今年もこの季節がやってきた。
　私のお姉ちゃんが体重計とにらめっこをする日々が。
「二キロも増えてる……！？　走り込みを増やして、プールの方がいい……？」
　ぶつぶつと呟いてるお姉ちゃん。ちなみに私はお姉ちゃんにピッタリの新作のマニキュアをプレゼントして、塗ってあげたりなんかもした。
　あのお姉ちゃんの本当に嬉しそうな笑顔とハグは、今思い出しても幸せな気持ちになる。
「お姉ちゃん、受け取らない選択肢はないの？」
「応援してくれる方たちの気持ちを無碍にはできないわ。それにお世話になってる先輩から頂いたものもあるし」
「そっかぁ。私もいっぱい貰うようになるのかなぁ」
「きっとなるわ。ヴィブロスは魅力的だもの」
「えへへ♡」
　頭を撫で撫でしてくれるお姉ちゃんの顔は、一時的に優しいいつものお姉ちゃんに戻ったけども、すぐに眉間に皺が戻ってくる。
「明日は朝早くに起きてランニングしなくちゃ。お菓子はあと三分の一くらいだし、増えるのを一キロに抑えて残りを落としてしまえば……」
　トレーニングメニューがびっちり書いてあるノートを見て、ここをこうすればとか唸ってる。
　お姉ちゃんが一人で頑張りすぎてるのは、なんだかやだなって思う。
「ねえねえ、明日のランニングは私も一緒に走るよ！　ううん、トレーニングぜーんぶお姉ちゃんと一緒にする！」
「ヴィブロス……。これは私の問題だから無理に付き合わなくていいのよ？」
「無理してないもん！無理してるのはお姉ちゃんの方だよお！」
「ありがとう、ヴィブロス。心配してくれて」
　今度はお姉ちゃんがぎゅってしてくれた。お姉ちゃんのハグ大好きだから、とっても幸せな気持ちになっちゃう。
「私は大丈夫よ。だから「んー……はっ！　いーやー！　お姉ちゃんと一緒にトレーニングすーるーのー！」
　幸せな気持ちになって一瞬目的を忘れかけたけれど、ここは引き下がれない。一人で無理させちゃったら、お姉ちゃんが体壊しちゃう。
「お姉ちゃんが大好きだから心配なの！　ねぇ、おねがぁい♡」
「……っ、もう。私の負けね」
「それじゃあ！」
「ヴィブロスも無理はしないこと。それが守れるならいいわ」
「うん！　守る守る！」
　そしてお姉ちゃんにお付き合いしてトレーニングをする日々が始まった。
「お姉ちゃんの鬼ぃ！」なんて言っちゃうこともあったけど、でも、お付き合いするうちに慣れてきて、トレーニングが気持ちよく感じることもあるようになってきたある日。
「ヴィブロス……痩せた？」
「そう？」
　三姉妹でご飯を食べてたときにシュヴァちにそう言われた。
　お姉ちゃんに付き合ってトレーニングをしていても普段通りに食べてたんだけどなあ。
　のんきに考えてたら、隣にいたお姉ちゃんの顔が青ざめていた。
「お姉ちゃん？」
「ヴィブロス、体重測りに行きましょ！」
「え？」
　お姉ちゃんに手を引かれて脱衣所に連れて行かれる。
　促されるまま体重計に乗ると、前に測ったときから四キロ程体重が落ちてた。
「や、痩せすぎよヴィブロス！　このままじゃ駄目だわ！」
「そうかなぁ。前より筋肉ついた気がするし、全然大丈夫だと思うんだけど」
「駄目！　絶対駄目！　食事のメニューを見直すところから始めましょう。あと、私の頂いたお菓子、少し食べてくれる？」
「はーい」
　それから私はお姉ちゃんのあーんでいっぱいご飯を食べて、お菓子の力も借りたりなんかして元の体重に戻すのでした。
　ちなみにお姉ちゃんの体重もちゃんと元に戻りました。
　おしまい♡