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乙姫VS. 第一夜『じゃんけん』

「あーいこーで」
どうする?どうする?
乙姫つづりの脳内は狂瀾怒濤(きょうらんどとう)のさまだった。
やはりパー?いや、チョキ。むしろ意表を突いてグー!?もう、頭がフットーしそうだった。

そしてその時が訪れた-
九十九里のなぎささえ静まり返り、月は雲の向こうに身を隠した。
「しょ!!」
久寝ねねこ。グー。これは何者をも打ち砕く、という久寝ねねこの決意の表れ。ではなかった。
恐怖と緊張のあまり手が硬直し、指を立てられなかったのである。
ともあれグー。ジャッジの梓星ゆえはそうみなした。
対する乙姫つづり。手は

"キツネ"

会場の皆があっと驚き硬直した。神々は駒を動かす手を止め、時も歯車を回すことを忘れた。
キツネ。
これが乙姫つづりの回答であった。
キツネは紙を噛み破る。石を咥えて運ぶ。そしてハサミでキツネを狩ることはできない。どこにも隙がなかった。まさに無敵。最強の一手。ここに極まった。
ありがとう。姫はこれを授けた天に感謝した。その頬を涙が伝う。
ありがとう。乙姫つづりは全てに感謝した。自分を生んでくれた両親に、
つい最近仲直りした弟に、孫に甘いじいちゃんばあちゃんに、マネちゃんに、ザレスに、出番の無いアケド社長に、そしてこの世界そのものに。
ありがとう。乙姫つづり伝説、ここに完結。


「つづりんの負け」
梓星ゆえが宣言してため息をついた。
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