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乙姫VS. 第一夜『じゃんけん』

「さーいしょーはぐー!じゃーんけーんぽん!」

乙姫つづりは決然と拳を握りしめ、渾身のグーを繰り出した。必殺の一撃だ。
グーはじゃんけんにおける最強の手の一つ。
グーはチョキを破る。もし相手もグーを出してくれば引き分けとなるが、その確率は半分以下だ。そして万が一、そう万が一にパーを出されれば負けとなる。しかし可能性わずか1/3。無視していい数字だ。
グーが最強たるゆえんである。
勝利を確信した乙姫つづりは、内心ほくそ笑んだ。己の勝ちは揺るぎない。

が、しかし。時に運命の女神は情けを知らぬ気まぐれを起こす。

対戦相手、久寝ねねこの出した手。それもまたグー!
両者より放たれた金色の闘気は、うねり絡まり合い、そして別れた。
グーとグー。互角である。
観覧席に動揺が走る。このような戦いになると予想していた者は誰一人いなかった。
頭をおさえ、そのままふらふらと崩れ落ちるプロデューサーのザレス山田。場の緊迫に耐えられなかったのだ。マネちゃんが平静さを失い立ち上がった。この試合、いやシ合が続くのを止めようとした。
このままでは最悪、両者倒れる。合図を送るマネちゃん。
しかし審判の梓星ゆえは悲しげに首を横に振る。運命はもう定まっているのだ。どちらかが勝利し、どちらかが敗北すると。
両者。構えて。いかづちのごとき静けさを引き裂き、冷然と宣言する梓星ゆえ。
その言葉は運命に翻弄される乙姫つづりと久寝ねねこの胸に、新たな闘志を灯した。

手を握り締める乙姫つづり。生、あるいは死。次の一手で決まる。
乙姫つづりは笑った。勝ちたい。ではない。勝つ。でもない。既に勝っている。勝ちは決まっている。久寝ねねことの勝負では、その気概が必要だった。見ればねねこも笑っている。
両者構える。

「あーいこーでしょ!!」
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