乙姫VS. 第三夜『かくれんぼ』
久寝ねねこは危険を冒すつもりはさらさらなかった。
勝ちの決まっていないゲームは、しないに限る。
『じゃんけん』『だるまさんがころんだ』を通して学んだことである。
久寝ねねこは快適な部屋でベッドに寝転がり、ゲームをやりながら、
15分が経過するのを待っていた。
残り5分。もう自分の勝ちは明らかだった。
自分はここでジュースを飲みながら、待てばいい。
パーフェクト・ビクトリー。もはやそれは確定事項だった。
唯一の問題は、地上の様子が見えないので、乙姫つづりたちがどんな醜態をみせているか観察できないことだ。
そう。この快適な部屋は地下にある。
かくれんぼの日に備えて、半年をかけて工事させたものだ。
渋谷区の公園に勝手に作るわけにもいかなかったので、公園をまるごと買収した。
ここは公園ではない。皆が勘違いしているが、ここは半年前から久寝家の私園なのだ。
これが王のゲームだ。
久寝ねねこはにやりと笑った。
乙姫つづりも、社長も、梓星ゆえでさえ自分の手のひらの上で踊っているに過ぎない。
さて、一つあの生き汚い乙姫つづりがどんなに無様にあがいているか聞いてみることにするか。
乙姫つづりのスマホに電話する。すぐに返事があった。
『ねねこちゃん?まだ生きてる?いまどこ?』
「安全なところだよぉ。おひめは大丈夫?」
『今はまだなんとか……でも、いつゆえちゃんが来るか』
「ほかの三人は…?って、ちょっと待って」
外で物音がした。まさか梓星ゆえ?
いや、そんなはずがない。
この部屋に続く竪穴の入り口は、マンホールに偽装されている。わざわざ年代物のマンホールを持ってきて設置した。疑われる要素は無い。
それに……億が一発見されても、この部屋の扉は厚さ20mmのチタン合金。突破される可能性はない。
ずどん!!
そんな漫画のような音がして、久寝ねねこ自慢の扉は部屋の内側に吹き飛んだ。背後に正拳突きの姿勢で立つは梓星ゆえ。
「電磁波を発信したのは、失敗だったなぁ。ねねこ」
「クァwセdrftgyフジコlp」
古のネット民のような悲鳴を奇声を上げ、泡を吹いて卒倒する久寝ねねこ。
「ねねこ、みっけ」
薄れ行く意識のなかで、久寝ねねこは真の王のゲームというものを理解した。
ねねこに歩み寄る梓星ゆえ。ベッドからスマホを摘まみ上げる。
『ねねこちゃん!!ねねこちゃん!!どうしたの!!?』
通話相手の乙姫つづりの声。
「"なんでもないよぉ。ちょっと歯が痛んだだけだべ"」
『そう?』
「"それよりおひめは隠れ場所みつけなのぉ"」
『とりあえず暫定的な場所だけど……』
「"ふぅん。いまどこぉ?"」
乙姫つづりが通話を切った。
ちっ。気づかれたか。
梓星ゆえはスマホを落とし、踏み潰すと、コートを翻して地下室を後にした。
勝ちの決まっていないゲームは、しないに限る。
『じゃんけん』『だるまさんがころんだ』を通して学んだことである。
久寝ねねこは快適な部屋でベッドに寝転がり、ゲームをやりながら、
15分が経過するのを待っていた。
残り5分。もう自分の勝ちは明らかだった。
自分はここでジュースを飲みながら、待てばいい。
パーフェクト・ビクトリー。もはやそれは確定事項だった。
唯一の問題は、地上の様子が見えないので、乙姫つづりたちがどんな醜態をみせているか観察できないことだ。
そう。この快適な部屋は地下にある。
かくれんぼの日に備えて、半年をかけて工事させたものだ。
渋谷区の公園に勝手に作るわけにもいかなかったので、公園をまるごと買収した。
ここは公園ではない。皆が勘違いしているが、ここは半年前から久寝家の私園なのだ。
これが王のゲームだ。
久寝ねねこはにやりと笑った。
乙姫つづりも、社長も、梓星ゆえでさえ自分の手のひらの上で踊っているに過ぎない。
さて、一つあの生き汚い乙姫つづりがどんなに無様にあがいているか聞いてみることにするか。
乙姫つづりのスマホに電話する。すぐに返事があった。
『ねねこちゃん?まだ生きてる?いまどこ?』
「安全なところだよぉ。おひめは大丈夫?」
『今はまだなんとか……でも、いつゆえちゃんが来るか』
「ほかの三人は…?って、ちょっと待って」
外で物音がした。まさか梓星ゆえ?
いや、そんなはずがない。
この部屋に続く竪穴の入り口は、マンホールに偽装されている。わざわざ年代物のマンホールを持ってきて設置した。疑われる要素は無い。
それに……億が一発見されても、この部屋の扉は厚さ20mmのチタン合金。突破される可能性はない。
ずどん!!
そんな漫画のような音がして、久寝ねねこ自慢の扉は部屋の内側に吹き飛んだ。背後に正拳突きの姿勢で立つは梓星ゆえ。
「電磁波を発信したのは、失敗だったなぁ。ねねこ」
「クァwセdrftgyフジコlp」
古のネット民のような悲鳴を奇声を上げ、泡を吹いて卒倒する久寝ねねこ。
「ねねこ、みっけ」
薄れ行く意識のなかで、久寝ねねこは真の王のゲームというものを理解した。
ねねこに歩み寄る梓星ゆえ。ベッドからスマホを摘まみ上げる。
『ねねこちゃん!!ねねこちゃん!!どうしたの!!?』
通話相手の乙姫つづりの声。
「"なんでもないよぉ。ちょっと歯が痛んだだけだべ"」
『そう?』
「"それよりおひめは隠れ場所みつけなのぉ"」
『とりあえず暫定的な場所だけど……』
「"ふぅん。いまどこぉ?"」
乙姫つづりが通話を切った。
ちっ。気づかれたか。
梓星ゆえはスマホを落とし、踏み潰すと、コートを翻して地下室を後にした。