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乙姫VS. 第一夜『じゃんけん』

「あーいこーでしょ!!」
乙姫つづりの第2手。それは意外にもチョキ!
チョキはじゃんけんにおける最強の手の一つ。空気力学的に最速を誇る、電光石火の一撃だ!
さらには直前に両者が出したグーにあえて負ける手を出すことで、心理的虚を突く毒蛇のごとき狡知の一手であった。
友でありスリープリンセスターのメンバーである久寝ねねこ相手にチョキを出すとは、もはやなりふり構わず首をとりにいったのだ!
乙姫つづりの覇道を阻む者はもう誰もいない。つづりは口の端を歪めた。
そして、それを見た。
対戦相手。久寝ねねこの第2手。なんの運命のいたずらか。
久寝ねねこの手からは、2本の指が伸びていた。

チョキ。

第2手、まさかのあいこ。
主が光あれと言われてから今日まで、こんなことが一度でもあっただろうか?いや、ない。
観覧席のザレス山田が、気絶したまま痙攣し口から泡を吹いている。
マネちゃんは恐怖のあまり震え号泣していた。さしもの梓星ゆえも、わずかに顔をしかめた。
そんな。ばかな。あり得ない。狼狽した乙姫つづりと久寝ねねこは、梓星ゆえに抗議した。裁定が誤っているのではないか?まさかチョキが引き分けるなどと!
しかし梓星ゆえのジャッジは覆らない。天秤はまだ傾いていない。
勝負はまだ決まっていないのだ。


乙姫つづりは動揺を隠しきれなかった。
どうする?次の一手は?グーもチョキも防がれた。
ならば残るはパー。パーを出すのが良いように思える。
敵の拳撃を包み込み無力化するパー。その圧倒的な力は疑いようがない。
しかし。しかしだ。裏をかく。そう、ここで裏をかいて久寝ねねこがチョキを出す可能性は0ではない。
二度続けて同じチョキを出すだけの胆力が久寝ねねこにあるか。わからなかった。なぜなら乙姫つづりと久寝ねねこがシ合うのは今日がはじめて。
力量も戦闘スタイルも、全てが謎である。
どうする?どうする?
躊躇う乙姫つづり。久寝ねねこも同様だ。
ふと、ジャッジの梓星ゆえが手を上げた。笑みを二人に向ける。目は笑わず口だけ微笑む王族スマイル。そして冷酷にも合図の手は振り下ろされた。処刑人の斧のように。
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