エル×グラス

 同期みんなでたこ焼きパーティがしたいというエルの提案に、みんなが同意して始まったパーティ。この一年お疲れ様でしたという意味も込めて開かれたパーティは、ジュースの乾杯で幕を開けた。
「それではエルがたこ焼き第一弾焼いてきます!!」
「では私も」
 このパーティは各々が好きな具材を持ち寄って、変わり種もOKなパーティにしてある。エルは自分が言い出しっぺだからと一番に台所に向かった。
「ふっふっふー、エルエルスペシャルを食べてもらうデース」
 そう言って取り出したのは、お馴染みのホットソース。他にはハバネロのスナックを砕いたものだったり、生の唐辛子だったり。どれもとても辛くてエル以外のヒトにとっては、罰ゲームでしかない。
「エル、ちゃんと三分の一に留めるんですよ?」
「わかってますデース!」
 私とエルの約束で、辛いものは三分の一までと取り決めをしてある。お疲れ様パーティは労をねぎらうもの。苦を与えてばかりではいけない。皆が楽しめるものでなくてはいけないと、エルには口酸っぱくして言い聞かせた。
 でも楽しそうにたこ焼きを作っていくエルに、私も少し冒険がしたくなる。実は用意していた、変わり種。チーズ、ソーセージまでならみんなが楽しく食べてくれるだろうし、他のみんなも用意してるかもしれない。
 私が用意した罰ゲーム的なもの。それは。
「エル、一個味見してみますか?」
「やったー! くださいください!」
 エルは自分の手元を見てばかりで私が用意した具材を見ていない。きっと普通の具材だと油断している。
「……ケェ!? あ、あまあま!? あ、甘いデエエエエエス!!」
「ふふっ」
 ふいを突かれたエルの大絶叫に、楽しくて笑みがこぼれてしまう。エルに食べさせた甘い具材。
「いかがですか? あんこのお味は?」
「甘々と、うえ、よくわかんない。でもこれ、たこ焼きの生地じゃないデスね?」
「ホットケーキの元を溶きました。流石にたこ焼き生地では美味しくないですから」
「な、なるほどデェス……あ、あまぁ……」
 不意打ちの甘い味にエルはグロッキー状態。ちょっとイタズラが強烈だったかしら。
 エルの焼いてるたこ焼きを一つもらって、エルの口に入れてあげる。
「あひゅっ、はふっ、はふ……。あ、ホットソースたこ焼きだ」
「お口直しはこれでいい?」
「スィ! 直りました!」
「それではこれらをみんなのところに持っていきましょうか」
「はーい!」
 出来上がったたこ焼きを持ってワクワクと浮足立つエル。
 実は甘いたこ焼きを仕込んだのはこれだけではないのですが、残りは誰に当たるでしょう。
 私も私で次のイタズラが誰に当たるのか楽しみで、微笑みがニヤケになるのを我慢するのでした。
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