第一戒　あなたの生涯は多分だいたい50年くらいしかありませんが、まあそれ以上生きて老いさらばえることもあるでしょう。そのうちほんのわずかな時間でもあなたが刃向かうと腹が立ちます。僕が従われてやっているのですから、そのことは覚悟しなさい。

第二戒　あなたが僕に望むことを理解するつもりはありません。待っても無駄です。

第三戒　僕を使いなさい。僕にとってそれが一番な訳ではありませんが、まあ大事なことではあるから、従ってやります。

第四戒　僕を長い時間放ったり、罰として閉じ込めたりしてはなりません。狭いところは好きではありません。退屈ですから。貢ぎ物を用意するのは許可します。あなたには仕事や楽しみもあり、友達だっているかもしれませんが、僕を侍らせるなら一番に扱うよう心掛けなさい。

第五戒　僕に話しかけないで下さい。あなたの話していることが何かもどうでもいいですし、話しかけるあなたの声はうざったいです。まあでも、おべっかじゃあないほめ言葉位ならこぼしていってもいいですよ。

第六戒　あなたが僕にどんなふうにしてくれたか、僕は大体忘れません。恨みは倍返しします。

第七戒　僕をたたいたりする前に思い出しなさい。僕の刃はなまくらですが、あなたの手の骨を叩き折ることぐらいは簡単にできることを。なんなら今から体に教えてやりますが。

第八戒　僕が言うことを聞かないと怒る前に、まずは自分に問い掛けてみなさい。たっぷり食事を与えてましたか？まあ僕は小食なのでそんなに要りませんが。与えたのは僕の舌に適う代物ですか？まあ気分でなければ食べませんが。お小夜と気持ちよく昼寝をしているのをじゃましませんでしたか？絶対に許しません。
もしかすると暇に飽かしてちょっかいを出してきているだけかもしれませんが、どのみち僕がしたいことに従わないほうが悪いのですから、あきらめなさい。

第九戒　あなたが年をとっても世話をしなさい。僕は同じように年をとりませんが、その時隣にいるなら年をとっても側に置かれてやっているのでしょう。


第十戒　最期の旅立ちの時には、そばにいて主、あなたを見送ってやってもいいですよ。「かわいそうで見ていられない」とか「私のいないところで逝かせてあげて」なんて軟弱、言う訳がありません。知らないうちに死ぬなんて許しません。なでなさい。なで続けなさい。かわいいね、いい子だねと言いなさい。言いまくりなさい。最期くらいは、僕にそうすることを許してやってもよいです。まあ、気が向いたら。