タイキ×ドーベル

 ぺったんぺったん。
 目の前で白いお餅がつき上がっていく。
 今日は寮に残っているみんなでお餅つき大会。
 今年は珍しくタイキが帰省しないって聞いて、それを聞いたらタイキを一人にするのが忍びなくて帰るのをずらして、そしてタイキを家に連れて帰ることにした。
「ドーベル! 次はワタシたちの番デスヨ!!」
「うん」
 タイキがつくのをやりたいって言ったから、アタシはお餅をひっくり返す役。
「せーの!」
「はい!」
「せぇの!」
「はい!」
 掛け声に合わせてタイキが杵でお餅をついて、アタシがひっくり返す。こういう共同作業、なんか楽しいな。タイキと一緒にいる時間は長いけど、何かを一緒にするってあまりないから、なんだか新鮮。
 十回くらい突いたところで次の子に交代。
「グラスー! エルたちも先輩たちみたいに息ピッタリで行きましょー!!」
「はーい」
 そんな声を聞きながらアタシとタイキは既につき上がってるお餅のところに行った。
「ラディッシュ、きな粉、むむっ、ナットウ?」
「へえ、納豆なんかもアリなんだ」
「ドーベル食べたことありマス?」
「ううん」
「んー、でもナットウデスカァ……」
 タイキは外国から来た子らしく納豆が苦手だ。なんでもヌルヌルとした食感とあの独特の匂いが駄目なんだとか。アタシも匂いが気になるからあまり進んでは食べない方。日本生まれらしく納豆自体は嫌いじゃないけど。
「苦手なら無理に食べる必要はないんじゃない? ほら、ほかにも磯辺巻きとかしょっぱい系あるし」
「デスネ! ラディッシュとイソベ! あとあとデザートも気になりマース!」
「ふふっ。先にしょっぱいのから食べてからにした方がいいんじゃない?」
「オフコース!」
 タイキは迷いに迷っておろし餅とバター醤油のお餅を選んだ。アタシは磯辺巻きを二つ。
「「いただきます」」
 手を合わせてお餅を口に運ぶ。突き立てのお餅はよく伸びて、タイキが上手く噛みきれないのか大変なことになってる。
「ふぉ、ふぉーへるぅ」
「あはは。頑張って」
 アタシは小さい頃から食べてきてるから、タイキみたいなことにはならない。ぐーんと伸びるお餅に少し驚きつつも、程よい場所で噛みきってもちもちとした、香ばしいお醤油の味と磯の香りを咀嚼する。
「つき立てはやっぱり美味しい」
「ベリーベリーデリシャス!」
 タイキの顔、にこにこしてて、顔にいっぱい美味しいって書いてある。日本の料理を美味しいって言ってもらえるのって、なんかやっぱり嬉しい。作ったのはアタシじゃないんだけど。
 それからアタシはしょっぱい系を程々におかわりして、デザート系もいっぱい楽しんだ。
「はぁ……、いっぱい食べマシター」
「タイキってば結構お腹出ちゃってるね」
「ふふふ、ハピネスなのでノープレブレムデェス」
 タイキはというと普段よりもいっぱい食べてたから、珍しくお腹がパンパンに張ってる。幸せそうにお腹を撫でてるタイキを見てると、こっちまで幸せになってしまう。
「アタシの家でもきっとお母さんたちがいっぱい料理作ってくれると思うから、お腹壊さないでね?」
「ダイジョウブデース! 一日ぐっすり眠れば消化されちゃいマス!」
「ならいいけど」
 きっと家に行ってもこんなふうに楽しいんだろうな。
 まだまだこの冬休みにタイキと一緒に楽しい思い出を作れる。
 早く明日にならないかなと思いつつも、今日というこの日も大切にしたい。
「タイキ、そろそろ片付け手伝いに行こっか」
「OK!」
 片付けるまでが餅つき大会。
 先に片付けを始めてる寮長たちのところにタイキと二人、手を繋いで向かった。
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