「グラス、やっぱり貴方も」
「ドーベル先輩もですか」
　一見共通点も接点もなさそうな二人が、たまたま知ることになった共通の困りごと。
　それは、寂しがったルームメイトと寝てあげたら、危うく絞め落とされるところだったという。
「私もウマ娘ですから、抜け出そうと思えば抜け出せるのはずなのですが……」
「なんていうか、上手い具合にガッチリ掴まれちゃうんだよね……」
　グラスワンダーとメジロドーベルの共通点、二つ目。
　それはルームメイトとの体格差だ。
　二人とも相手と十センチ以上の身長差があり、ダートも走れるエルコンドルパサーとタイキシャトルは二人に比べてパワーも体格もいい。パワー単体ならどうにかなるとしても、体格を活かして上手い具合に抱きしめられてしまう。
「隣り合って寝るだけでは足りないみたいで、その、私を抱き枕みたいに」
「タイキも一緒。なんか、くっついてると安心するらしくて」
　二人からため息がもれる。
「グラスは断ったりとか、する？」
「いえ。いつもは遠慮がないのに、ああいうときはしおらしくて。放っておけなくなります」
「……だよね」
　本日二度目のため息がグラスワンダー、メジロドーベル両者からこぼれ落ちる。
　グラスワンダーは寂しがり自分に頼るエルコンドルパサーの姿に長姉としての何かを刺激され、メジロドーベルは寂しがり自分を頼ってくるタイキシャトルの姿が幼い頃の自分と重なり放っておけなくなる。本当の姉のように慕っているメジロライアンがしてくれたようにと、意識させられる。
　そして、何より。
（（好きな娘が頼ってくれて、嬉しいなんて））
　二人はルームメイトに秘めたる恋慕を抱いている。
（さすがにこのことは……）
　グラスワンダーとメジロドーベルはお互いに伺いを立てるように見るものの、すぐに笑ってごまかした。
「あの、またこうしてお話させていただいてもよろしいですか？」
「あ、うん」
　恋愛のことは口には出来ないが、せっかく同じ悩みを持つものを見つけたのだからと、二人は改めて縁を繋いだ。