エル×グラス
「初日の出を見ましょう。エル、もし私が寝ているようなら起こしてくれませんか?」
昨晩そう言われて眠りについた。別にグラスはこういうイベントごとのときに寝坊するタイプじゃないんだけどなぁって思いながら、アタシは日付が変わる前に眠りについたのだ。
そして朝。
朝のトレーニングに行くよりも早い時間、まだ日が昇らなくて、でも完全には真っ暗とはいえない時間帯。起きてすぐにグラスの方を見ると、なんとグラスはすやすやと眠っていた。
「珍しいデェス……」
結構大きな音でアラームを鳴らしたはずだ。グラスは音に敏感だからこれで一緒に起きるだろうと思ってたのに。
グラスの寝顔を見るのはまあ、そこそこある。でも新年からこうしてグラスのあどけない寝顔を見るのは、何だか特別。
「グラス、グラス。起きてくださーい」
約束したので、ちゃんと起こしてあげる。初日の出は絶対に見たいと息巻いていたから、見逃しちゃったら一日不機嫌な顔してそう。そんなグラスは見たくない。
布団の上からゆさゆさゆさ。するとグラスは「んんっ……」と普段よりほんのちょっと低めの声で唸った。
「グラスー? 初日の出、見るんデスよね?」
「……ぇ、る」
なんか反応が鈍い。こんなにすっきりと起きないグラスは初めてかも。
一応目は覚めたらしいグラスは、眠たそうにゆるゆると起き上がる。
「グラス、グッモーニン?」
「……good morning」
「……へ?」
まさかのグラスから流暢な英語、思わず間の抜けた声が出てしまった。
(え、これ、もしかしてもしかして寝ぼけてる?)
いくら大和撫子なグラスとはいえ、アメリカで暮らしていたときは英語だったらしい。たまにするテレビ通話では家族とは英語で話していたし、これはアメリカの朝のグラス、なのかな。
「グラス、おはようございます」
「……おはよう、ございます」
あ、今度は日本語で返ってきた。
発音が適当だったとはいえ英語で言ったから、グラスここがアメリカだと思っちゃったとかかな。
「眠たいの?」
「……んぅ」
反応がまだ鈍い。どうしよう。初日の出までまだ少し余裕はあるけど、グラスはゆっくり見たいだろうし。
(そうだ)
グラスから離れて洗面台に行く。蛇口を捻れば冷たい水が出てきて、それに手を十秒くらい浸した。冷たいけど、グラスを起こしてあげるために我慢。
「グラス、ちょっと失礼します」
アタシはグラスが直ぐにでも目覚められるように、服の中に手を潜り込ませて、キンキンに冷えた手で背中を触った。
「きゃ! ……え、エル?」
「目、覚めましたか?」
「あ……はい」
効果テキメン。誰だって冷たい手が背中に冷やってきたらびっくり。
「ほらほらグラスー、着替えて外に出ましょう?」
「ごめんなさい、エル。お手数おかけしました」
グラスの目はもうすっかりぱっちり。作戦は大成功。
「グラスー、すごく寝ぼけてましたけど夜更しでもしたんデスか?」
トレセン学園の中で初日の出がよく見えるスポットに手を繋ぎながら行く。手袋越しなのは残念だけど、これ以上手が冷えたら大変なことになっちゃうから。
「除夜の鐘を聞きたくて日付が変わるまで起きてました」
「なんと……それは眠たいはずデェス」
お寺に突きに行きたかったってグラスが言ってたことを思い出す。残念ながらアタシたちは未成年。夜間の外出は学園の大人が同伴でないと出来ない。きっと音だけでも聞いて日本の風情を感じたかったんだろうなぁ。
初日の出がよく見えるスポットには、帰省せずに残っていた他の子たちもチラホラいる。
「エル、ご来光ですよ」
のんびり会話しながらお日様を待っていたら、ついにその瞬間がやってきた。ゆっくりと登ってくるアタシが大好きなお日様。いつもと同じお日様のはずなのに、どうしてこんなにも神聖で特別に感じるんだろう。
「綺麗ですね〜」
「デェス」
グラスも念願のものを見られて瞳がキラキラしてる。かわいいなぁ。新年からいっぱいかわいいグラス見られて、今年は良い年になりそう。
「グラス、明けましておめでとうございます」
「はい。明けましておめでとうございます。エル、今年もよろしくお願いいたします」
「スィ! 今年もよろしくお願いしますデース!」
今年もどうぞよろしく。
かわいいかわいい、アタシの親友。
昨晩そう言われて眠りについた。別にグラスはこういうイベントごとのときに寝坊するタイプじゃないんだけどなぁって思いながら、アタシは日付が変わる前に眠りについたのだ。
そして朝。
朝のトレーニングに行くよりも早い時間、まだ日が昇らなくて、でも完全には真っ暗とはいえない時間帯。起きてすぐにグラスの方を見ると、なんとグラスはすやすやと眠っていた。
「珍しいデェス……」
結構大きな音でアラームを鳴らしたはずだ。グラスは音に敏感だからこれで一緒に起きるだろうと思ってたのに。
グラスの寝顔を見るのはまあ、そこそこある。でも新年からこうしてグラスのあどけない寝顔を見るのは、何だか特別。
「グラス、グラス。起きてくださーい」
約束したので、ちゃんと起こしてあげる。初日の出は絶対に見たいと息巻いていたから、見逃しちゃったら一日不機嫌な顔してそう。そんなグラスは見たくない。
布団の上からゆさゆさゆさ。するとグラスは「んんっ……」と普段よりほんのちょっと低めの声で唸った。
「グラスー? 初日の出、見るんデスよね?」
「……ぇ、る」
なんか反応が鈍い。こんなにすっきりと起きないグラスは初めてかも。
一応目は覚めたらしいグラスは、眠たそうにゆるゆると起き上がる。
「グラス、グッモーニン?」
「……good morning」
「……へ?」
まさかのグラスから流暢な英語、思わず間の抜けた声が出てしまった。
(え、これ、もしかしてもしかして寝ぼけてる?)
いくら大和撫子なグラスとはいえ、アメリカで暮らしていたときは英語だったらしい。たまにするテレビ通話では家族とは英語で話していたし、これはアメリカの朝のグラス、なのかな。
「グラス、おはようございます」
「……おはよう、ございます」
あ、今度は日本語で返ってきた。
発音が適当だったとはいえ英語で言ったから、グラスここがアメリカだと思っちゃったとかかな。
「眠たいの?」
「……んぅ」
反応がまだ鈍い。どうしよう。初日の出までまだ少し余裕はあるけど、グラスはゆっくり見たいだろうし。
(そうだ)
グラスから離れて洗面台に行く。蛇口を捻れば冷たい水が出てきて、それに手を十秒くらい浸した。冷たいけど、グラスを起こしてあげるために我慢。
「グラス、ちょっと失礼します」
アタシはグラスが直ぐにでも目覚められるように、服の中に手を潜り込ませて、キンキンに冷えた手で背中を触った。
「きゃ! ……え、エル?」
「目、覚めましたか?」
「あ……はい」
効果テキメン。誰だって冷たい手が背中に冷やってきたらびっくり。
「ほらほらグラスー、着替えて外に出ましょう?」
「ごめんなさい、エル。お手数おかけしました」
グラスの目はもうすっかりぱっちり。作戦は大成功。
「グラスー、すごく寝ぼけてましたけど夜更しでもしたんデスか?」
トレセン学園の中で初日の出がよく見えるスポットに手を繋ぎながら行く。手袋越しなのは残念だけど、これ以上手が冷えたら大変なことになっちゃうから。
「除夜の鐘を聞きたくて日付が変わるまで起きてました」
「なんと……それは眠たいはずデェス」
お寺に突きに行きたかったってグラスが言ってたことを思い出す。残念ながらアタシたちは未成年。夜間の外出は学園の大人が同伴でないと出来ない。きっと音だけでも聞いて日本の風情を感じたかったんだろうなぁ。
初日の出がよく見えるスポットには、帰省せずに残っていた他の子たちもチラホラいる。
「エル、ご来光ですよ」
のんびり会話しながらお日様を待っていたら、ついにその瞬間がやってきた。ゆっくりと登ってくるアタシが大好きなお日様。いつもと同じお日様のはずなのに、どうしてこんなにも神聖で特別に感じるんだろう。
「綺麗ですね〜」
「デェス」
グラスも念願のものを見られて瞳がキラキラしてる。かわいいなぁ。新年からいっぱいかわいいグラス見られて、今年は良い年になりそう。
「グラス、明けましておめでとうございます」
「はい。明けましておめでとうございます。エル、今年もよろしくお願いいたします」
「スィ! 今年もよろしくお願いしますデース!」
今年もどうぞよろしく。
かわいいかわいい、アタシの親友。