タイキ×ドーベル
時間はあっという間に流れていって、当日の朝を迎えた。天気は快晴。絶好の行楽日和。
アタシとタイキのトレーナーと一緒に電車に乗り込んで、新幹線のホームまで一緒に行く。
「全くタイキは……まだ弁当で悩んでるな……」
はあー!と、長く強いため息を溢してるのはタイキのトレーナー。
「まだ時間あるし大丈夫だよ」
タイキがいるであろう方向を睨んでいるタイキのトレーナーに大丈夫だと伝えるけれど、たぶんあと数十秒後には駆け出して行くんだろうな。タイキのトレーナーとタイキはなんていうか、世話焼きの姉と手のかかる妹みたいな関係だ。
「ドーベル、旅館の地図は事前に出しておくんだよ? あっ、ハンカチとかティッシュ持ったかな?」
「もう、大丈夫だって。心配症だなぁ」
アタシのトレーナーは心配症なお姉ちゃんかな。今のはちょっとお母さんっぽいけど。
「ちょっとタイキ呼んでくる!」
予想通りタイキのトレーナーは数十秒後に駆け出していって、数分後、沢山の駅弁を持ってニコニコしてるタイキと一緒に帰ってきた。
「タイキ、こんなに食べられるのか?」
「オフコース! 問題ナッシング!」
「ほら、胃薬一応あるから持ってきな」
「サンキューデース!」
「ドーベル、酔い止めとか大丈夫? 必要ない?」
「平気。あった方がいい薬は用意してあるよ」
トレーナーたちに最終確認をされながら乗る予定の号車の前まで行くと、ちょうど新幹線がやってきた。
「タイキ、ドーベルにあまり迷惑かけないこと。いいか?」
「もう、トレーナーさん心配しすぎデース。わかってマス!」
「よし!」
「二人とも、楽しんでおいで」
「うん。行ってきます」
「アイムゴーイン!」
トレーナーたちに見送られて、グリーン車に乗り込む。普通車に比べるとゆったりとした空間で、これならタイキものびのびとできそうだ。
学生なのにグリーン車で移動なんて贅沢じゃないのかなって思ったけど、トレーナーがアタシたちのメディアへの露出具合を考えたら、保護者のいない中で普通車に乗せるのは心配だと言ってくれたおかげでこうなった。グリーン車分のお金はトレーナーが出してくれて、曰く普段から頑張ってるご褒美も兼ねてるとか。
座席に座るとタイキは早速駅弁をテーブルの上にドサリと乗せる。ちらりと見るだけでも色々な種類が目に入り、和洋中、色とりどりの駅弁が並ぶ。
「色々買ったね」
「イエース! ビーフ、ポーク、チキン! 和風洋風中華、気になったものは片っ端から買いマシタ!」
「見てるだけでお腹いっぱいになりそう」
アタシが買ったのは壺に入ったタコ飯。物珍しくて手に取ったもの。
お弁当を広げて箸を持ったところで、新幹線が走り出す。
これからタイキと二人きりで旅行なんだと思うと、楽しみで、まだ食べる前なのにお腹いっぱいな気分になってくる。
「ドーベル? 食べないんデスカ?」
アタシにそう聞くタイキは、もうほっぺたにお弁当を付けている。
「ふふっ。タイキ、ほっぺたにご飯粒付いてる」
「オゥ! どこデスカ!?」
「取ってあげる」
「サンクス!」
ほっぺたについた無邪気の証を摘む。
タイキのこういうところが、手がかかるのに可愛い。
摘んだものはそのままゴミ袋の中へ──とはいかなかった。
「もったいないデース」
「え?」
タイキがアタシの手を掴むと、指に伝わってくる、しっとりとした柔らかい感触。
何をされたかなんて一瞬で理解して、急激に顔の辺りに熱が上がってくる。
「た、タイキ!! と、とと、突然そういうことしないで!!」
「ドーベル、トレインの中ではしーっ、デスヨ?」
「あ……。いや、今のはタイキが悪いから!」
キョロキョロと周囲を見渡すと、幸い出発駅からグリーン車に乗ってるのはアタシたちだけだった。
「指、急に、くわえるなんて」
「お米は残さず食べないとダメだと教えてくれたのは、ドーベルですよ?」
「……確かに、言ったけど」
言われてすぐに思い至る。日本に来たばかりで慣れない様子のタイキに色々教えてあげたのは、間違いなくアタシ。
「でも、こういうのはビックリするからダメ」
「ムムム……それはゴメンナサイデース」
分かってくれたタイキの耳は、分かりやすくしょんぼりと寝る。出だしからしょんぼりとさせてしまったのは少し心苦しいけど、ちゃんと言わなきゃいけないことだから仕方ない。
「怒ってごめんね。次から気をつけてくれればいいし、ほら、お弁当食べよ?」
「ハイ」
とは言ったものの、タイキの唇の感触が熱く熱を持ってしまって、最後の方になるまでアタシはお弁当の味がわからなかった。
アタシとタイキのトレーナーと一緒に電車に乗り込んで、新幹線のホームまで一緒に行く。
「全くタイキは……まだ弁当で悩んでるな……」
はあー!と、長く強いため息を溢してるのはタイキのトレーナー。
「まだ時間あるし大丈夫だよ」
タイキがいるであろう方向を睨んでいるタイキのトレーナーに大丈夫だと伝えるけれど、たぶんあと数十秒後には駆け出して行くんだろうな。タイキのトレーナーとタイキはなんていうか、世話焼きの姉と手のかかる妹みたいな関係だ。
「ドーベル、旅館の地図は事前に出しておくんだよ? あっ、ハンカチとかティッシュ持ったかな?」
「もう、大丈夫だって。心配症だなぁ」
アタシのトレーナーは心配症なお姉ちゃんかな。今のはちょっとお母さんっぽいけど。
「ちょっとタイキ呼んでくる!」
予想通りタイキのトレーナーは数十秒後に駆け出していって、数分後、沢山の駅弁を持ってニコニコしてるタイキと一緒に帰ってきた。
「タイキ、こんなに食べられるのか?」
「オフコース! 問題ナッシング!」
「ほら、胃薬一応あるから持ってきな」
「サンキューデース!」
「ドーベル、酔い止めとか大丈夫? 必要ない?」
「平気。あった方がいい薬は用意してあるよ」
トレーナーたちに最終確認をされながら乗る予定の号車の前まで行くと、ちょうど新幹線がやってきた。
「タイキ、ドーベルにあまり迷惑かけないこと。いいか?」
「もう、トレーナーさん心配しすぎデース。わかってマス!」
「よし!」
「二人とも、楽しんでおいで」
「うん。行ってきます」
「アイムゴーイン!」
トレーナーたちに見送られて、グリーン車に乗り込む。普通車に比べるとゆったりとした空間で、これならタイキものびのびとできそうだ。
学生なのにグリーン車で移動なんて贅沢じゃないのかなって思ったけど、トレーナーがアタシたちのメディアへの露出具合を考えたら、保護者のいない中で普通車に乗せるのは心配だと言ってくれたおかげでこうなった。グリーン車分のお金はトレーナーが出してくれて、曰く普段から頑張ってるご褒美も兼ねてるとか。
座席に座るとタイキは早速駅弁をテーブルの上にドサリと乗せる。ちらりと見るだけでも色々な種類が目に入り、和洋中、色とりどりの駅弁が並ぶ。
「色々買ったね」
「イエース! ビーフ、ポーク、チキン! 和風洋風中華、気になったものは片っ端から買いマシタ!」
「見てるだけでお腹いっぱいになりそう」
アタシが買ったのは壺に入ったタコ飯。物珍しくて手に取ったもの。
お弁当を広げて箸を持ったところで、新幹線が走り出す。
これからタイキと二人きりで旅行なんだと思うと、楽しみで、まだ食べる前なのにお腹いっぱいな気分になってくる。
「ドーベル? 食べないんデスカ?」
アタシにそう聞くタイキは、もうほっぺたにお弁当を付けている。
「ふふっ。タイキ、ほっぺたにご飯粒付いてる」
「オゥ! どこデスカ!?」
「取ってあげる」
「サンクス!」
ほっぺたについた無邪気の証を摘む。
タイキのこういうところが、手がかかるのに可愛い。
摘んだものはそのままゴミ袋の中へ──とはいかなかった。
「もったいないデース」
「え?」
タイキがアタシの手を掴むと、指に伝わってくる、しっとりとした柔らかい感触。
何をされたかなんて一瞬で理解して、急激に顔の辺りに熱が上がってくる。
「た、タイキ!! と、とと、突然そういうことしないで!!」
「ドーベル、トレインの中ではしーっ、デスヨ?」
「あ……。いや、今のはタイキが悪いから!」
キョロキョロと周囲を見渡すと、幸い出発駅からグリーン車に乗ってるのはアタシたちだけだった。
「指、急に、くわえるなんて」
「お米は残さず食べないとダメだと教えてくれたのは、ドーベルですよ?」
「……確かに、言ったけど」
言われてすぐに思い至る。日本に来たばかりで慣れない様子のタイキに色々教えてあげたのは、間違いなくアタシ。
「でも、こういうのはビックリするからダメ」
「ムムム……それはゴメンナサイデース」
分かってくれたタイキの耳は、分かりやすくしょんぼりと寝る。出だしからしょんぼりとさせてしまったのは少し心苦しいけど、ちゃんと言わなきゃいけないことだから仕方ない。
「怒ってごめんね。次から気をつけてくれればいいし、ほら、お弁当食べよ?」
「ハイ」
とは言ったものの、タイキの唇の感触が熱く熱を持ってしまって、最後の方になるまでアタシはお弁当の味がわからなかった。