姓は「矢代」で固定
第2話 真偽のみかた
混沌夢主用・名前のみ変更可能
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
沖田さんが底意地の悪い笑みを浮かべて言う。
「それで? こんな拾い物してどうするつもりですか、土方さん」
「未来から来たってのが本当だとしても嘘だとしてもなぁ……どうすんだ?」
「どうするんですか」
「お前がいうなよ」
「いや、思わず」
ちょうどいい感じに、赤茶色の髪の男からツッコミが入る。
彼も服なのか飾りなのか、よく分からない格好をしているのが気にかかるが、とりあえずイケメンだ。土方さんは女顔のイケメンだが、彼は体格が良くて“漢”って感じだ。
「よく喋る奴だなぁ。ちょっとはこの状況に、命の危険とか感じねえのか」
「いえ、まぁ、最初はヤバいかなぁと思ってたんですけど、何となく今はそれほどでもないというか…」
それらしく腕を組んで考えてみても、やはり危機感は生まれない。現実味がない。
でも、まだ彼らがその気になれば、切って捨てられるのだろう。「新選組」だし。
「んーまぁ、そん時は、そん時です。いさぎは悪い方だと思いますよ、それなりに抵抗はしたいです。
でも今この状況で言いたいことは言わなきゃ、死んでも死にきれないかなぁって。」
「確かになあ」
男はクツクツと笑う。
あ、目の保養
なんてしょうもない事を考えているのかと、自分でも思うが。それはそれ、これはこれだ。
「それで…トシさん。いったいこの子をどうするんだい」
仕切り直すために源さんが神妙な面持ちで言う。今度は茶化す雰囲気でもない。
「なぁ近藤さん。こいつの言ってることが本当なら…寝醒め悪いと思うん
だけど」
「平助は甘いなぁ。吊るしてみたら吐くんじゃないの? なんか含みある事とか言うし、ついでに全部出してもらえば?」
「…なんか物騒な事言ってますけど、あんたらが吐いて欲しいような情報とか持ってないから。ついでに言うなら、壬生浪士組のためになる歴史的情報も持ってないから。歴史はあんまり興味なくて詳しくないですよ」
一応、牽制球を投げておく。
吊るされたくはない。それに吊るされたところで出るのは、彼らの悲惨な末路くらいだろう。幕臣である彼らは敗走するはずだ。
「僕は君のその発言が怪しいって言ってるんだけどね」
「でも俺にはこいつが嘘言ってるようには見えねぇけどなぁ」
「…だが、何かを知っていて言わぬことも事実。腕が立つ得体のしれぬ者を安易に解放するのも拙速では」
「そうだよな。なぁお前、悪い事言わねえから知ってる事吐いちまえよ」
新八さんに諭される。
吊るすか否か。どうやら意見は半々といったところのようだ。
「はぁ…だからこれ以上、身元証明できるものは持ってませんって。当然知り合いもいないんですから。
知ってる事は150年後の日本がどういう所かってくらいで、学校で勉強した簡単な歴史以外知ってる事はありません」
「君は学者なのですか?」
山南さんが意外なところに喰いついてきた。
「いえ? 学校で…未来の寺子屋みたいな所で学んだ程度の知識です。だからまぁ、日本の歴史をうすーくひろーくって感じですね」
「それは興味深い…」
恐らく彼の「興味深い」に対応できる知識は持ち合わせていないだろうから、押し上げられた眼鏡の向こうに曖昧に笑っておく。
「…あんたは結局昨日見たのだな?」
「あなたがお仲間を殺したのはみましたけど、それ以外は知りません」
「…」
しれっと答える。
もう大分考える猶予はあったから、昨日のことを問われても慌てる必要はない。町人を殺したなんて、彼らにとって外聞が悪いだけだろう。
議論が煮詰まりつつあり、意見が纏まらない事を悟った土方は、近藤に耳打ちをする。
「うむ…。山南君も…別室で話をしてくる」
三人は立ち上がって部屋を後にする。
それからは私に気を遣ってか、誰も何も喋らなかった。
三人減って、逃げ出すなら今なのだろうが、両足首はしっかり縛られている。縛られてなくても、丸腰で彼ら全員を避けていくのは難しいだろう。
うーん…夢だったら、死んだら帰れると思うんだけど…
その選択肢には賭けない方が良いだろう。「夢だから大丈夫」などと舐めてかかると死んでしまう気がする。
…ってことは、沙汰を待つしかないのか
お偉方三人がどのような結果をだすのか甚だ検討がつかないが、先ほどの山南さんの反応だと利用価値があると判断されても可笑しくは無い。
近藤さんは慈悲深い人のようだから、即首を落とされることはないだろう。問題は土方さんがどう判断するかだ。
正直なところ沖田さんの言うとおり、拷問を受ける可能性が高い。その上で、死ぬまで続くか、途中で開放してもらえるかが、私の生死を分けると思われる。
ふんっ…釘だろうが、蝋だろうがなんでもござれってんだ。口だけは固いんだから!
さっきまでの「覚悟」とやらは何処へやら。 弥月は「絶対死んでやるもんか」という意志に燃えていた。
ただ、拷問されることを想像して、足の甲とかが若干もぞもぞした。