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乙姫VS. 第八夜『ダンジョンズ&ドラゴンズ』

「はーい、では皆さんは上空からレッドドラゴンの不意打ちを受けました~」
にこやかに宣言する心導しるべ。
乙姫つづりはGMが振るダイスを見守った。

時間稼ぎはかなわなかった。キャラメイクで時間をとろうと企んだが、キャラメイクそのものが無かった。心導しるべがあらかじめ用意したキャラを選ぶだけだった。3レベルのキャラクターである。ドラゴンの襲撃に耐えられるわけもない。
一行が散開していたのが不幸中の幸いだった。

「ドラゴンのブレスはぁ、はりちゃんに直撃しました!」
「そ、そんなああああああ!!!」
頭を抱えて立ち上がる笑羽良はり。
その体が吹き上がる業火に包まれ、絶叫と共に崩れ落ち、後にはわずかな灰だけが残った。
無残。
しかしこれがTRPGだ。
脱落したプレイヤーには、死あるのみ。

スプスタの三人は森の中に逃げ込んだ。
「はい、みなさん不意打ちチェックです!」
「まかせんしゃい!」
レンジャーの久寝ねねこが手を上げて、1D20を振る。
出目19。
「やった成…」
「判定失敗です。バリスタを装備したトロール5匹の不意打ちを受けました」

梓星ゆえがテーブルを叩いた。
「面白い。我がこそこそ逃げまわるとはな。よかろう。我がギンフレ・メガネ・ケーサンダカイ王子の力を見せてやろう。トロールの眼前に飛び出す」
真顔になる心導しるべ。
「わたしのこと舐めてます?」
「いいや評価している。路傍の石程度にはな」
「なるほど……では、回避判定を。トロールはバリスタをギンフレなんとかに撃ちます。不意打ちなので各2回です。1発でも当たったらミンチです」
「よかろう。見ておけ」
サイコロを握る梓星ゆえ。振る。
出目は20。20。20。20。20。20。20。20。20。そして20。
全弾回避。
「地球のアレクサンダーなる王は、数万の矢が降り注ぐ中を、笑いながら歩いたそうだ。たかが10の矢で我をどうこうしようとはな」
心導しるべの額に青筋が走ったのを、乙姫つづりは見逃さなかった。
すぐに笑顔に戻る心導しるべ。
「梓星ゆえさん。ゲームマスターに対してその態度。あなたはとても勇敢な人ですね」
「いいや我は臆病だ。我は常に自分が勝つことを知って戦場に立つのだから」
火花、散る。
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