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乙姫VS. 第五夜『ババぬき』

Pictoria本社ビル、地下13階ではじまったシ合『ババぬき』。
円卓を囲み、カードを手に睨みあう乙姫つづり、久寝ねねこ、癒日いゆ。
そして椅子にふんぞり返って眺める梓星ゆえ。
『ババぬき』は運命力の戦いだ。
梓星ゆえが最初の手札確認フェイズで全捨てし、一位抜けしたのは当然と言えた。

残るは三人。
いずれ劣らぬ猛者である。この面子では一瞬の油断が命取り。
互いに様子を伺い、動くことができない。

「ね、みんな怖い顔しないでよ。仙女たのしくゲームしたいよっ!」
突然はしゃぎだした癒日いゆ。
「そうだね。ただのゲームだもんね」にっこりと応じる乙姫つづり。
「じゃあ、一枚引くね。えーい……ん~、カードが合わないよう!」
きゃっきゃと笑う。
いま癒日いゆはジョーカーを引いた。それをおくびにも出さない。
次の番の久寝ねねこを油断させるのが狙いか。
姑息な手を。乙姫つづりは「えへっ!」と喜んでみせた。
ふと三人が真顔になる。
空気は大型冷凍庫の中のようだ。
「はいっ、次はねねこちゃんが引く番だよ!YOYOYO!」
笑顔に戻り陽気に手札を差し出す仙女。
「んー。ねねこはねぇ。これをひいちゃお~っと」背景に花が咲きそうな微笑みで、仙女の手札から一枚引く久寝ねねこ。
顔にぴくりと青筋が走る。
引いたな。乙姫つづりは見切った。
「よかったー。ババひいちゃうかと思ったもんね!」
「そんなぁ。仙女は持ってないよ~」
「うふふ、どうかなぁ」
表面上だけ和気あいあいとしたゲーム。
しかしこれはまさしくシ合だった。

命を賭けたゲーム、シ合。
正気では参加できない。実際、参加者は正気ではなかった。
Vtuberとはそういう人種だ。
毎日、己の魂をチップとして台に乗せる。それに耐えられる者だけが、配信画面で輝けるのだ。

2枚。また2枚とカードが捨てられていく。
残りは乙姫つづり2枚。癒日いゆ1枚。久寝ねねこ2枚。最終局面である。
ここから先は一歩踏み外した者が、奈落へと落ちることになる。
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