生前
どうしてこうなったんだ!?!?
男は隠れながらそう思った。
満月に惨殺現場が照らし続けられている。
その真ん中には男がいた。
毛の先が桜色に染まった白髪の、男。
その目には綺麗な桜が咲き続けている。
そんな不気味な見た目の男1人に、数十人いたはずの自分の仲間は蹂躙された。
しかも刀1本で、だ。
こちらには銃もあったはずだ、それなのに敵わなかったのか?
そして、何故あんなに殺しているのに血の1滴も浴びていない?
あれは本当に人間なのか?
否、否否否否!!!!!!
あんなもの、人間ではない!!!あんな化け物が人間であっていいはずがない!!!あれが女の腹から生まれ落ちる訳が無い!!!
手に再び力を入れ、強く刀を握り締める。
そうだ、これは化け物退治だ。
ここであの化け物を倒して英雄になれ!!
姿勢を低くし背後に走り抜ける。
まだこちらには気づいていないようだ。
そのまま首を狙い、勢いよく刀を振り下ろす。
もらった!!
口角が上がる。
視界が回った。
何回か頭に衝撃が走る。
最期に見たのは、首のない自分の身体と、刀で血を啜った爛々と咲き誇る桜の花だった。
これで終いか
血振りをし、納刀しながら周りを見渡す。
そこにあるのは自身が切り捨てた死体が沢山転がっていた。
どうやら彼らは裏で新撰組が使っている装備やらなんやらを売り捌き、それで金を得ていたらしい。
全く嫌な奴らだよね!!と黒髪の監察方は団子を頬張りながら愚痴をこぼしていた。
この案件は本来隊長格が対処するべきだが、少人数だったのと被害があまり出ていないが早めに対処した方がいいと判断し独断で動いた。実際相手の剣の腕は毛が生えた程度のものだった。そのため、自分1人だけでも対処が可能であった。返り血は被らないように動いたので着物は汚れていない、このまま屯所に戻っても何も問題はないだろう。
ぐぅ。
その場に似合わぬ腹の音が静かな夜に鳴り響く。
こうならない為にいつもより沢山食べておいたはずなのだが・・・
しかしもう一度腹が鳴った。このままでは屯所に戻ってもお腹が減って眠れない。
困った、こんな時間に空いてる飯屋などあるはずが・・・
「あ」
そうだ、あそこなら開いている。
この腹の虫をなんとかする為に、金を数えつつ立ち去った。
「おい斎藤」
わいわいと酒盛りをしていた所に、スパァンと音をたて襖が開いたと思えばそこに立っていたのは新八だった。
一瞬時間が止まったが新八だと気づくと他の奴らはまたさっきのようにどんちゃん騒ぎ始めた。
「あ?もっと静かに開けろよ」
「神楽木知らねぇか」
文句を言っても無視して話を進める馬鹿に腹が立つがどうやらそれどころではないらしい。真顔だが少し焦っているように見える。
「神楽木?ああ、確かお前の隊のやつだろ?なんで僕が知ってると思ったんだよ」
「いや、大部屋の布団の中にいねぇからよ、腹でも減って酒盛りしている奴らのツマミ貰って食ってんじゃねぇかと思ってな」
すごいなそいつ、心臓が鋼でできているのか?しかし、今の今まで酒盛りをしていたが神楽木という隊員は来ていない。
「残念だが見てねぇよ、他に宛とかねぇの?」
「ある、にはぁ・・・あるけ、どよぉ・・・」
突然どもり始めた新八に首を傾げる。
「あるのかよ、ってかなんで急にそんな言葉に詰まってんだ?」
「いや、その・・・またか?またあそこなのかぁ・・・?」
いや1人で自己完結するんじゃねぇ、聞きてぇのはこっちだ馬鹿。
頭を抱える新八に訳も分からず苛立ちを覚える。
「おい馬鹿」
「誰が馬鹿だ!!」
いつもの様に罵倒してやるといつも通りの反応が帰ってきた。
「声がでけぇよ馬鹿、その宛がある場所って何処なんだよ」
そう言うと新八は黙り込む、そして覚悟を決めたようにボソボソと何かを呟いた。
「・・・く」
「え、なに?いつもの音量何処行ったんだよ」
「・・・かく」
「だから聞こえねえって」
ゆうかく
手に持っていたおちょこから、酒がこぼれた音がした。
「あらぁ〜いらっしゃい新八はんとお連れはん、この子迎えに来はったん?」
部屋に案内されると豪華絢爛な着物を来た遊女がこちらに声をかける。格好からしてここの花魁だろう。
この子、と優しく肩に手を当てられている彼女は丁度食べ終わった様で、きちんと手を合わせご馳走様でした、と呟いた。
「・・・あれ、隊長?何故ここに?」
「お前を迎えに来たんだよ!!!!!」
こちらに気づききょとんと首を傾げる彼女に新八は顔を顰めながら叫ぶ。
というか本当に遊郭にいるとは、聞き間違いであって欲しかった。
「そんな、隊長お二人のお手を煩わせる気はなかったのです。ご飯を食べたらすぐに屯所に戻るつもりで」
「いや、あのな神楽木、ここ何処か分かるか?」
「・・・?遊郭、です」
「どういう場所か、知ってるか」
「?夜遅くでも開いてる飯屋・・・?」
(なにをどうしたらそうなるんだ!?)
どんな勘違いだ!?どういう人生を歩んできたらこんな勘違いをするんだ!?
「違ぇ、違ぇんだよ神楽木ィ・・・」
頭を抱えしゃがみこんでしまった新八に大きなはてなマークを浮かべつつも、大丈夫ですか?と声をかける彼女を見て、少しだけ新八に同情を覚える。
にしても彼女はどれだけの量を食べたのだろうか、お膳がとんでもない事になっているが。
「にしても、この身体の何処に入ってるってのかねぇ・・・うおっ軽ゥ!?」
思ったより持ち上がったので驚いてしまった。筋肉はあまりついていない様だった。
「わ」
「ああ、ごめんごめん、驚かすつもりはなかったのよ、にしても軽いね、君・・・よくこの体にあの量が入ってるよ・・・」
「多分そいつ新撰組の中で1番食うぞ」
「嘘だろ?」
わちゃわちゃしていると、その様子を見て花魁はくすくすと笑っていた。
「ほら、桜花ちゃん、隊長はんら迎えに来てくれはったんだから帰らんと」
「そうですね、御雪さん急な来店だったのにありがとうございました。」
ぺこり、と神楽木は綺麗なお辞儀をする。
「ええよ〜またおいでな〜」
そのお辞儀を見てにこにこと笑いながら手を振る御雪と呼ばれた花魁は、少し上機嫌そうに見える。
「ほら、さっさと帰るぞ。邪魔したな、御雪花魁!」
「お邪魔しました〜」
「はぁ〜い、新八はんもお連れはんもまたおいでや〜」
「勘弁してくれ!」
あらまぁいけずぅ〜という冗談めかした甘い声を聞きながら全員早歩きで(特に新八が)店を出る。
出た後に何かが足りないことに気づく。
「あれ、神楽木お前刀は?」
「あ」
「お前、忘れたなァ?」
・・・やはり新八の隊にいると馬鹿が移るのだろうか?
「あー・・・じゃあ僕取ってくるよ」
「ですが」
「いーのいーの、隊長だからいいとこ見せなきゃねぇ」
「それ言ったら台無しだろ」
「どっかの馬鹿隊長は黙っててくださーい」
「誰が馬鹿だ!!」
手をヒラヒラさせながら店の中に戻り、彼女の刀を取りに戻った。
この後は他愛もない雑談話をしながら特に問題もなく屯所に帰った。
話を聞くと、どうやら彼女は《そういう》知識に疎いらしく、それで遊郭を飯屋と勘違いしているらしい。新八がその誤解を解くことができるかどうかだが、まあ無理に近いだろう。あとは刀の扱いが上手く刃こぼれさせたことがないだとか、手入れが丁寧だとか、昔の神楽木が来た時の騒動だとか、そんな話ばかりしていた。
「ほら、さっさと部屋に戻って寝ろ、明日早いんだからな?」
「はい、おやすみなさい永倉隊長」
「おう、おやすみ」
「斎藤隊長もおやすみなさい」
「はいはい、おやすみ〜」
そう言って彼は部屋に戻って行った。
新八も流石に眠いのか、欠伸をしながら斎藤も寝ろよ〜と言って部屋に戻っていく。その後ろ姿とは反対に歩き出す。
起きているであろう彼の元に。
「副長」
「入れ」
静かにふすまを開ける。
声の主、土方歳三はどうやら作業中だったようで、横目だけを向け自身に尋ねる。
「こんな深夜になんの用だ」
「起きている副長も大概でしょう」
ろうそくの火が小さく揺れる、光で自身と副長の顔が照らされる。
「明日───死体が発見されるかと」
その言葉に副長は手が止まり、こちらを向いた。
「・・・犯人は」
「神楽木桜花、新八の隊のやつです」
「根拠」
「先程、そいつから血の匂いがしました。負傷ではないのは触って確認済みです、それと、刀の扱いが上手いって話だったのに刀が刃こぼれしていたのと少し触ったらベタついていましたんで、まあ、あとは目、ですかね あれは人を斬った後の目だ。新八は気づいていなかったみたいですが」
「・・・そうか」
一通り報告を聞いたあと、副長はそう呟き、黙った。どうやら何かを考えている様子だった。
「どうします?」
少し、間があった後、彼が口を開く。
「放置でいい」
「そりゃあなんで」
「新撰組には狂い桜が咲いているらしい」
「・・・狂い桜、ですか?一年中桜が咲いているとかいう?」
そう言ってああ、そういう事かと合点が行った。
「つまり、新八が桜守ということですか」
「ああ、桜の木には毒があるとは言うが、その毒が俺達を蝕むこともねぇ。そして、新撰組の血も吸わねえ」
吸うのはあいつに仇なす奴の血だけだ。
ろうそくの火が揺れ、ぽとり、と蝋が溶け落ちた。
そして翌日───斎藤が言った通り、沢山の惨殺死体が見つかったそうだ。
男は隠れながらそう思った。
満月に惨殺現場が照らし続けられている。
その真ん中には男がいた。
毛の先が桜色に染まった白髪の、男。
その目には綺麗な桜が咲き続けている。
そんな不気味な見た目の男1人に、数十人いたはずの自分の仲間は蹂躙された。
しかも刀1本で、だ。
こちらには銃もあったはずだ、それなのに敵わなかったのか?
そして、何故あんなに殺しているのに血の1滴も浴びていない?
あれは本当に人間なのか?
否、否否否否!!!!!!
あんなもの、人間ではない!!!あんな化け物が人間であっていいはずがない!!!あれが女の腹から生まれ落ちる訳が無い!!!
手に再び力を入れ、強く刀を握り締める。
そうだ、これは化け物退治だ。
ここであの化け物を倒して英雄になれ!!
姿勢を低くし背後に走り抜ける。
まだこちらには気づいていないようだ。
そのまま首を狙い、勢いよく刀を振り下ろす。
もらった!!
口角が上がる。
視界が回った。
何回か頭に衝撃が走る。
最期に見たのは、首のない自分の身体と、刀で血を啜った爛々と咲き誇る桜の花だった。
これで終いか
血振りをし、納刀しながら周りを見渡す。
そこにあるのは自身が切り捨てた死体が沢山転がっていた。
どうやら彼らは裏で新撰組が使っている装備やらなんやらを売り捌き、それで金を得ていたらしい。
全く嫌な奴らだよね!!と黒髪の監察方は団子を頬張りながら愚痴をこぼしていた。
この案件は本来隊長格が対処するべきだが、少人数だったのと被害があまり出ていないが早めに対処した方がいいと判断し独断で動いた。実際相手の剣の腕は毛が生えた程度のものだった。そのため、自分1人だけでも対処が可能であった。返り血は被らないように動いたので着物は汚れていない、このまま屯所に戻っても何も問題はないだろう。
ぐぅ。
その場に似合わぬ腹の音が静かな夜に鳴り響く。
こうならない為にいつもより沢山食べておいたはずなのだが・・・
しかしもう一度腹が鳴った。このままでは屯所に戻ってもお腹が減って眠れない。
困った、こんな時間に空いてる飯屋などあるはずが・・・
「あ」
そうだ、あそこなら開いている。
この腹の虫をなんとかする為に、金を数えつつ立ち去った。
「おい斎藤」
わいわいと酒盛りをしていた所に、スパァンと音をたて襖が開いたと思えばそこに立っていたのは新八だった。
一瞬時間が止まったが新八だと気づくと他の奴らはまたさっきのようにどんちゃん騒ぎ始めた。
「あ?もっと静かに開けろよ」
「神楽木知らねぇか」
文句を言っても無視して話を進める馬鹿に腹が立つがどうやらそれどころではないらしい。真顔だが少し焦っているように見える。
「神楽木?ああ、確かお前の隊のやつだろ?なんで僕が知ってると思ったんだよ」
「いや、大部屋の布団の中にいねぇからよ、腹でも減って酒盛りしている奴らのツマミ貰って食ってんじゃねぇかと思ってな」
すごいなそいつ、心臓が鋼でできているのか?しかし、今の今まで酒盛りをしていたが神楽木という隊員は来ていない。
「残念だが見てねぇよ、他に宛とかねぇの?」
「ある、にはぁ・・・あるけ、どよぉ・・・」
突然どもり始めた新八に首を傾げる。
「あるのかよ、ってかなんで急にそんな言葉に詰まってんだ?」
「いや、その・・・またか?またあそこなのかぁ・・・?」
いや1人で自己完結するんじゃねぇ、聞きてぇのはこっちだ馬鹿。
頭を抱える新八に訳も分からず苛立ちを覚える。
「おい馬鹿」
「誰が馬鹿だ!!」
いつもの様に罵倒してやるといつも通りの反応が帰ってきた。
「声がでけぇよ馬鹿、その宛がある場所って何処なんだよ」
そう言うと新八は黙り込む、そして覚悟を決めたようにボソボソと何かを呟いた。
「・・・く」
「え、なに?いつもの音量何処行ったんだよ」
「・・・かく」
「だから聞こえねえって」
ゆうかく
手に持っていたおちょこから、酒がこぼれた音がした。
「あらぁ〜いらっしゃい新八はんとお連れはん、この子迎えに来はったん?」
部屋に案内されると豪華絢爛な着物を来た遊女がこちらに声をかける。格好からしてここの花魁だろう。
この子、と優しく肩に手を当てられている彼女は丁度食べ終わった様で、きちんと手を合わせご馳走様でした、と呟いた。
「・・・あれ、隊長?何故ここに?」
「お前を迎えに来たんだよ!!!!!」
こちらに気づききょとんと首を傾げる彼女に新八は顔を顰めながら叫ぶ。
というか本当に遊郭にいるとは、聞き間違いであって欲しかった。
「そんな、隊長お二人のお手を煩わせる気はなかったのです。ご飯を食べたらすぐに屯所に戻るつもりで」
「いや、あのな神楽木、ここ何処か分かるか?」
「・・・?遊郭、です」
「どういう場所か、知ってるか」
「?夜遅くでも開いてる飯屋・・・?」
(なにをどうしたらそうなるんだ!?)
どんな勘違いだ!?どういう人生を歩んできたらこんな勘違いをするんだ!?
「違ぇ、違ぇんだよ神楽木ィ・・・」
頭を抱えしゃがみこんでしまった新八に大きなはてなマークを浮かべつつも、大丈夫ですか?と声をかける彼女を見て、少しだけ新八に同情を覚える。
にしても彼女はどれだけの量を食べたのだろうか、お膳がとんでもない事になっているが。
「にしても、この身体の何処に入ってるってのかねぇ・・・うおっ軽ゥ!?」
思ったより持ち上がったので驚いてしまった。筋肉はあまりついていない様だった。
「わ」
「ああ、ごめんごめん、驚かすつもりはなかったのよ、にしても軽いね、君・・・よくこの体にあの量が入ってるよ・・・」
「多分そいつ新撰組の中で1番食うぞ」
「嘘だろ?」
わちゃわちゃしていると、その様子を見て花魁はくすくすと笑っていた。
「ほら、桜花ちゃん、隊長はんら迎えに来てくれはったんだから帰らんと」
「そうですね、御雪さん急な来店だったのにありがとうございました。」
ぺこり、と神楽木は綺麗なお辞儀をする。
「ええよ〜またおいでな〜」
そのお辞儀を見てにこにこと笑いながら手を振る御雪と呼ばれた花魁は、少し上機嫌そうに見える。
「ほら、さっさと帰るぞ。邪魔したな、御雪花魁!」
「お邪魔しました〜」
「はぁ〜い、新八はんもお連れはんもまたおいでや〜」
「勘弁してくれ!」
あらまぁいけずぅ〜という冗談めかした甘い声を聞きながら全員早歩きで(特に新八が)店を出る。
出た後に何かが足りないことに気づく。
「あれ、神楽木お前刀は?」
「あ」
「お前、忘れたなァ?」
・・・やはり新八の隊にいると馬鹿が移るのだろうか?
「あー・・・じゃあ僕取ってくるよ」
「ですが」
「いーのいーの、隊長だからいいとこ見せなきゃねぇ」
「それ言ったら台無しだろ」
「どっかの馬鹿隊長は黙っててくださーい」
「誰が馬鹿だ!!」
手をヒラヒラさせながら店の中に戻り、彼女の刀を取りに戻った。
この後は他愛もない雑談話をしながら特に問題もなく屯所に帰った。
話を聞くと、どうやら彼女は《そういう》知識に疎いらしく、それで遊郭を飯屋と勘違いしているらしい。新八がその誤解を解くことができるかどうかだが、まあ無理に近いだろう。あとは刀の扱いが上手く刃こぼれさせたことがないだとか、手入れが丁寧だとか、昔の神楽木が来た時の騒動だとか、そんな話ばかりしていた。
「ほら、さっさと部屋に戻って寝ろ、明日早いんだからな?」
「はい、おやすみなさい永倉隊長」
「おう、おやすみ」
「斎藤隊長もおやすみなさい」
「はいはい、おやすみ〜」
そう言って彼は部屋に戻って行った。
新八も流石に眠いのか、欠伸をしながら斎藤も寝ろよ〜と言って部屋に戻っていく。その後ろ姿とは反対に歩き出す。
起きているであろう彼の元に。
「副長」
「入れ」
静かにふすまを開ける。
声の主、土方歳三はどうやら作業中だったようで、横目だけを向け自身に尋ねる。
「こんな深夜になんの用だ」
「起きている副長も大概でしょう」
ろうそくの火が小さく揺れる、光で自身と副長の顔が照らされる。
「明日───死体が発見されるかと」
その言葉に副長は手が止まり、こちらを向いた。
「・・・犯人は」
「神楽木桜花、新八の隊のやつです」
「根拠」
「先程、そいつから血の匂いがしました。負傷ではないのは触って確認済みです、それと、刀の扱いが上手いって話だったのに刀が刃こぼれしていたのと少し触ったらベタついていましたんで、まあ、あとは目、ですかね あれは人を斬った後の目だ。新八は気づいていなかったみたいですが」
「・・・そうか」
一通り報告を聞いたあと、副長はそう呟き、黙った。どうやら何かを考えている様子だった。
「どうします?」
少し、間があった後、彼が口を開く。
「放置でいい」
「そりゃあなんで」
「新撰組には狂い桜が咲いているらしい」
「・・・狂い桜、ですか?一年中桜が咲いているとかいう?」
そう言ってああ、そういう事かと合点が行った。
「つまり、新八が桜守ということですか」
「ああ、桜の木には毒があるとは言うが、その毒が俺達を蝕むこともねぇ。そして、新撰組の血も吸わねえ」
吸うのはあいつに仇なす奴の血だけだ。
ろうそくの火が揺れ、ぽとり、と蝋が溶け落ちた。
そして翌日───斎藤が言った通り、沢山の惨殺死体が見つかったそうだ。
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