今日はぽかぽかとあたたかく、ピクニック日和。グラスは野点をしたかったらしいけど、残念ながら皆用事があったらしくて、しょんもりと元気のない耳を見ていられなかったアタシはグラスをピクニックに誘ったのだった。
　グラスの実家から送られてきたというお茶菓子と、アタシが自分で買ってきたタコスを持って近所の公園でレジャーシートを敷いてお弁当を食べる。
「野点はまたの機会になってしまいましたけど、こうしてエルとピクニックが出来て良かったです」
　グラスの淹れてきた緑茶を啜りつつ食べるのはタコス。グラスはアタシの愛用してるホットソースをほんのちょっとかけて、美味しそうに頬張っていた。
　今日のグラスはトレーニングのことを忘れてのんびりモード。ほわほわとした空気が漂ってる。ほわほわ、ぽかぽか。アタシにはちょっとムズムズする。
「エル、ピクニックに誘ってくれてありがとうございます」
「デ・ナーダ」
「ふふっ。ちょうどいい気温で、ぽかぽかとあたたかくて……ふぁっ」
　グラスからもれる、小さなあくび。確かにこんなにいい日和だと、のんびり屋なグラスは眠たくなっちゃいますよね。
「グラス、眠い？」
「少しだけ」
　少しだけなんていいながら、もうグラスは船を漕ぎ始めてた。うつら、うつら。このまま歩いて帰るにはちょっと危ない。
「ほら、特別にエルの肩貸してあげます」
「エル……？」
　肩を抱き寄せると眠たげにこっちを見るグラス。迷ったようにアタシの顔を見たけど、眠気には勝てないみたい。瞳がそっと閉じられる。
「一時間、だけ」
「一時間でも二時間でも貸しますよ」
「ふふっ……。ありがとう、エル」
　微睡みに捕まえられたグラスはすぐにすやすやと健やかな寝息を立て始める。
　安心して体を預けてもらえる。
　そのことを嬉しく思いながら、アタシはグラスの髪を撫でた。