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乙姫VS. 第四夜『砂崩し』

乙姫つづりの前に円卓がある。
白い。木製。特筆すべきところはない。
立って身を乗り出せば、反対側に座った相手に楽に手が届く。
上に砂の山がある。
突き立った石の棒。
これが今日ここに集う者の運命を決める。

基本的なルールは単純。
①順番に山から砂をとる。
②棒を倒した者は負け。
③倒した者の前の番の者が勝者。

その合意の元に、命を賭け台に乗せる酔狂人が、心を削り合うのだ。
乙姫つづりが部屋に入ったとき、既に円卓の一角には愛らしい少女が一人腰掛けていた。
頭にはツノの生えたアイマスク。
久寝ねねこ。
時に敵として、時に戦友として、何度もシ合った好敵手だ。
乙姫つづりは対面の椅子に腰かけた。
互いに無言だった。
これから始まるのは単なる遊戯。
だが単なる遊びで終わらないことを、理解していない間抜けはここにはいない。
壁掛け時計の針が時を刻む。

「おひめ」
「ん?」
「遅いね」
「うん」
交わされた他愛のない会話。
もちろん友好を深めるためではない。
二人は待っていた。
なぜなら今日の戦いは二人で行うわけではないからだ。

「あら、ごきげんよう。ねねこちゃん。つづりちゃん」
部屋の扉を抜けて入って来たのは、ブラウンのロングヘアーの落ち着いた雰囲気の女性。毛皮のコートを羽織った、どこから見ても良家の御令嬢といった風の、華やかな少女だった。
手に持った鞭と三本の鎖がなければ。
鎖は首輪につながっていた。少女の背後に従う、ブリーフ一丁の成人男性三名の首輪に。
顔には紙が貼りつけられ『犬』とだけ書かれている。
そうだ。あの三人は人間では無い。畜生に落とされたのだ。
この女。目録会系麗志坂組お嬢。

麗志坂えす

の手によって。
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