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乙姫VS. 第八夜『ダンジョンズ&ドラゴンズ』

Pictoria本社ビル、会議室。
今日も自分の命を賭け台に載せる酔狂人が集っていた。

卓を囲むのは。
絶対王者、梓星ゆえ。
未来人、笑羽良はり。
体がかたい、久寝ねねこ。
体がやわらかいのがとりえ、乙姫つづり。

そして玉座に腰かけるのは……そう、今日王座についているのは梓星ゆえではない。
桃色の髪の麗人、心導しるべ。
彼女が今日のゲームマスターだ。
今日のシ合はTRPG。ダンジョンズ&ドラゴンズで行われる。なお筆者のD&D知識はかなりうろ覚えだ。許せ。なにしろ赤箱時代にちょっと遊んだだけなんでな。

ゲームマスターとは何か。
絶対権力者である。
その命令一つで、プレイヤーの首が跳ぶ。機嫌を損ねれば、国が滅びる。
プレイヤーは常に、GMに媚びへつらいご機嫌を伺い続けなければならない。
心導しるべの左右の金の盆には、山海の珍味が山と積まれ、マネちゃんとマネ太郎が扇であおいでいる。
玉座はぎらつく純金で、数多くの宝石で彩られており、足元では鎖につながれた豹がはべっていた。
一般的なTRPGのプレイ風景である。
最もGMに近い席には、乙姫つづりと笑羽良はりが座っている。
この二人、生き延びるためなら躊躇なくGMの靴を舐める。その生き汚さを見込んでの抜擢である。

「はーい、じゃあ皆さん。今日はD&Dをやりまーす」
にこやかに宣言する心導しるべ。
「シナリオは初心者向けのかるーいのを用意しました。ラッパンアスクっていうんですけどぉ。みなさんなら、簡単にクリアできるとおもいまーす」
心導しるべが、両手をぐーにしてうふふと笑う。
しかし乙姫つづりは、隣の久寝ねねこがびくりと震えたのを見逃さなかった。
「やばいの?ねねこちゃん」
「おひめ。終業時間まで時間を稼ぐよ。それしかないよ」
久寝ねねこが怯えた子ネズミのように言う。
乙姫つづりはうなずいた。
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