乙姫VS. 第二夜『だるまさんがころんだ』
「だーるーまーさー」
ことさらゆっくりと文句を口にする梓星ゆえ。
再び緊張の時が訪れる。
行くか。行かぬか。行くか。行かぬか。
この遅さならば行ける。そのような気がする。
しかしあまりにもスロー。これは罠ではないか。
乙姫つづりの脳内で疑心暗鬼という名の思考の坩堝が渦巻く。
らちが明かぬ。行くか。
決心を固めたその時だった。
「うわああああああああああああ!!!!!」
ザレス山田!!
緊張と重圧に耐えきれなくなったザレスが、梓星ゆえに向かって突進した。あまりに無謀な賭けであった。猟師の囲みに突っ込む猪のようだ。
しかし乙姫つづりは気づいた。この向こう見ずさが、この場において血路を開くかもしれぬ。
梓星ゆえの肩にザレスの手が届くかもしれぬ。
そうなれば勝者はザレスだ。許すわけにはいかぬ。
王位継承者までの距離は、まだ乙姫つづりがリードしている。
ザレスは自らの命を賭けの台に乗せた。ここは自分も乗らねばならぬ。
乙姫つづりは瞬時に決断し、右足を動かし……。
「んがころんだ!!!」
梓星ゆえは振り向かなかった。
のけ反って上下逆の顔をこちらに向けた。狩りを楽しむ王者の、歓喜の笑みを浮かべて。それに要した時間、わずか1漠(ばく)秒(0.000000000001秒)。
王位継承者の口の端が歪む。
「ザレス山田、動いた!」
「あばばばばばーーーーー!!!!!」
白目をむいて倒れるザレス。そのまま気を失った。口から泡を吹き、痙攣している。ズボンがぬれていた。恐怖のあまり気絶したまま失禁したのだ。
「やだああああああ!!!!」
耐えきれずに頭を抱えて悲鳴を上げるマネ太郎。
「マネ太郎、動いた!」
糸が切れたように崩れ落ちるマネ太郎。その生死は確認できない。
ことさらゆっくりと文句を口にする梓星ゆえ。
再び緊張の時が訪れる。
行くか。行かぬか。行くか。行かぬか。
この遅さならば行ける。そのような気がする。
しかしあまりにもスロー。これは罠ではないか。
乙姫つづりの脳内で疑心暗鬼という名の思考の坩堝が渦巻く。
らちが明かぬ。行くか。
決心を固めたその時だった。
「うわああああああああああああ!!!!!」
ザレス山田!!
緊張と重圧に耐えきれなくなったザレスが、梓星ゆえに向かって突進した。あまりに無謀な賭けであった。猟師の囲みに突っ込む猪のようだ。
しかし乙姫つづりは気づいた。この向こう見ずさが、この場において血路を開くかもしれぬ。
梓星ゆえの肩にザレスの手が届くかもしれぬ。
そうなれば勝者はザレスだ。許すわけにはいかぬ。
王位継承者までの距離は、まだ乙姫つづりがリードしている。
ザレスは自らの命を賭けの台に乗せた。ここは自分も乗らねばならぬ。
乙姫つづりは瞬時に決断し、右足を動かし……。
「んがころんだ!!!」
梓星ゆえは振り向かなかった。
のけ反って上下逆の顔をこちらに向けた。狩りを楽しむ王者の、歓喜の笑みを浮かべて。それに要した時間、わずか1漠(ばく)秒(0.000000000001秒)。
王位継承者の口の端が歪む。
「ザレス山田、動いた!」
「あばばばばばーーーーー!!!!!」
白目をむいて倒れるザレス。そのまま気を失った。口から泡を吹き、痙攣している。ズボンがぬれていた。恐怖のあまり気絶したまま失禁したのだ。
「やだああああああ!!!!」
耐えきれずに頭を抱えて悲鳴を上げるマネ太郎。
「マネ太郎、動いた!」
糸が切れたように崩れ落ちるマネ太郎。その生死は確認できない。