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乙姫VS. 第十夜『ドッジボール(中当て)』

新しいボールが梓星ゆえによって投げ込まれる。
所持者は環理よめな。
「じゃあ、そろそろホンキ出しちゃおうか」
「ああ、ボクたちの本気を見せてやろう」
乙姫つづりと久寝ねねこは身構えた。
MOKUROKU最高頭脳の環理よめな、MOKUROKU最高エンゲル係数の眠霊幽。
二人はコンビネーションにおいて真の力を発揮する。プリキュアだとも噂されている。眠霊幽が毎月収入の7割を環理よめなに渡しているのも、そのためだ。
「必殺」
二人の体が輝き始める。
「二人は」
宙に浮かぶ光のハートマーク。
「キュアキュア・ボール!!」
抱き合った胸の間から射出されたボールは、天高く一直線に蒼穹を貫き、そして消えた。

全身が硬直する乙姫つづり。これは急降下爆撃型の投球だ。
人間の最大の死角は頭上。その方向から……来る!!

太陽の中に浮かんだわずかな点を、乙姫つづりは見逃さなかった。
咄嗟のサイドロール。その脇をボールが通り過ぎ、そのまま地面にめりこんだ。
轟音。土煙。
立ち上がると穴が空いていた。深さ不明。後日計ったところでは、地中2kmまで達していた。
これが二人の愛の力。
やばすぎる。

乙姫つづりは考えた。次弾を避けられる保証はない。
どうする?どうする乙姫つづり?
ボールを投げ入れる梓星ゆえ。令夜みりが受け取る。
「そろそろ遊びは終わりにしようか。くらえ、サイドワインダー!!!」
令夜みりの手から超速度の弾丸が発射された。
しかしキュアキュア・ボールほどではない!!
「わっしゃああああああ!!!!」
奇声を上げてのけぞる乙姫つづり。体の柔らかさは自身がある!!
その鼻をわずかにかすめるかどうか、という位置をボールが通過した!
あんまり鼻がない2.5次元生物で良かった!サンキューまさよママ!!

「ほう、避けたか。だがまだまだ」
腕組みをした令夜みり。乙姫つづりは動物的本能で危機を察知し、後ろを向いた。
ボールが空中でUターンしていた。
向かってくる。
ばかな。まさか令夜みりもプリキュア!!?
「ほう、面白い芸を使う」
ボールカゴの上で顔を傾ける梓星ゆえ。
「乙姫つづり、久寝ねねこ。これくらいで倒れてくれるなよ」

ボールが戻って来た!!狙いは……久寝ねねこ!
彼女には乙姫つづりのような軟体能力は無い。万事休すか!!

「1号。行け」
久寝ねねこが冷酷に命じた。
すると控えていたつのねこの一匹が飛び出し、ボールの前に身を投げ出した。
サイドワインダーが命中し、ぼろくずのようにはじけ飛ばされるつのねこ1号。そのまま動かなくなる。
なんと非道な!乙姫つづりは戦慄した!
自分の代わりに、つのねこちゃんをイケニエに差し出すなんて!!
さっき自分が実苗かこにしたことも忘れて、悲しみと怒りがない交ぜになる乙姫つづり。

が、悩んでいる暇はなかった。
サイドワインダーがまたUターンしてくる。狙いは乙姫つづり!

乙姫つづりは外野で一人躊躇っていた癒日いゆに駆け寄った。
「いゆちゃん!助けて!」
「え、でも……仙女は外野だし……つづりちゃんのこと、助けてあげたいけど……」
「そう!ありがとう!」
「え」
癒日いゆをひっつかむ乙姫つづり。そのまま背中に回り込んで、ホールドした。超音速のサイドワインダーが癒日いゆの顔面にめりこんだ。
「ありがとう、いゆちゃん……ありがとう……」
乙姫つづりは力を失った癒日いゆを地面に投げ捨てた。
さすがに減速したサイドワインダーが、今度は眠霊幽の手に納まる。

眠霊幽は自分の夫を見上げた。
「行こう。ボクらの未来のために」
「うん。幽ちゃん……よめな肉体労働はもう飽きちゃったよ」
「必殺!」
「プリティー!」
二人の体が光に包まれる。
そこに乙姫つづりが口を挟んだ。
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