※金カムのラッコ鍋パロ的なものです




「ベアミート貰いマシター！！」
　というタイキ先輩からのバーベキューのお誘い。凄腕の猟師さんが仕留めたという熊肉は、タイキ先輩の手によって美味しいバーベキューに変身した。
　それを堪能したアタシたちは部屋に帰ってきたのでした。終わり。だったら良かったのデスが……。
「……グラスぅ、なんか部屋、暑くありません？」
「そう、ですね。なんだか暑いです」
　パタパタ、手で仰いでいるグラス。季節は残暑が緩やかになってきた頃だというのに、なんかおかしい。グラスは窓を開けてれば涼しいからという理由でエアコンを止めてしまったから、さてどうしよう。
「エアコン入れますか？」
「そうですね、この暑さはちょっと」
　暑さをどうにかしたい気持ちのほうが勝ったみたい。グラスはだいぶ暑さを感じているのか、ごろんとベッドに横たわっていた。
「グラス、大丈夫デスか？」
「んー……」
　反応が鈍い。こんなグラスは珍しくて、もしかしたら風邪引いちゃったのかなって額に手を当ててみる。
「ひゃっ！」
「！？」
　額に手を当てることなんて初めてじゃないのに、ビクッと肩を揺らした上になんか声出ちゃってる。
「ぐ、グラス？」
「ごめんなさい、体が熱いせいなのかエルの手が冷たく感じてしまって」
「そうなんデス？　おでこは熱ある感じじゃなかったデスけど……」
　ヘンなグラス。とりあえず熱じゃなさそうだし、冷たいお水と氷を貰ってきましょう。
　共有の冷蔵庫に行くと少しほっぺたが赤くなったドーベル先輩が、氷をザクザクとカップに入れてるところに遭遇した。
「あ、ドーベル先輩！　ドーベル先輩も氷デスか？」
「エル？　うん、タイキがなんか暑いって」
「なるほどなるほど。ドーベル先輩もなんだかちょっとほっぺた赤いデース」
「え？　あ、そういえばタイキがそう言ってたような……。エルも暑いの？」
「スィ！　グラスが暑そうにぐったりしちゃったので！」
「え、大丈夫？」
「オフコース！　アタシも暑いなーって思ってますし、きっと平気デース！」
「それならいいけど……じゃあ」
　ドーベル先輩と別れてアタシも氷と、グラスが作ってくれてる冷たいグリーンティを持って部屋に戻った。
「グラァス、冷たいもの持ってきたデース」
「ありがとうございます」
　ベッドに横たわってたグラスは起き上がって、冷たいグリーンティを一口。
「ふぅ……、お茶は落ち着きますね〜」
「デェス。ワビサビ……エルエルにもわかります」
　温かいグリーンティもいいけど、やっぱり暑い時期は冷たいもの。喉を通っていく冷たさはなんだか風流を感じます。
　しかし暑さが紛れたのは一瞬。なんだか体の奥が熱いと強く自覚した。
（なんでしょう……ムズムズしますデス）
　チラリとグラスの方を見ると、何だかいつもよりもグラスが魅力的に見える。エアコンを入れたのに汗がじっとりと浮かんでいて、瞳が熱っぽい。頬が赤いのも、何だか魅力的。なんでしょう。これ。
「エル……？」
「ケ？」
「何だかいつもよりもエルが、魅力的に見えます」
「ケ！？　グラス！？　そんな風に言われると、て、照れますデェス」
「……ふふっ、可愛いです」
「よ、よしてください」
　恥ずかしくなってグラスの方を見れなくなっちゃう。それにしたってどうしたんでしょう。エルと同じことを考えていたのもデスけど、グラスがそんなことを言うなんて。
「それを言ったらグラスだってなんかスゴイデス。魅力たっぷりです。走りもキレが増しましたし、最近トモが立派になってきました？」
「あら、わかります？」
「デスデス」
　スカートだから今すぐには確認出来ないけど、走りの力強さが増したとは感じてる。いや待って、なんで今。
　グラグラ、なんだか闘争心に似た何かが煮えたぎるような感覚。何なんでしょう、この感覚。抑えきれない。こんな気持ち初めてデス。
　あ、こういうのを発散するのにぴったりな方法をエルエルは知ってる。
「だ、駄目デェス！！　ガマンできません！！　グラァス！！　プロレス！！　プロレスしませんか！？」
「……なるほど、その手がありましたか。ええ、私でよければお相手致します」
　それからアタシたちはドッタンバッタン。怪我しない程度に組み合って、そしたら──。
「何してんだいアンタたち！！」
　ヒシアマ先輩に怒られました。
　まだ空が明るいんだから体を動かしたければ走ってくる様に言われて、アタシたちは二人して「あ……」と顔を見合わせた。
「……エル、今日のことは内緒ですよ？」
「デェス……」
　ヒシアマ先輩のお説教で冷静になって体操着に着替えたアタシとグラスは、神妙な面持ちでランニングへと出発するのでした。