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乙姫VS. 第二夜『だるまさんがころんだ』

あまりの惨状だった。
4人いたのが、わずかの間に2人になった。
乙姫つづりは改めて恐怖した。震えが許されるものなら震えていただろう。
しかし王者はわずかの動きも見逃さぬ。わずかでも動けば-死だ。
心を鎮める乙姫つづり。
だるまさんがころんだ、を考案した達磨大師は、9年間岩に向かって耐え、この遊びを考え続けた。
耐えろ。耐えるのだ。
梓星ゆえとて同じ生き物。必ず隙が生じるはず!
王位継承者はゆっくりと木に向き直った。

「だるまさんがころんだ」
今度はあっさりと振り向く梓星ゆえ。
乙姫つづり、久寝ねねこ共に動かず。
またしのいだ。
次に。行く。
心の爆発力を体内で練り上げる乙姫つづり。
しかし梓星ゆえは見透かしたかのように、また王者の笑みを浮かべた。

「二人とも、もしかして……」
嬲るように舌を動かす梓星ゆえ。
「まだチャンスがあるとでも思ってるんじゃないよなぁ」
視線は動かない。
挑戦者二人を捉えたままだ。
そしてそのまま10秒が過ぎ、30秒が過ぎ、1分が過ぎた。

まさか。
最悪の可能性が乙姫つづりの脳裏をよぎる。
いやそれは可能性ではなく現実だった。
梓星ゆえは、もう、後ろを向かないつもりだ!!!!
このまま二人が力尽きるまで待つ!!
オニであると同時に、審判でもある梓星ゆえだからこそ可能な、絶対者による包囲戦だ!!
乙姫つづりは、愕然としていた。
この王位継承者、やはり王。勝つためにあらゆる手を厭(いと)わぬ。
ここか?ここまでか?ここまでが己の限界なのか。
自分の覇道はここで終わるのか?

助けは意外な場所からやってきた。

久寝ねねこ。

2歩隣にいるスプスタの友人が、後ろ手にスマホを操作していた。
さきほど梓星ゆえが前を向いた一瞬の間に、手を後ろに回したのだ。
そしてこの、だるまさんがころんだ。オニに動きを見られれば終わり。
裏を返せば見えなければ何をしても構わぬのが絶対のルールである。
挑戦者に許された唯一の自由空間。それが背面だ。
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