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PH

ぱたりと、アルノルトはノートを閉じた。今日のカウンセリングはもう終わりだ。アルノルトが担当するC棟は、さほど患者も多くなく、一日に担当するカウンセリング数も多くない。
後は病棟の見回りや、今日行った心理検査の分析をゆっくりと行うことが出来るだろう。
ふふ、とアルノルトは口元を綻ばせる。
なんて素晴らしい一日なのだろう!様々なパラフィリア患者に囲まれ、自由に研究や観察に従事できるこの病院は、「パラフィリアンフェチ」と自称するアルノルトにとって、まさに理想的な環境であった。
加えて、職員達も皆それぞれ抱えるものがあるらしく、世間から見れば少しズレのあるアルノルトも、この場所では何の差し障りもなく、それどころか必要な人材とされるというのである。
「……素敵、素敵だ」
クスクスと、堪えきれない笑みが言葉とともに漏れる。困惑したような、嘲るような、いやに歪んだ笑顔を湛えて、アルノルトはノート片手に席を立った。


write2011/5/27
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