりに責任とらされるくらいなら、私が飛ばされますけど!」
「……まさかと思うが、逃げようと思ってないか」
「……そんなことないですよー……」
なんで分かった
「ハァ……頼むから逃げないでくれ。それこそ追手が出されて切腹だろう。それなら、まだ素直に謝った方が、情状酌量の余地はある。」
「…そうですかね……」
「…考えてたんだな」
「あ…、すいません」
山崎が今度は分かりやすく長い溜息を吐いたのを、弥月は横目で見ながら着物を整えた。
それから其々の荷物を持った時に、未だ沈鬱な面持ちでいる山崎を見て、弥月は米粒ほどの良心で「苦労おかけします」と言ったが、彼からの返事はなかった。
…やっぱ、信頼根こそぎ崩壊、かな
帰り道もチラチラと彼の様子を窺っていたのだが、何かしら言葉かけがあることもなく。
前科持ちだからか、完全に警戒されまくっていて、全く逃げる隙が見当たらなかった。
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