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乙姫VS. 第六夜『山手線ゲーム』

第一巡目
サイコロの結果、笑羽良はり→梓星ゆえ→環理よめな→乙姫つづりの順となった。

さて。
様子を伺う乙姫つづり。
山手線ゲームにおいて、初手はゲームの流れを決定づける重大な意味を持つ。日本やアメリカだった場合、王道といえる緩やかな出だしとなる。対してオマーンやエクアドルが飛び出した場合、荒れた場となること必定。
一同、固唾をのんで笑羽良はりを待つ。

乙姫つづりとて今日のシ合、勝算なしに臨んだわけではない。
暗記は得意だ。大学も丸暗記で卒業した。うそ、まだしてない。
昨日の夜から一夜漬けでユナイトをやり、朝からあわてて全ての国名を記憶した。序盤はヨーロッパやアジアのメジャー国で軽く当たり、中盤はアフリカをがっつり攻める。エスワティニ王国、アンティグア・バーブーダあたりは切り札だ。

「じゃあ、笑羽良は……」
「待て、未来人」
梓星ゆえが横やりをいれる。
「我としたことが一つ思い出せない国の名があってな……あれはなんという国だったかな? たしか、ラオスとミャンマーの間にある国だ」
なんだ?戸惑う乙姫つづり。この王位継承者は何をしている?
「名前がシから始まる……」
「シャム王国!」
元気よく答える笑羽良はり。
ただでさえ静まり返った地下13階の部屋が、南極のように凍り付く。
「えっ…?えっ?」
慌てる笑羽良はり。何がおきた?
自分の記憶に間違いはないはず。勝率100%。なのになぜ、こんな空気に?
「未来人」
梓星ゆえが研いだ剣のような目で言う。
「もっと歴史の勉強をしておくべきだったな。未来人のお前にとっては100年程度は誤差かもしれんが、シャム王国は国際連合ではなく国際連盟当時の国号だ」
「ばっ…」
笑羽良はりに抗議の時間は与えられなかった。
「うわあああああああ!!!!」
足元に穴が開き、未来人は奈落の底へ落ちて言った。その後、激しい水音。
穴が音もなく閉じる。
「くっくっく、一瞬の油断が命取り。これだからシ合はやめられんな。さあ、ゲームを続けよう」
梓星ゆえが笑った。環理よめなも。

乙姫つづりは恐怖していた。本命の一人であった笑羽良はりが、こうもあっさりと足元をすくわれた。
今日の戦い。いつになくレベルが高い。
自分は勝てるのだろうか? いや、勝つ。それしかない。
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