乙姫VS. 第四夜『砂崩し』
梓星ゆえの余裕の表情がはじめて崩れた。
出血多量で朦朧としていた久寝ねねこの目が、輝きを取り戻した。
麗志坂えす。あの女、自分の勝利よりも、梓星ゆえに敗北の屈辱を味わわせることを優先した!
久寝ねねこに最後の安全砂をとらせ、勝利させるつもりだ!
睨む梓星ゆえ。いつもの久寝ねねこであれば、布団に飛び込んで震えているとこである。
しかし、今だけは話が違った。欲望が恐怖に打ち勝った。
黄金ルールが、梓星ゆえ自身に牙をむいたのだ。
手を伸ばし、麗志坂えすが残した砂を手繰り寄せる久寝ねねこ。
手番終了。
三人の注目が梓星ゆえに集まる。
その顔は焦燥に歪み、目は爛々と輝いていた。
「この、この、梓星ゆえが、敗北するなどということが……」
憤る梓星ゆえ。
その表情が、変わった。いつもの王者の笑みへと。
「本当にあるとでも思ったのか?」
梓星ゆえが動いた。パンッと何かがはじける音がした。
何が起きたのか目で捉えられた者はいなかった。
ただ乙姫つづりたちが見たのは、梓星ゆえが剣を鞘に戻したところ、その左手から砂がこぼれた事実であった。
「これが王者のゲームだ」
ばかな。驚愕する三人。
梓星ゆえも握り込みをしたのか?
あり得ない。なぜなら彼女は一巡目で数粒しか砂をとっていない。
白い歯を見せる梓星ゆえ。
「さあ。次は君だ。乙姫つづり」
後日、乙姫つづりが知った真相はこうだった。
梓星ゆえは砂山に触れてさえいなかった。
この日のゲームで使われた棒は、石でできていた。梓星ゆえは剣で棒を削り、寸断し、砂を作り上げたのだ。
あまりにも堂々と行われたルール違反。しかし誰も指摘できなかった。
棒が短くなっていることに気づいた者もいなかった。
いかさまもバレなければセーフなのだ。
出血多量で朦朧としていた久寝ねねこの目が、輝きを取り戻した。
麗志坂えす。あの女、自分の勝利よりも、梓星ゆえに敗北の屈辱を味わわせることを優先した!
久寝ねねこに最後の安全砂をとらせ、勝利させるつもりだ!
睨む梓星ゆえ。いつもの久寝ねねこであれば、布団に飛び込んで震えているとこである。
しかし、今だけは話が違った。欲望が恐怖に打ち勝った。
黄金ルールが、梓星ゆえ自身に牙をむいたのだ。
手を伸ばし、麗志坂えすが残した砂を手繰り寄せる久寝ねねこ。
手番終了。
三人の注目が梓星ゆえに集まる。
その顔は焦燥に歪み、目は爛々と輝いていた。
「この、この、梓星ゆえが、敗北するなどということが……」
憤る梓星ゆえ。
その表情が、変わった。いつもの王者の笑みへと。
「本当にあるとでも思ったのか?」
梓星ゆえが動いた。パンッと何かがはじける音がした。
何が起きたのか目で捉えられた者はいなかった。
ただ乙姫つづりたちが見たのは、梓星ゆえが剣を鞘に戻したところ、その左手から砂がこぼれた事実であった。
「これが王者のゲームだ」
ばかな。驚愕する三人。
梓星ゆえも握り込みをしたのか?
あり得ない。なぜなら彼女は一巡目で数粒しか砂をとっていない。
白い歯を見せる梓星ゆえ。
「さあ。次は君だ。乙姫つづり」
後日、乙姫つづりが知った真相はこうだった。
梓星ゆえは砂山に触れてさえいなかった。
この日のゲームで使われた棒は、石でできていた。梓星ゆえは剣で棒を削り、寸断し、砂を作り上げたのだ。
あまりにも堂々と行われたルール違反。しかし誰も指摘できなかった。
棒が短くなっていることに気づいた者もいなかった。
いかさまもバレなければセーフなのだ。