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乙姫VS. 第六夜『山手線ゲーム』

「では、我の番だな」
テーブルの上で手を組む王位継承者。
「日本」
初手、日本。オーソドックスだが悪くない、王道の型だ。
さらにしかけて来るのでは、と警戒していた乙姫つづりだったが、ここは一安心。
次は環理よめな。
彼女とシ合うのは、はじめてだった。
噂によるとこの界隈で最も若い勝負師と聞く。お手並み拝見だ。

「アンティグア・バーブーダ」
環理よめな、初手アンティグア・バーブーダ。
乙姫つづりは目を剥いた。
「あれあれあれ?よめなまた何かやっちゃいました~?もしかしてつづりちゃん、安全牌だと思ってたとか~?」
メスガキムーブで煽ってくる環理よめな。
やってくれる。
苦笑いする乙姫つづり。すぐに平常心を取り戻した。
この緊張感。これだからシ合はやめられない。

審判の久寝ねねこが、乙姫つづりに手番をうながす。
乙姫つづり、初手。
「ラオス」
乙姫つづりはチキンだった。


二巡目、三巡目、シ合は続く。
オーストリア、ラトビア、ツバル、モルドバ……。
様々な国が赤子の手で弄ばれる玩具のように消費されていく。
そして15巡目。いまだ三人、譲らず。

が、環理よめなはここに来て、何かがおかしいと気づいた。王位継承者である。彼女は初手で未来人を脱落させた。しかしその後は、全く動いてこない。ただゲームをするに甘んじている。このままでは、勝つのは……。

環理よめなの現役女子大生頭脳に電流走る。
梓星ゆえは、初手で笑羽良はりを脱落させる必要があったのだ。
なぜなら国連の加盟国は193。4人が最後まで生き残った場合、最後の手番は笑羽良はり。彼女の勝利となる。
これが3人に減れば、最後の手番は梓星ゆえ。
あの未来人が脱落した時点で、梓星ゆえの勝利は決まっていたのだ。

悪魔か。
このエルムアウリー人。

ならばどうする?環理よめなは頭脳をフル回転させた。
このまま続けば敗北は必定。ならば自分以外の誰かを能動的に脱落させねばならない。環理よめなは、ようやく理解した。これは記憶ではなく心を摘む戦い!!
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