乙姫VS. 第六夜『山手線ゲーム』
現在の手番は乙姫つづり。
「つづりちゃん? つづりちゃんは全部の国おぼえてる?」
「え?」
「言ってあげようか。アイスランド、アイルランド、アゼルバイジャン、アフガニスタン、アメリカ、アルストツカ……」
なんだ?
乙姫つづりには、なぜ環理よめなが国名を並べていくのかわからなかった。手番でない者の発言は自由。国名を言ったところで勝負への影響はない。
「ルワンダ、レソト、レバノン、ロシア」
193か国の暗誦が終わった。
にこりと笑う環理よめな。
「ごせいちょーありがとうございました。つづりちゃん、どの国が今までに出たかおぼえてる?」
やられた!
乙姫つづりは動揺のあまり椅子から転がり落ちた。
山手線ゲーム、重複は即敗北。
どの国が言われたかを記憶していることは、193か国を記憶しているよりも重要だ。それを環理よめなは、声で上書きした!
久寝ねねこに助け起こされ、席に戻る乙姫つづり。もう脳みそが沸騰しそうだった。
「おひめの番だよ。早く言って」
うながす久寝ねねこ。二人の友情を忘れたのか。
「え、ええええっと、フィンランド」
無限に思える数秒。
タブレットを確認した久寝ねねこがOKサインを出した。
ちっと舌打ちする環理よめな。
今は運が味方した。
「クロアチア」
椅子にふんぞり返り、王者の微笑を浮かべたままの王位継承者。
当然にようにOK。
環理よめなの手番。
環理よめなは自分に言い聞かせる。大丈夫。まだチャンスはある。
乙姫つづりが脱落するのは時間の問題だ……。
あ。奈落に突き落とされたように、全身から力が抜けた。次で脱落すれば、自分の負けが確定する。
さっきの手番で、残りの国の数が偶数になってしまった。
次で乙姫つづりが脱落すれば、最後の手番が回ってくるのはやはり王位継承者!
どうすればいい!?
MOKUROKU最高の頭脳がオーバーヒート寸前で稼働する。
乙姫つづりに、既に出た国名を教えるか!?否。それでは彼女は確実に最後まで残ってしまう。
乙姫つづりに嘘を教える?だめだ。王位継承者はそれを妨害できるのだ。
梓星ゆえに一服盛るか!?否。以前、致死量10倍の青酸カリを混ぜたコーラを渡したら、王位継承者は美味いと言って飲み干したではないか!?
どうすれば?どうすれば?
「おい、環理よめな」
王位継承者が舌の上で獲物をなぶるように言った。
「下の階では地球のワニとかいう動物を飼っている。聞くところによると、とても獰猛だそうだ。腹も空かせているぞ」
くっくと笑う梓星ゆえ。
環理よめなは頭を抱えて泣き出した。
「よめなちゃん。手番だよ」
久寝ねねこが促す。
錯乱した環理よめなに、もはや正常な判断力は無かった。
「ツ、ツ、ツバル……」
久寝ねねこが神妙に首を横に振る。重複だ。
「いやああああああ!!!!」
足元に穴が開き、奈落へ落ちていく環理よめな。続いて激しい水の音。
穴が閉じた。
「さあ、つづりん」
身を乗り出す絶対王者。
「ゲームを続けよう」
「つづりちゃん? つづりちゃんは全部の国おぼえてる?」
「え?」
「言ってあげようか。アイスランド、アイルランド、アゼルバイジャン、アフガニスタン、アメリカ、アルストツカ……」
なんだ?
乙姫つづりには、なぜ環理よめなが国名を並べていくのかわからなかった。手番でない者の発言は自由。国名を言ったところで勝負への影響はない。
「ルワンダ、レソト、レバノン、ロシア」
193か国の暗誦が終わった。
にこりと笑う環理よめな。
「ごせいちょーありがとうございました。つづりちゃん、どの国が今までに出たかおぼえてる?」
やられた!
乙姫つづりは動揺のあまり椅子から転がり落ちた。
山手線ゲーム、重複は即敗北。
どの国が言われたかを記憶していることは、193か国を記憶しているよりも重要だ。それを環理よめなは、声で上書きした!
久寝ねねこに助け起こされ、席に戻る乙姫つづり。もう脳みそが沸騰しそうだった。
「おひめの番だよ。早く言って」
うながす久寝ねねこ。二人の友情を忘れたのか。
「え、ええええっと、フィンランド」
無限に思える数秒。
タブレットを確認した久寝ねねこがOKサインを出した。
ちっと舌打ちする環理よめな。
今は運が味方した。
「クロアチア」
椅子にふんぞり返り、王者の微笑を浮かべたままの王位継承者。
当然にようにOK。
環理よめなの手番。
環理よめなは自分に言い聞かせる。大丈夫。まだチャンスはある。
乙姫つづりが脱落するのは時間の問題だ……。
あ。奈落に突き落とされたように、全身から力が抜けた。次で脱落すれば、自分の負けが確定する。
さっきの手番で、残りの国の数が偶数になってしまった。
次で乙姫つづりが脱落すれば、最後の手番が回ってくるのはやはり王位継承者!
どうすればいい!?
MOKUROKU最高の頭脳がオーバーヒート寸前で稼働する。
乙姫つづりに、既に出た国名を教えるか!?否。それでは彼女は確実に最後まで残ってしまう。
乙姫つづりに嘘を教える?だめだ。王位継承者はそれを妨害できるのだ。
梓星ゆえに一服盛るか!?否。以前、致死量10倍の青酸カリを混ぜたコーラを渡したら、王位継承者は美味いと言って飲み干したではないか!?
どうすれば?どうすれば?
「おい、環理よめな」
王位継承者が舌の上で獲物をなぶるように言った。
「下の階では地球のワニとかいう動物を飼っている。聞くところによると、とても獰猛だそうだ。腹も空かせているぞ」
くっくと笑う梓星ゆえ。
環理よめなは頭を抱えて泣き出した。
「よめなちゃん。手番だよ」
久寝ねねこが促す。
錯乱した環理よめなに、もはや正常な判断力は無かった。
「ツ、ツ、ツバル……」
久寝ねねこが神妙に首を横に振る。重複だ。
「いやああああああ!!!!」
足元に穴が開き、奈落へ落ちていく環理よめな。続いて激しい水の音。
穴が閉じた。
「さあ、つづりん」
身を乗り出す絶対王者。
「ゲームを続けよう」