スズ×グラス

「あの、スズカさん。いちご大福に合う緑茶を買ったんです」
「まあ……!」
 スズカさんの好物がいちご大福だと知ったときから、絶対にお茶に誘おうと心に決めて、試飲を重ねてようやく納得のいく品を見つけた。
 試飲の数は……よく覚えていない。
 でも表情の変化が少なめなスズカさんが、目をキラキラとさせているのを見られただけで、これまでの苦労は報われた。
「それで、良かったらスズカさんのお暇なときにお茶でもいかがですか?」
「ええ、喜んでお邪魔させてもらうわ。いちご大福は私が買っていくわね」
「よろしいのですか? そちらも私の方で用意しようと思っていたのですが」
「お茶をごちそうしてもらうのに、何も持っていかないわけにはいかないでしょう? それに、私の好きな味、グラスにも食べてもらいたいもの」
「それでは、お言葉に甘えさせていただきますね〜」
 私、にやけてしまっていないかな。
 スズカさんも私のためにいちご大福を用意してくださるなんて。
 嬉しくて胸がきゅうって締め付けられる。
「グラス」
「はい?」
「きっと貴方のことだから、色々と探してくれたんでしょう? 本当に、嬉しいわ」
「……っ!」
 見抜かれていた。
 恥ずかしいのに、嬉しい。
 ドキリと胸が大きく高鳴って、ドクドクと続いていく鼓動がうるさい。
「それじゃあ、私は練習に行くから。週末が楽しみだわ」
「は、はい! 私も!」
 発する言葉にも思わず力がこもってしまった。
 こんなにも心をかき乱されるなんて、スズカさんはとても、お強い。
(スズカさんには、敵いませんね……)
 周りにあまり興味のなさそうな顔をしているのに、こういうときばかり、本当にスズカさんは──。
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