おとひめつづりのだいぼうけん
「あの、ダ女神ぃぃぃ……」
乙姫つづりは、照り付ける太陽のもと、重たい足を引きずりながら砂の上を歩き続けていた。
目の前に広がる砂の大地。右を見ても砂。左を見ても砂。後ろを見ても砂。
東西南北、砂砂砂砂砂。
そして暑い!!!
砂漠だ!
あの女神は、砂漠のド真ん中にヒメを転移させやがったのだ。
確かにダイナミックな自然環境だ。でももうたっぷり堪能した。
それでどっちに行けば、ここから抜け出せるの!?
「ステータスオープン!」
ヒメはステータスを開いた。(多くの異世界で当然のごとく実装されている機能である)
『乙姫つづり 勇者
状態:おつむ以外は正常
LV 999
HP 9997/9999
MP 9999/9999』
もう何時間と歩き続けているが、体力はほとんど減っていない。さすがレベルカンスト。
疲労は感じるけど、状態は正常。
やっぱり能力をもらっておいて正解だった。さもなければここで骨になるところだった。
とんでもない女神だ。
「のどかわいたー…おなかへったー…」
目下のところ問題なのは、空腹と、何よりのどの渇き。
かなり歩き回ったけど、オアシスも湧き水も見つからない。
サボテン1本見当たらない。
動物も1匹もいない。
雨も降らない。
飲まず食わずでも当分のあいだタヒぬことはないのだろうが、それと苦痛は別問題だ。
「あついー…足いたいー…」
つらい。
つらい。
つらいよぅ。
「うわーん!!!!やだやだやだやだやだやだ!!おかしー!!ジュースぅー!!」じたばたじたばた。
何も起きない。
なんだこの世界。
「シャワー!アイスー!」じたばたじたばた。
何か持っていないかアイテムを確認してみる。
「すてーたすおーぷん」
もう何度も繰り返した作業だ。
防具:配信用の衣装
まさよママが仕立ててくれた大事なドレス。
砂で汚れてしまっている。
他に持ってきた物は何もない。
「なんでお水ないのー…?」
異次元アイテム収納ボックスには、鉄の剣が一本入っていた。
まぁファンタジー世界だ。武器が必要なのはわかる。
でも砂漠に落とすなら、水くらいは入れておいてくれてもいいじゃない?
それにこの砂漠、1日歩き回ってもモンスターどころか、虫1匹すら見当たらない。
この剣はなに。まさか自決用?
そんなことを考えつつステータス画面を見つめていると、ふと『魔法』の項目が目に入った。
「魔法!そう!これだぁぁー!!」
ヒメは跳びあがった。
タッチすると3系統25種類の魔法が表示される。
妙に数が少ないのが気になるが(特に精霊魔法は4種類しかない)役に立ちそうなのが見つかった。
『ラルール』消費MP10 街や村の入り口へワープする
「これ!これぇぇぇ!!!!!」
なぜもっと早くこれに気付かなかったのか。ヒメは歓喜のあまり自分の頭を叩いた。いたい。
さっそく使うべし!
「ラルール!」
メッセージ画面が開いた。
『訪れた街や村が登録されていません』
ヒメは砂の上に倒れ伏した。
そして起き上がった。
いや、これはまだ許せる。RPGにおいて普通の仕様ではある。この世界はゲームなのか、という疑問はあるが。
まぁいい。他にも魔法はあるのだ。何か使えるものは?
『ガキコリオ』MP3 氷の塊で敵を攻撃する
これだ!
水を作る魔法はなかったが、氷を作る魔法はあった!
さっそく使ってみる。
「ガキコリオ!」
氷の塊がぼとっと砂の上に落下した。
「こ、こおりぃぃぃぃー!!!」
飛びつくようにして舐めるヒメ。しかし…。
「ひ、ひがぁぁ!!!!???にがい!!にがいいいい!!!!!!!」
まるで草を口の中に突っ込まれたかのような、猛烈な苦み。そして臭み。
なぜ!?魔法で作った氷だから!?
ヒメは氷を放り出した。
気が付けば日が暮れかけている。
ヒメは砂の上に横たわり、魔法の画面をいじりながら、今日を振り返った。
異世界転移初日は、さんざんな結果に終わった。
「ママ、おやじ、弟、MOKUROKUのみんな、マネージャー………あとついでにオタクたち……おまけでプロデューサー…」
自分のことを心配しているだろうか。
ふと、指をとめる。
そして唱える。
「ビハーナ!」
夕焼けの空に、ひゅるひゅると明るい球が上っていき。
どん。
と、大きな光の花が咲いた。
花火だった。
どん。どん。
次々と砂漠の上に咲く、大輪の花。光の乱舞。
水を作る魔法は無いのに、なんでこんな魔法があるんだろう。
見上げながら呟いた。
「みんな。ヒメはここにいるよ…」
どん。どん。
夜のとばりが降りゆく中に、花火が散る。
ヒメはやがて眠りに落ち、クロレ・キッシーの世界に闇が訪れた。
乙姫つづりは、照り付ける太陽のもと、重たい足を引きずりながら砂の上を歩き続けていた。
目の前に広がる砂の大地。右を見ても砂。左を見ても砂。後ろを見ても砂。
東西南北、砂砂砂砂砂。
そして暑い!!!
砂漠だ!
あの女神は、砂漠のド真ん中にヒメを転移させやがったのだ。
確かにダイナミックな自然環境だ。でももうたっぷり堪能した。
それでどっちに行けば、ここから抜け出せるの!?
「ステータスオープン!」
ヒメはステータスを開いた。(多くの異世界で当然のごとく実装されている機能である)
『乙姫つづり 勇者
状態:おつむ以外は正常
LV 999
HP 9997/9999
MP 9999/9999』
もう何時間と歩き続けているが、体力はほとんど減っていない。さすがレベルカンスト。
疲労は感じるけど、状態は正常。
やっぱり能力をもらっておいて正解だった。さもなければここで骨になるところだった。
とんでもない女神だ。
「のどかわいたー…おなかへったー…」
目下のところ問題なのは、空腹と、何よりのどの渇き。
かなり歩き回ったけど、オアシスも湧き水も見つからない。
サボテン1本見当たらない。
動物も1匹もいない。
雨も降らない。
飲まず食わずでも当分のあいだタヒぬことはないのだろうが、それと苦痛は別問題だ。
「あついー…足いたいー…」
つらい。
つらい。
つらいよぅ。
「うわーん!!!!やだやだやだやだやだやだ!!おかしー!!ジュースぅー!!」じたばたじたばた。
何も起きない。
なんだこの世界。
「シャワー!アイスー!」じたばたじたばた。
何か持っていないかアイテムを確認してみる。
「すてーたすおーぷん」
もう何度も繰り返した作業だ。
防具:配信用の衣装
まさよママが仕立ててくれた大事なドレス。
砂で汚れてしまっている。
他に持ってきた物は何もない。
「なんでお水ないのー…?」
異次元アイテム収納ボックスには、鉄の剣が一本入っていた。
まぁファンタジー世界だ。武器が必要なのはわかる。
でも砂漠に落とすなら、水くらいは入れておいてくれてもいいじゃない?
それにこの砂漠、1日歩き回ってもモンスターどころか、虫1匹すら見当たらない。
この剣はなに。まさか自決用?
そんなことを考えつつステータス画面を見つめていると、ふと『魔法』の項目が目に入った。
「魔法!そう!これだぁぁー!!」
ヒメは跳びあがった。
タッチすると3系統25種類の魔法が表示される。
妙に数が少ないのが気になるが(特に精霊魔法は4種類しかない)役に立ちそうなのが見つかった。
『ラルール』消費MP10 街や村の入り口へワープする
「これ!これぇぇぇ!!!!!」
なぜもっと早くこれに気付かなかったのか。ヒメは歓喜のあまり自分の頭を叩いた。いたい。
さっそく使うべし!
「ラルール!」
メッセージ画面が開いた。
『訪れた街や村が登録されていません』
ヒメは砂の上に倒れ伏した。
そして起き上がった。
いや、これはまだ許せる。RPGにおいて普通の仕様ではある。この世界はゲームなのか、という疑問はあるが。
まぁいい。他にも魔法はあるのだ。何か使えるものは?
『ガキコリオ』MP3 氷の塊で敵を攻撃する
これだ!
水を作る魔法はなかったが、氷を作る魔法はあった!
さっそく使ってみる。
「ガキコリオ!」
氷の塊がぼとっと砂の上に落下した。
「こ、こおりぃぃぃぃー!!!」
飛びつくようにして舐めるヒメ。しかし…。
「ひ、ひがぁぁ!!!!???にがい!!にがいいいい!!!!!!!」
まるで草を口の中に突っ込まれたかのような、猛烈な苦み。そして臭み。
なぜ!?魔法で作った氷だから!?
ヒメは氷を放り出した。
気が付けば日が暮れかけている。
ヒメは砂の上に横たわり、魔法の画面をいじりながら、今日を振り返った。
異世界転移初日は、さんざんな結果に終わった。
「ママ、おやじ、弟、MOKUROKUのみんな、マネージャー………あとついでにオタクたち……おまけでプロデューサー…」
自分のことを心配しているだろうか。
ふと、指をとめる。
そして唱える。
「ビハーナ!」
夕焼けの空に、ひゅるひゅると明るい球が上っていき。
どん。
と、大きな光の花が咲いた。
花火だった。
どん。どん。
次々と砂漠の上に咲く、大輪の花。光の乱舞。
水を作る魔法は無いのに、なんでこんな魔法があるんだろう。
見上げながら呟いた。
「みんな。ヒメはここにいるよ…」
どん。どん。
夜のとばりが降りゆく中に、花火が散る。
ヒメはやがて眠りに落ち、クロレ・キッシーの世界に闇が訪れた。